適正な経費の割合って、どれくらい?
最近では、スマホで領収書を撮影してアップロードすれば経費データに登録されるといった便利なサービスもあります。
ただし、「どの支出がどの経費、どの科目にあたるのか」、あるいは「この領収書は経費として計上できるのか」といった判断は相変わらずアナログで、当事者自身が下すものです。
今回は、たとえ税務調査に踏み込まれた場合でもきちんと対応できる「経費に対するブレない考え方」について、ポイントを解説します。
<経費として認められるものは何だろう?>
皆さんは、どういうものが経費だと思いますか?
一般的な経費として、地代家賃や光熱費、新聞図書費、交通費などと判断し、処理しているものも多いことでしょう。
ですが、個人事業主や社長によっては、これは経費だと自分では判断しているけれども、税理士とは意見が異なる、あるいは、税務調査が入った場合に厳しく問い詰められてしまう、といったこともあるかもしれません。
有名な元プロ野球選手の話です。
ある時、税務調査が入り、申告漏れが指摘されました。そこで経費として認められないとされたのが「かつら」ではなく、「植毛」でした。
国税局によると、「かつらは経費として認められるが、植毛は美容整形にあたるので認められない」という説明があったそうです。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか?
<業務上必要といった認識をはっきり持っておくこと>
植毛が経費に認められるかどうかは、専門家でも見解が分かれるところです。
ある税理士は「芸能人が見栄えを良くして仕事を得るためにつけるかつらは、衣装や小道具と同じ。プライベートで外すなら経費にしても構わないでしょう。
しかし、植毛は着脱ができないので、美容整形の一種と考えるのが妥当」と解釈しています。
美容整形は「容姿を変化し、容ぼうを変えるためのもの」で、医師による治療行為を受けたものではないため、原則として医療費控除の対象になりません。
つまり、植毛は経費にも医療費控除の対象にもならないとしています。
一方、元国税局勤務の専門家は、次のような個人的見解をしています。
「芸能人は、紅白歌合戦などで豪華な衣装を着ることで話題となり、仕事が取れることがあります。よって、衣装は明らかに経費になると判断できます。
かつらは、とらえ方によっては衣装と同じ。テレビ出演のためにかつらを購入する。頭髪が薄いまま出演をすれば仕事が来なくなると考えるのであれば、かつらは経費になるでしょう。
かつらと植毛にあまり違いがないと考えれば、かつらが経費で、植毛が経費ではないとは言えないのでは。顧問税理士と一緒に『植毛しなければ仕事が来ない。これは経費です!』とはっきり主張していれば、国税局の判断も変わっていた可能性があるでしょう」
<税理士との意思疎通、すり合わせが大切>
そこで、税務調査で何かあったときに矢表に立ってもらうのが顧問税理士です。
日頃から何が必要な経費で、どういう根拠があるのかを顧問税理士と話し合っておくことが大切です。
業界によって特有な経費のバリエーションも自分なりにきちんと理由付けし、「これは業務上必要なものだ」というブレない意識さえ持ってさえいれば、顧問税理士や調査官の理解を得られるケースが多いのです。