アンガーマネジメントについて
先週の土曜日、「キングオブコント2025」が放送されました。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
「キングオブコント」は、漫才の「M-1グランプリ」、ピン芸の「R-1グランプリ」と並ぶお笑いコンテストで、「コント日本一」を決める大会です。
今年の優勝はロングコートダディ。コント、漫才のどちらも高い評価を受けている実力派のお笑いコンビです。
このコンビが一本目に披露したコント「モグドン」が、今回のコラムのテーマです。
「息をするように否定する」モグドン
コント「モグドン」は、地底人モグドンが修行のため地上に出てきて、無邪気な少年ヨウスケと出会うところから始まります。
二人は友達になり、楽しい日々を過ごします。やがてヨウスケは成長し、学校に通うようになります。「僕も(学校に)行きたい」というモグドンに対し、ヨウスケは「モグドンは学校には行けないよ」と告げます。
「どうして?」と尋ねるモグドンに、ヨウスケはこう言います。
「モグドンは、ほとんどの会話に否定的に入ってくるでしょ。」
「誰かが何か言うたびに、必ず『いや』とか『でも』って言うでしょ。」
「相手が嫌な気持ちになるかもしれないから、そういう人は学校に行っちゃいけないんだ。」
それまでのやりとりでモグドンに漠然とした違和感を覚えていた観客は、ヨウスケのこの指摘でその正体を言葉にされ、大爆笑となります。
確かに言われてみればモグドンは、会話のたびに「いや」「でも」から話し始めていました。観客も「なんとなく嫌だな」と感じながら、その理由を言語化できずにいたのでしょう。ヨウスケは悪気なく、子どもらしい率直さでそれを突いたのです。
モグドンは必死に反論しようとしますが、口を開けばやはり「いや」「でも」から始まります。するとヨウスケが言います。
「モグドンは、息をするように否定するんだよ。」
観客が爆笑したのは、身の回りに“モグドン的な人”が多いからかもしれません。
会議で他人の意見にまず否定から入る人。
部下の報告に必ずダメ出しから入る上司。
建設的な提案に対して、代案も出さずに「できない理由」「やらない理由」ばかり並べる人。
メリットとデメリットの両面があるとき、デメリットばかりを強調して「やらない話」にしてしまう人。
そうした人がいると、確かに「相手が嫌な気持ちになる(ヨウスケ談)」。
観客は「あるある」と共感し、笑いながらも誰かを思い浮かべていたのかもしれません。
結果、このコント「モグドン」は予選10組中、トップの得点を記録しました。
肯定の言葉がもたらす幸せ
さて、「キングオブコント」を観た三連休を終えて、私は地方への出張に出かけました。
行き先は北海道内の小さな町。自治体職員を対象とした「コンプライアンス研修」でお招きいただいたのです。
前泊のためホテルに入り、夕食のバイキング会場でのことです。
近くの席に、高齢の女性お二人が座っていました。お二人は比較的声が大きく、自然と会話が耳に入ってきました。
その会話がとにかく「美味しい」「美味しい」の連続なのです。
「この天ぷら、美味しいね〜」
「このドレッシング、いい味だわ」
「このタラコも美味しいわよ」
「味付けがちょうどいいのよね」
とにかく、ひたすら褒め言葉のオンパレードです。
そんな肯定的な言葉を近くで聞いていると、どうなるか。
同じものを食べている私まで、なんだか一層美味しく感じてしまうんですね。
普段は夕食であまり量を食べない私ですが、二人の会話に登場した料理でまだ食べていないものがあると、「それも試してみようかな」という気持ちになってしまいました。
結果、少々食べ過ぎたかなというくらいの量を平らげてしまいましたが、食後はなんとも幸せな気分でした。
言葉の力を、どう使うか
というわけで、今回の結論は――
「言葉はまわりに影響を与える」ということです。
否定的な言葉を口にするモグドンは、まわりを「嫌な気持ち」にさせる。
一方で、肯定的な言葉を連発するご高齢の女性二人は、私をハッピーな気分にしてくれました。
私たちの言葉もまた、誰かに影響を与えています。
その意識を忘れずに、自分の発言や態度を選びたい――
そう改めて考えさせられた出来事でした。



