日本流のDXの定義とは?「伝統とデジタルの融合による価値創造」欧米のDXとは一線を画す
ものづくり工場での悩みは尽きません。
営業マンが個別受注で取って来た小ロットの製品を設計部門で顧客の要求に合わせ
て図面を引き製造部門に渡す。
図面に合わせて、部品・材料を購入、そして、加工・組み立て・・・。
こんな流れで生産していたのでは、品質も不安定、納期も守れず、しかも無駄な
費用がかさみます。何に増して利益が上がりません。
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(多品種少量生産工場で利益を上げるには?)
今回は、製造現場において、多品種少量生産におけるQCDの悩みをどのように解
決していったらよいか解説します。
1.基本作業の洗い出しと標準化
個別受注品であっても、製造工程では必ず共通作業が存在します。
例えば、切る、曲げる、溶接する、組み付けるなどの作業です。これらの共通作
業を洗い出し、作業方法の標準化(共通作業指示書の作成)を行います。
共通作業指示書では、以下の内容を記載します。
・作業手順
・必要な工具、治具、測定機など
・必要な補助資材(半田、接着剤、テープなど)
・作業結果の点検方法
・良否判定基準(写真、限度見本)
上記のように、多品種小ロットであっても、変化することのない共通作業を標準化
することによって、品質確保、生産性向上を図ります。
2.多能工化
少人化、作業の人によるばらつきをなくすためには多能工化を推進します。
多能工養成の手順としては、
①多能工養成のためのチームを編成する
②現状のスキルを工程別に明かにする
③“多能工訓練計画表を使って、各作業者の目標を設定する
④残業時間などを有効に使った多能工化スケジュールを作成する
⑤定期的に星取り状況を朝礼・夕礼などで発表し意識を高める
多能工化は、物を作る楽しさや創造の喜びの復活や、自己の能力の向上に通じるも
のであり「生産性と人間性の融合」からなる真の生産性向上に貢献するものと考え
られます。それゆえ企業もこのような従業員の教育体制を積極的に整えることが大
切となります。
3.現場監督層の育成
多品種、小ロット生産の工場では、現場の管理監督を行う中間管理者の役割が、
生産性・品質に大きく影響します。デスクに向かって仕事をしているだけではだ
めで、作業の進捗や不良の発生、作業者などに常に注意し、問題が起こればすぐ
にその原因を取り除くよう適切な処置を行います。
現場監督層に一番求められるのは、自分の職場の問題や、課題となっていること
を自ら発見し、改善すること。そのために部下を適切に指導したり、仕事をしや
すいように、またミスの起きないような作業方法を工夫したり、治具を製作した
りします。つまり、現場の改善のためのマネジメント力が問われるのです。
このような人材を育成したり、外部から経験ある人材を補強して現場力を高める
ことは経営トップの責任であり、最優先で行うべき仕事です。
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(多品種少量生産工場で利益を上げるには?)
<事例>
1個ないしは少量の部品加工に特化した受注で利益を上げている企業があります。
航空機、宇宙業界からの受注も獲得し、短納期で納入が可能としています。この
ような企業の受注から製造までの独自システムはどのような構成で、どのような
機能が盛り込まれているでしょうか?
1. 受注管理システム
迅速な見積もり・受注処理ができるシステムを構築しています。
迅速な見積もりシステム 受注内容が航空機や宇宙業界向けの精密部品である場合、
非常に高い精度と特殊な材質が要求されるため、素材コスト、加工時間、必要な
技術などを瞬時に計算できる見積もりシステムが必要です。
これには、過去のデータやシミュレーションを基にした自動見積もり機能が盛り
込まれています。
CRM(顧客管理システム) 顧客とのやり取りを管理し、個別のニーズに素早く
対応できるように、顧客ごとの仕様、過去の発注履歴、納期要求などを管理する
CRM機能が重要です。
2. 設計・製造データの連携システム
設計と製造プロセスの密な連携が求められます。
CAD/CAM/CAEシステム 顧客からの図面や仕様をもとに、設計部門でCADを使っ
て詳細設計を行い、そのデータをCAMシステムに連携させることで、製造機械に
直接データを渡すことができます。
これにより、手動での設定ミスを削減し、製造工程を迅速化できます。CAEを使っ
てシミュレーションを行うことで、加工時の歪みや不良を事前に予測し、設計段
階で問題を解決します。
デジタルツイン技術 デジタルツインを活用し、製造プロセスの仮想モデルを作成
してシミュレーションを行います。これにより、製造工程をリアルタイムで監視し
製造時に発生する問題や遅延を防ぐことができます。
3. MES(製造実行システム)
リアルタイムの製造進捗管理ができるMES(製造実行システム)が重要です。
製造工程の可視化 MESを使って、現在の生産状況や各工程の進捗、作業者の稼働
状況をリアルタイムで把握します。これにより、工程のボトルネックを早期に発見
し、問題が発生した場合に迅速な対応が可能です。
作業指示と工程管理 MESにより、各作業者に最適な作業指示を自動的に配信します。
これにより、手作業のミスやコミュニケーションエラーを削減し、短納期の要求に
応えるためのスピード感を確保します。
4. 品質管理システム(QMS)
航空機・宇宙産業向けの部品では、厳しい品質基準とトレーサビリティが求められ
ます。
高度な品質管理 QMS(Quality Management System)を活用し、製造工程の各段
階で品質チェックを行います。各部品の検査データや、使用された素材の証明書を
デジタル化して管理し、顧客が要求する高精度かつ高信頼性の品質を保証します。
トレーサビリティ 部品の加工履歴、使用した素材、作業者の情報などをすべてトレ
ースできるようにシステムで記録します。航空機や宇宙業界では、万が一の不具合
に備えて、すべての工程を遡れるトレーサビリティが重要です。
5. IoTと設備管理
設備の効率的な稼働と保全を実現するために、IoT技術を積極的に導入しています。
稼働状況のモニタリング 機械設備にセンサーを取り付け、稼働状況や加工精度を
リアルタイムでモニタリングします。これにより、設備の状態を常に把握し、予防
保全を行うことで、計画外のダウンタイムを防ぎます。
設備の自動保全 IoTデータを基に、設備の異常を早期に検知し、保全作業を自動的
に計画します。これにより、設備の故障リスクを最小限に抑え、短納期要求を達成
するための生産ラインを安定して稼働させます。
6. ERP(基幹業務システム)
受注、在庫、コスト管理を一元化するERPシステムの導入は、生産効率とコスト管
理に大きな影響を与えます。
在庫管理と生産計画の連携 必要な素材や部品の在庫を適切に管理し、最適なタイミ
ングでの調達を行います。また、ERPと連携して生産計画を作成し、急な受注にも
柔軟に対応できる体制を整えます。
コスト管理の自動化 ERPを用いて、部品加工にかかるコスト(材料費、労務費、設
備コスト)をリアルタイムで管理します。これにより、利益率を維持しながら迅速
な見積もりや価格設定が可能です。
7. 短納期対応のためのリードタイム短縮
短納期対応力は競争優位性を確保するために重要です。
ジャストインタイム(JIT)生産方式 必要な時に必要なものを生産するJIT方式を導
入し、在庫コストを削減しながら迅速な生産を可能にします。
フレキシブルな生産ライン 多品種少量生産に対応するため、作業員や設備の柔軟な
配置ができる体制を整え、特定の製品に合わせたラインの変更が迅速に行えるように
します。
多能工化を進めることで、複数の工程に対応できる作業者を育成し、短納期に対応可
能な人材配置を実現します。
このような企業の独自システムは、高度なデジタル技術とリアルタイム管理を駆使し、
品質、コスト、納期のすべてをバランスよく最適化しています。
また、航空機や宇宙産業向けの厳しい品質基準に対応するため、トレーサビリティや
品質管理を強化しつつ、短納期にも柔軟に対応することで、競争優位性を高めています。
<(2)へつづく>