受注生産工場に求められる差別化技術と専門分野のプロとは?顧客企業からの聞く耳を持つことでヒントが?
QCサークル活動は、カイゼン活動として出発しました。
製造工程で問題になっている非効率な作業や慢性不良をなくすための問題解決型の
活動として定着してきました。
しかし現在では、未知の課題に挑戦し、現状をより高いレベルに引き上げるための
活動として位置づけ、「新しい分野の製品受注への対応」のためのツールとして、
積極的に活用していく事が求められています。
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(例:QCサークル活動の進め方についてアドバイスしてほしい)
目次
1.QCサークル活動が停滞する理由
2.解決策
3.課題達成型QCストーリーと問題解決型QCストーリーとの違い
4.新しい分野の製品受注への対応に適したQCストーリー
5.課題達成型QCストーリーの具体的な事例
(1か月かかっていた金型製作を1週間に短縮する)
1.QCサークル活動が停滞する理由
QCサークル活動が停滞する理由は、様々な要因が考えられますが、主な理由は以下の
点が挙げられます。
(1)短期的な成果主義
近年、企業では短期的な経営成果が重視される傾向があり、QCサークル活動のように
長期的な視点で取り組む活動への関心が薄れ、活動が形骸化しているケースが見られ
ます。
QCサークル活動は、個人の能力向上や職場チームワークの向上など、長期的な効果を
もたらしますが、短期的な成果を求める経営者や管理者にとっては、魅力的に映らない
場合があります。
(2)人材の変化
商品ライフサイクルの短期化や効率化に伴い、職場異動やパート・アルバイト・派遣
社員の増加などが起こり、継続的なサークル活動が困難になっている場合があります。
サークルメンバーが頻繁に入れ替わることで、活動の継続性が損なわれ、ノウハウの
蓄積やスキル向上が阻害される可能性があります。
(3)活動のマンネリ化
従来のやり方や考え方に固執し、新しい手法やツールを導入しないことで、活動がマン
ネリ化し、メンバーのモチベーションが低下する可能性があります。
特に、製造現場以外では、従来のQCサークル活動が適さないケースも増えています。
(4)トップの意識
トップが現場の実態を把握しておらず、現場の問題を放置することで、QCサークル活動
が形骸化してしまうことがあります。
トップがQCサークル活動を重要視し、積極的に支援することが、活動の活性化に不可欠
です。
(5)活動の目的が不明確
QCサークル活動の目的が、単なる発表会のための資料作りになってしまい、本来の目的
である業務改善や問題解決がおろそかになっているケースがあります。
活動の目的を明確にし、メンバー全員が共通認識を持つことが重要です。
(6)QCストーリーへの固執
すべての問題解決にQCストーリーを適用しようとすることが、活動の停滞につながる
可能性があります。
QCストーリーはあくまでもツールの一つであり、状況に応じて適切な手法を選択する
ことが重要です。
(7)日常業務との両立
日常業務が忙しい中で、QCサークル活動に十分な時間を割くことが難しいという現状
があります。
QCサークル活動を、業務時間内に組み込むなど、活動しやすい環境を作る必要があり
ます。
2.解決策
QCサークル活動を活性化するためには、以下の解決策が考えられます。
(1)e-QCCの導入
e-QCCは、従来のQCサークル活動を進化させたもので、業務一体の活動の中で自己実現
を図り、個の価値を高め、幅広い部門で活用される活動を目指しています。
e-QCCを導入することで、変化の激しい現代のビジネス環境にも対応できる、より効果
的なQCサークル活動が可能となります。
(2)トップのコミットメント
トップがQCサークル活動の重要性を理解し、積極的に支援することが重要です。
トップダウンの方針とボトムアップの提案を融合させることで、効果的な改善活動が実現
できます。
(3)活動の目的の明確化
QCサークル活動の目的を明確にし、メンバー全員が共通認識を持つようにします。
組織全体の目標達成に貢献するとともに、構成員の知識・技能・意欲を高めるという、
QCサークル活動本来の目的を再認識する必要があります。
(4)柔軟な活動形態
従来のQCストーリーにとらわれず、柔軟な活動形態を取り入れることで、メンバー
のモチベーションを高めることができます。
問題解決型、未然防止型、課題達成型など、テーマや状況に応じて適切なQCストーリー
を選択することが重要です。
(5)日常業務との連携
QCサークル活動を日常業務と連携させることで、活動の効率性を高めることができます。
例えば、日常業務の中で発生した問題をQCサークル活動のテーマにすることで、より
実践的な活動が可能になります。
(6)適切な評価制度
QCサークル活動の成果を適切に評価する制度を導入することで、メンバーのモチベー
ションを高めることができます。
金銭的な報酬だけでなく、活動への貢献を評価することで、メンバーのやる気を高める
ことができます。
QCサークル活動は、適切な方法で進めることで、組織全体の活性化や生産性向上に大き
く貢献する可能性があります。停滞しているQCサークル活動を活性化するためには、
上記の解決策を参考に、組織の現状や課題に合わせて改善していくことが重要です。
3.課題達成型QCストーリーと問題解決型QCストーリーとの違い
(1)課題達成型QCストーリーの進め方
課題達成型QCストーリーは、現状レベルを向上させることを目指す活動です。具体的
な進め方として、以下の7つのステップがあります。
①テーマの選定/経営課題の確認
まず、取り組むべきテーマを決定します。この際、経営課題と関連づけることが重要
です。
②課題の明確化/目標の設定
選定したテーマについて、現状と目標(ありたい姿)との間のギャップを明確化し、
具体的な目標値を設定します。
③方策の立案・選定
現状と目標とのギャップを埋めるための具体的な方策を複数立案し、評価・検討し
最適な方策を選定します。
④成功シナリオの追究
選定した方策を実行する際に、成功と失敗の可能性を事前に検討し、成功確率を
高めるためのシナリオを作成します。
⑤成功シナリオの実施
作成した成功シナリオに基づき、計画的に方策を実行します。
⑥効果の確認
実施した方策によって目標が達成されたかどうかを、データに基づいて客観的に
評価します。
⑦標準化と管理の定着
効果が確認された対策を標準化し、継続的に実施するためのルールや仕組みを
構築します。
(2)問題解決型QCストーリーとの違い
問題解決型QCストーリーは、発生している問題の原因を究明し、解決することを目指
す活動です。一方、課題達成型QCストーリーは、現状レベルをより高いレベルに引き
上げることを目指す活動です。
問題解決型QCストーリーでは、現状に発生している「悪さ」を明確化し、その原因を
特定することに重点が置かれます。一方、課題達成型QCストーリーでは、現状よりも
高いレベルを目指すため、必ずしも「悪さ」が存在するわけではありません。
この違いから、問題解決型QCストーリーでは、原因を特定し、それを除去するための
対策が中心となります。一方、課題達成型QCストーリーでは、新しい方法や技術を
導入するなど、より積極的な改善活動が必要となります。
(3)課題達成型QCストーリーのポイント
課題達成型QCストーリーを成功させるためには、以下のポイントが重要です。
①上位方針、顧客の要望、競争力を考慮したテーマ設定
会社全体の目標や顧客のニーズ、競争環境を踏まえ、適切なテーマを設定すること
が重要です。
②現状レベルと目標レベルのギャップを明確化
現状レベルを正確に把握し、目標とのギャップを定量的に示すことで、活動の目的
を明確化します。
③成功シナリオの作成
新しい方法や技術を導入する際には、リスクを最小限に抑え、成功確率を高めるため
のシナリオを作成することが重要です。
まとめ
課題達成型QCストーリーは、問題解決型QCストーリーとは異なるアプローチで、現状
レベルを向上させるための活動です。上位方針や顧客の要望を踏まえ、現状と目標との
ギャップを明確化し、成功シナリオに基づいて計画的に活動を進めることが重要です。
4.新しい分野の製品受注への対応に適したQCストーリー
新しい分野の製品受注への対応には、課題達成型QCストーリーが適しています。
(1)課題達成型QCストーリーは、新規事業への対応や工場の改革を行う場合、従来の
問題解決ではアプローチが困難な問題を解決するために用いられます。
(2)新しい分野の製品受注は、まさに今までに経験のない仕事であり、従来のやり方
では対応できない問題が発生する可能性が高いからです。
例えば、 では、新しい分野の製品受注に伴い品質を確保するための新しい工法を開発する
といった例が挙げられています。
一方、問題解決型QCストーリーは、すでに発生している問題の原因を除去し、再発防止策
を講じる活動です。これは、現状で発生している問題に対応するものであり、新しい分野
の製品受注のように、未知の課題への対応には不向きです。
新しい分野の製品受注への対応には、新しい工法の開発や品質確保の仕組み作りなど、
従来のやり方とは異なるアプローチが必要になります。課題達成型QCストーリーは、
このような未知の課題に挑戦し、現状をより高いレベルに引き上げるための活動であり
新しい分野の製品受注への対応に適していると言えます。
5.課題達成型QCストーリーの具体的な事例
課題達成型QCストーリーの具体的な事例として、今まで一か月掛かっていた金型製作
を一週間に短縮するといったものが挙げられます。
これらの事例は、従来の問題解決型QCストーリーでは対応が難しい、新しい分野や
改革が必要な状況において、課題達成型QCストーリーが有効であることを示しています。
<課題達成型QCストーリーの実施例>
前工程の稼働率を向上させるために、自工程のネックとなっている機械の回転数アップ
を図るというテーマを例に、課題達成型QCストーリーの進め方を解説します。
【1】テーマの選定
「機械の回転数アップ」というテーマを設定します。
【2】攻めどころと目標の設定
現状レベルと目標レベルを把握し、そのギャップを明確化します。
・前工程の稼働率の現状と目標値を設定
・自工程の機械の現状の回転数と目標回転数を把握。
【3】攻め所の明確化
上記のギャップを埋めるための着眼点を洗い出し、「攻めどころ」を明確化します。
【4】方策案の検討
攻めどころに基づき、具体的な方策案を検討します。
人、機械、方法、材料、測定の5Mに着目し、職場内で解決できそうな方策を検討します。
【5】方策の実施と効果の確認
選定した方策を実施し、その効果をデータで確認します。
効果が不十分な場合は、要因分析を行い、対策を修正します。
【6】標準化と管理の定着
効果が確認された対策を標準化し、継続的な改善を図ります。
この事例では、前工程の稼働率向上という目標を達成するために、自工程の機械の回転数
アップという課題を設定し、課題達成型QCストーリーを用いて解決を図っています。