小学生の「伝える力」はどう育てる?「結論・理由・例」の3つの箱と、世界の学び方

小学生のフリーマーケット出店とは、子どもが自分の物に値段をつけ、お客さんと話しながら売る、いちばん身近な「お店の体験」です。
使わなくなったおもちゃや本を売れば、家も片づき、お小遣いも手に入ります。でも、それだけではもったいない体験です。フリマの1日には、会社の社長がしていることが、ぎゅっとつまっています。
「出てみたいけれど、子どもに何を教えればいいのかわからない」。そんな親御さんに向けて、このコラムでは、フリマを「稼ぐ力」の練習にする方法を紹介します。
フリマは「小さな会社の1日」です
フリマでは、売る物を選び、値段を決め、お店をつくり、お客さんに声をかけ、最後に売り上げを数えます。これは、会社がしている仕事の流れとほとんど同じです。
しかも、お客さんの反応がその場ですぐにわかります。手に取ってもらえた物、素通りされた物、値下げをたのまれた物。1日で、たくさんの「なぜ?」に出会えます。
親の役目は、全部を代わりにやることではありません。横で見守りながら、場面ごとに1つだけ問いかける「相談役」です。
出店の前には、売る物を子どもと一緒に選びます。まだ使えるか、こわれていないか、よごれていないかを確かめます。「自分がお客さんなら、これを買いたいと思う?」と聞くと、お客さんの目で物を見る練習になります。
親が教える、フリマで学べる4つの場面
フリマの1日は、大きく4つの場面に分けられます。場面ごとに、親が1つだけ問いかけてみてください。
1. 値段をつける:「いくらなら買ってもらえる?」を考える
前の日に、売る物を全部ならべて、子どもと値段を決めます。「このぬいぐるみ、自分がお客さんなら、いくらなら買う?」と聞いてみてください。
高すぎると売れません。安すぎると、もうけが少なくなります。100円、50円、10円のように、まとめ売りの箱をつくるのも作戦の1つです。これは、会社でいう「値段の作戦」の第一歩です。
2. ならべ方を考える:「目に入る」工夫をする
当日の朝は、ならべ方を子どもにまかせてみます。いちばん売りたい物を前に出す。小さい物は箱に入れる。値段の札を大きく書く。
お客さんは、目に入った物しか買いません。どこに置くと手に取ってもらえるかを、ためしながら変えていくのは、お店づくりそのものです。
お昼ごろに一度、ならべ方を見直すのもおすすめです。朝に売れた物の場所があいたら、次に売りたい物を前に出します。お客さんの動きを見て、お店を変えていく。大人のお店も、毎日この工夫をくり返しています。
3. 声をかける:「だれに、何がうれしいか」を一言で
「いらっしゃいませ」だけでは、なかなか足は止まりません。おすすめは、物のよさを一言で伝えることです。
「小さい子が遊べる、まだきれいなパズルです」「全部そろったマンガです」。だれに向けて、何がうれしいのかを短く言えると、お客さんの反応が変わります。はずかしがる子には、親が先にお手本を見せましょう。
4. ふり返る:売れた理由と、売れなかった理由
家に帰ったら、売り上げを数えて、ノートに書きます。何がいくつ売れたか。売れなかった物は何か。
「パズルはすぐ売れたね。どうしてだと思う?」「この本は、値段を下げたら売れたね」。理由を一緒に考えると、次のフリマの作戦が生まれます。会社でも、このふり返りがいちばん大切な仕事です。
世界の子どもたちのフリマ
オランダ:国の祝日に、子どもがお店を出す「ブレイマルクト」
オランダでは、毎年4月27日ごろの「王さまの日(コーニングスダフ)」に、国じゅうの道や公園が大きなフリマになります。オランダ語で「ブレイマルクト(自由市場)」とよばれ、だれでもお店を出せる日です。
首都アムステルダムのフォンデル公園は、この日、子どものためのフリマになるといいます。売り手になれるのは16歳までの子どもで、もう遊ばなくなったおもちゃや、小さくなった服をならべます。歌や楽器を見せてお金を集める子もいるそうです。
オランダの例から学べること
注目したいのは、大人が子どもの代わりに売らない点です。値段を決めるのも、声をかけるのも子ども自身。大人は近くで見守ります。
日本でも、地域のお祭りや学校のバザーに「子どもフリマ」の場がつくられることがあります。子どもが主役になれる場所を選ぶと、学びがぐっと深まります。
家族で出るときも、子ども用の小さな売り場を1つつくるのがおすすめです。シート1枚ぶんでも、自分のお店があると、子どもは本気になります。売り上げも別の封筒に入れて、自分のお金として数えさせましょう。
フリマやネットで売るときに、親が守りたいこと
1. 売るのは「自分の物」だけにする:自分で使っていた物や、使うつもりで買った物を売るなら、ふつうは古物商の許可はいりません。ただし、売るために買ってきた物をくり返し売る場合は、許可が必要になることがあります。迷ったら警察署に確かめましょう
2. お金のやりとりは親がそばで:おつりのまちがいや、値下げの交渉で子どもがこまったときは、親がすぐに助けます
3. ネットで売るときは親のアカウントで:フリマアプリやSNSは、年齢の決まりがあることが多いです。出品も、お客さんとのやりとりも親が行います
4. 顔・名前・学校・住所は出さない:写真は商品だけにします
マーケターとして伝えたいこと
私はふだん、コピーライター・マーケターとして、お店や会社の「売り方」や「伝え方」をお手伝いしています。
大人のお店でも、売れるかどうかを分けるのは、値段、置き方、そして一言の伝え方です。フリマの1日には、この3つが全部入っています。子どもが「どう言えば足を止めてもらえるか」を考えた経験は、将来どんな仕事をするときにも役立ちます。
親御さんが気になりやすい3つの疑問
何歳から出店できますか?
おつりの計算を親が手伝えるなら、小学校の低学年からでも楽しめます。低学年は声かけと値段の札づくり、高学年は売り上げの計算やふり返りまで任せると、ちょうどよい難しさです。
思い出の物を売って、あとで後悔しませんか?
売る物は、子どもが自分で選ぶのがいちばんです。「これは売ってもいい?」と1つずつ聞くと、物を大切にする気持ちも育ちます。
ほとんど売れなかったら、どうしますか?
売れなかった日こそ、学びの多い日です。値段、置き方、声かけのどれを変えれば売れそうか、一緒に考えてみましょう。親が「失敗」ではなく「わかったこと」とよびかえると、子どもは次もやってみようと思えます。
まとめ
小学生のフリーマーケット出店は、子どもが自分の物に値段をつけ、お客さんと話しながら売る、身近なお店の体験です。親が教えるのは、値段をつける、ならべ方を考える、声をかける、ふり返る、の4つの場面です。
オランダでは、子どもが主役のフリマが、国の祝日の楽しみになっています。最初の一歩は、家にあるおもちゃを1つ、子どもと一緒に見直すことから始められます。
「だれに、何がうれしいのか」を一言で伝える力は、大人の仕事でも大切な力です。


