これから就職先として製造業を選ぶ場合、特にどのような経験やスキルが必要か?<世界に誇る日本の製造業:その3>
以下に、経営者をトップとする活動組織、サークル活動の手順、発表資料の作成方法、
発表会の形式、そして活動のあるべき姿をまとめました。
QCサークル活動は、単なる品質改善活動ではなく、企業全体の体質改善と発展に不可
欠な要素です。経営者から現場の従業員まで、全員が参加し、それぞれの役割を果たす
ことで、組織全体の成長を促進します。
この記事を参考に、QCサークル活動の役割りを再認識して頂ければ幸いです。
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(職場を活性化し、企業の成長を図りたいが、改善活動をどのように進めれば良いか?)
1. 活動組織:経営者をトップとした全員参加型組織
(1)経営者の役割
QCサークル活動を人材育成と職場活性化の重要な活動として位置づけ、積極的に支援
することが必要であり、TQM(Total Quality Management:全社的品質管理)を実践
し、人間性を尊重した全員参加型の活動を積極的に推進します。
そのため、トップダウンの方針を示し、ボトムアップの提案(QCサークル活動)との
融合を図ります。
また定期的に活動に参加し、アドバイスを行うなど、チーム活動を支援することも必要
で、活動の成果を評価し、改善活動を促進します。
(2)管理者・リーダーの役割
・活動が特定のメンバーに集中しないように、役割分担を明確にします。
・定期的な集まりを効率的に開催し、メンバーを支援します。
・メンバーの成長を促し、職場力を向上させます。
・QCサークル活動の推進、教育、訓練、指導、支援を行います。
(3)サークルメンバーの役割:
・QCの考え方や手法を学び、論理的なものの見方と科学的な課題解決法を身につけます。
・様々な知識や経験を持った仲間と話し合い、チームワークと信頼関係を築きます。
・職場にある課題解決を通して、組織・社会に貢献します。
・日常業務の中で改善活動を実践し、より良い職場環境を目指します。
2. QCサークル活動の手順
(1)テーマ選定
・工場の重要課題をテーマとし、管理層も関与して決定します。
・現場の問題を洗い出し、重要度ランクを付け、改善テーマを絞り込みます。
・パレート図などを活用して、効果の大きい問題を選びます。
(2)目標設定と計画
・解決すべき問題を明確にし、具体的な目標を設定します。
・活動期間を決め、スケジュールを立てます。
・QCストーリーを参考に、計画的に活動を進めます。
(3)現状把握
・問題に関するデータを収集し、現状を数値で把握します。
・3現主義(現場、現物、現実)に基づき、現実を直視します。
・QC七つ道具などの手法を活用して、現状を分析します。
(4)要因分析
・特性要因図などを用いて、問題の原因を特定します。
・なぜなぜ分析を繰り返し、真の原因を究明します。
(5)対策立案と実行
・問題の根本原因に対する対策を立案します。
・複数の対策案を検討し、最も効果的な対策を選定します。
・ECRSの視点(排除、代替、容易化、明確化)で作業を改善します。
・対策を実行し、効果を検証します。
(6)効果測定と評価
・対策の効果をデータで確認し、目標達成度を評価します。
・R-MAP評価などで、対策の効果を定量的に評価します。
(7)標準化と維持
・効果のあった対策を標準化し、再発防止策を講じます。
・QC工程図に改善内容をフィードバックします。
・水平展開を行い、他の部門や製品にも適用します。
3. 発表資料の作成
(1)内容
・現状:対策前の問題点をデータやエビデンスを用いて示します。
・要因分析:問題の原因を絞り込むまでの調査内容を記載します。
・対策:講じた対策とその効果をデータで示します。
・標準化:再発防止のためのルール化を明確にします。
・反省と今後の課題:活動で苦労した点や、結果が出なかった理由など
(2)手法
・QC七つ道具やQCストーリーなど、使用した手法を記載します。
・プレゼンテーション技法を活用し、発表資料を作成します。
(3)ポイント
・QCストーリーにこだわらず、実施した事実をありのままに発表します。
・金額効果だけでなく、無形効果(問題解決能力の向上、チームワーク
の強化など)も評価します。
・失敗経験も包み隠さず発表し、メンバーの成長を共有します。
4. 発表会の形式
(1)発表会の内容
・開催頻度:半年に1回程度開催します。
・参加者:社長以下、社員全員参加を原則とします。
・発表時間:活動結果発表20分程度、質疑応答10分程度とします。
・発表内容:解決済みのテーマを基本とします。
QCストーリーにこだわらず、実施した事実を発表します。
改善事例(品質、コスト、安全、保全、CS、環境など)を発表します。
運営事例(活動の工夫、メンバーの成長など)を発表します。
推進事例(QCサークルを育成・支援している上長や事務局の事例)を発表します。
(2)評価
・活動期間中の取り組み件数、解決テーマ数、取組み態度、団結度、リーダーシップ
などを評価します。
・有形効果、無形効果、進め方(原因解析、対策、仕組み化)などを評価します。
・一般サークル員の中から審査員を選抜し、相互評価を行います。
(3)その他
・リモートによる発表会も可能です。
・発表資料は社内掲示し、情報共有を図ります。
5. QCサークル活動のあるべき姿
・業務と一体化した活動:日常業務と改善活動を並行して行います。
実務と遊離した形骸化した活動にならないように注意します。
・個人の成長と組織への貢献:活動を通して個人の能力向上を図ります。
活動の結果(ノウハウ)が組織の中で生かされるようにします。
経営に対する貢献を明確にします。
・変化への対応:e-QCCビジョンを参考に、活動の形や進め方を工夫し、効果的な
活動に変えていきます。
・企業の内外で起こっている環境変化に対応できるように、常に改善を続けます。
・継続的な改善:PDCAサイクルを回し、継続的な改善活動を行います。
・トップダウンの方針とボトムアップ活動を融合させます。
・真実の追求:QCストーリーに無理やり当てはめることなく、事実をありのままに
発表します。
・失敗経験から学び、次の改善に繋げます。
QCサークル活動は、社員一人ひとりの成長と企業の発展を同時に実現する強力なツール
です。経営者は、活動を形骸化させないよう、常に関心を持ち続け、従業員に対して
動機づけを行って行くことが重要です。
”人材を人財に” 中小企業にとって人は宝です。