日本の生成AI普及は、世界的に見て遅れているのはなぜか?5つの課題と克服への道

濱田金男

濱田金男

テーマ:生成AIによる業務効率化

日本の生成AI普及は、世界的に見て遅れていると言える状況です。
その具体的なデータと共にその現状を解説しています。以下に、詳細をまとめます。

    ★無料ものづくりネット相談・お問い合わせフォーム
   (生成AIで業務を飛躍的に効率化するための手順を知りたい?)

1.世界との比較
総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、日本における生成AIの利用率はわずか
9.1%です。一方、アメリカでは46.3%の利用率が見られます。
企業における生成AIの業務利用率も、日本は46.8%と、アメリカの84.7%やドイツの
72.7%に大きく差をつけられています。

アジア太平洋地域においても、デロイトインサイトの調査で日本の生成AI利用率は39%
と、地域平均を30ポイント下回り、調査対象9カ国中最下位となっています。
対照的に、インドが87%、東南アジアが76%、台湾、シンガポール、中国が72%と、
アジア圏内でも高い利用率を示しています。

2.日本での生成AI普及が遅れている具体的な理由
(1)リスクへの懸念
日本企業は、新しい技術の導入に際してリスクを慎重に評価する傾向があります。
AIの導入は、情報漏洩や誤った判断による損失など、様々なリスクを伴う可能性が
あります。特に、個人情報や機密情報を扱う業務においては、AIの利用に慎重に
なるのは当然と言えるでしょう。

(2)既存システムとの連携の難しさ
多くの日本企業は、長年使用してきた既存のシステムやプロセスを抱えています。
これらのシステムとAIを連携させるには、多大なコストと時間がかかる可能性が
あります。また、既存の業務フローを大きく変えることへの抵抗感も、AI導入を
遅らせる要因となり得ます。

(3)人材不足
AI技術を導入し、活用するためには、専門的な知識やスキルを持った人材が必要
です。日本国内では、AI人材が不足しており、特に地方の中小企業では、そのよう
な人材を確保することが難しい状況です。

(4)AIに対する知識不足
AI技術は、日進月歩で進化しており、その仕組みや活用方法について正確に理解
している企業はまだ少ないかもしれません。AIに対する知識不足は、導入に対する
不安や躊躇につながります。

(5)成功事例の少なさ
AI導入によって成功した事例が少ないことも、企業が導入に二の足を踏む理由の
一つです。具体的な成功事例が少ない状況では、投資対効果を見込みにくく、導入
に踏み切れない可能性があります。

3.日本のAI活用状況
日本企業は、会議の議事録作成、メール作成、資料作成といった社内業務でのAI利用
から慎重に開始している段階です。
一方、欧米企業では、顧客対応など、より幅広い業務でAIが活用されています。

日本企業はAI導入に慎重な姿勢を見せていると指摘されています。この「慎重さ」を
「着実な歩み」と捉え直すことも可能かもしれません。
しかし、海外ではAIが業務効率化や顧客体験の向上に貢献しており、日本もこの流れ
に乗り遅れないようにする必要があります。

日本の状況は、生成AIの活用において海外に遅れをとっている印象は否めません。
日本国内では、まだ慎重な姿勢が見られるものの、AI技術が業務効率化や新たな価値
創造に不可欠であることは認識され始めています。

パナソニック コネクトでは自社開発のAIアシスタント「ConnectAI」を導入し、年間
18.6万時間の削減に成功しています。
住友ゴム工業では、Geminiを活用してアプリケーション開発の生産性を大幅に向上
させています。
日清食品グループも、営業・マーケティング部門での業務効率化に生成AIを活用して
います。
これらの事例は、日本国内でもAI活用が進みつつあることを示唆しています。

4.AI導入を成功させるには
日本企業がAI導入に慎重な姿勢を見せている背景には、特に人材不足と知識不足は、
企業がAI導入を進める上で大きな障壁となっており、これらの問題への対応策が求め
られます。
(1)人材不足への対応策
 ・社内教育・研修の充実: 従業員がAIに関する基本的な知識やスキルを習得できる
  よう、企業内での教育プログラムや研修を充実させることが重要です。これに
  より、AI技術を理解し、活用できる人材を育成できます。

 ・外部専門家との連携: AIに関する高度な知識やスキルを持つ人材が不足している
  場合は、外部の専門家やコンサルタントとの連携を強化することが有効です。
  これにより、AI導入に関するアドバイスやサポートを受けられます。

 ・産学連携の推進: 大学や研究機関と連携し、AIに関する共同研究や人材育成プロ
  グラムを実施することで、AI人材の育成を加速化することができます。

 ・採用戦略の見直し:AIに関する知識やスキルを持つ人材を積極的に採用するため、
  採用戦略を見直し専門的なスキルを持つ人材を確保する必要があります。

(2)AIに対する知識不足への対応策
 ・情報発信の強化: AI技術に関する情報を、企業内外に向けて積極的に発信すること
  が重要です。セミナーやワークショップの開催、ウェブサイトでの情報公開などを
  通じて、AI技術への理解を深めることができます。

 ・成功事例の共有: AI導入に成功した企業の事例を共有することで、他の企業もAI
  導入に対する不安を軽減し、具体的な導入イメージを持つことができるように
  なります。

 ・AI体験機会の提供: AI技術を実際に体験できる機会を提供することで、AIに対す
  る理解を深めることができます。デモやトライアルの実施、AIツールへのアク
  セスを提供することも有効でしょう。

 ・AI導入コンサルティングの活用: AI導入に関する知識や経験が不足している企業は
  AI導入コンサルティングサービスを利用することで、専門家のアドバイスを受けな
  がら、自社に適したAI導入を進めることができます。
  これらの対応策を講じることで、日本企業は人材不足や知識不足といった課題を
  克服し、AI導入を加速させることができるでしょう。

(3)プロンプトエンジニアリングの重要性の理解
 ・さらに、AI導入を成功させるためには、プロンプトエンジニアリングの重要性を
  理解しておくことが不可欠です。プロンプトエンジニアリングとは、AIに対して
  効果的な質問や指示を与えるための技術であり、これによってAIの能力を最大限
  に引き出すことができます。

 ・プロンプトの3つの要素(問い、条件設定、応対)や8つのパターン(質問や文章
  作成要約や分析、多言語翻訳や検索、コーディングやプログラミング支援、回答内容
  の規定表現方法の規定、追加で情報を引き出す、修正や訂正をさせる)を理解し、
  適切に活用することが、AI導入を成功させる鍵となります。

結論として、日本企業がAI導入に慎重な姿勢を見せているのは、リスクへの懸念、既存
システムとの連携の難しさ、人材不足、AIに対する知識不足、成功事例の少なさなど、
様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。

しかし、AI技術が業務効率化や新たな価値創造に不可欠であることは認識され始めて
おり、今後、日本でもAI活用が加速していくことが期待されます。

生成AIの活用と生産性向上シリーズ
 その1:業務のコンピュータ化により生産性向上が見られなかった理由とは
 その2:企業の生成AI導入による生産性向上への期待と課題とは?
 その3:生成AIの普及によって、ホワイトカラーの仕事が減る?
 その4:より付加価値の高い仕事にシフトするとは、どのような仕事?
 その5:生産性の停滞を打破するためには、企業は何をすれば良いか?

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

濱田金男
専門家

濱田金男(企業経営コンサルタント)

合同会社高崎ものづくり技術研究所

大手電機メーカーで設計、製造、品質管理に長く携わり、中国工場立ち上げ、韓国での生産ライン効率化など海外支援実績も多数。新しい時代を見据えた工場改革、付加価値向上と人材育成で、ものづくりの現場をサポート

濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

ものづくり現場の品質管理、人材育成のプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ群馬
  3. 群馬のビジネス
  4. 群馬の経営コンサルティング
  5. 濱田金男
  6. コラム一覧
  7. 日本の生成AI普及は、世界的に見て遅れているのはなぜか?5つの課題と克服への道

濱田金男プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼