受注生産工場に求められる差別化技術と専門分野のプロとは?顧客企業からの聞く耳を持つことでヒントが?

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

受注生産工場に求められる差別化技術とはいったいどのようなものでしょうか?
また、専門分野のプロとはどのような人を指すでしょうか?

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発注先から見た受注生産工場の技術差別化には下記のような例が考えられます。
1.単一加工技術での差別化例
 ①寸法差と同心度のきびしいこの加工ができる
 ②深絞り技術は一流
 ③パイプの内面メッキができる工場
 ④メッキ厚さを指定どおり管理できる技術をもっている
 ⑤この複雑な板金仕事はJIS認定者が3人いるので安心して任せられる

2.複合技術での差別化例
 ①電気・機械の両技術があるからメカトロ部品を発注できる
 ②仕様を示せば設計から製作、性能テストまでやってくれる
 ③板金工作したものをヌリ・メッキまでしてくれる
 ④プラスチック成形業だが金型修理ができるから便利だ
 ⑤J小物組立とともに精密溶接ができるら発注している

3.特殊材料加工技術での差別化例
 ①セラミックの切断・研磨ができる貴重な存在だ
 ②チタンやタンタル材の抜き型を作れる
 ③M社は制振動板や形状記憶合金のプレス加工の実績がある
 ④炭素繊維を加工できる
 ⑤ガラス繊維入りエポキシの加工技術をもった特殊な存在だ

4.特殊設備をもった差別化例
 ①プラノミラーをもっているのはただ1社のみだ
 ②レーザーカットとユニパンチを併せもって使いこなしている
 ③クリーンルームはこれからの精密組立仕事に威力を発揮するだろう
 ④静動プレスは夜間でも稼働できるのが強みだ
 ⑤溶接ロボットを実にうまく活用している

これらは一例で、それぞれの下請工場の置かれた環境、つまり地域や業界の
事情に応じてこのほかにもいろいろな技術があると思います。

また技術だけでなく管理面やサービス面でので差別化も十分成り立つのです。
 ①品質は絶対安心だ
 ②部品手配もして組立品をまとめてくれる
 ③コミュニケーションがよく、連絡ミスがまったくない

「自社のこの特徴こそ他にないところで、この強みで食っているのだ」とい
う技術をつかむ必要がある。

5.顧客情報収集活動の重要性
こうした差別化を身につける第一歩は情報収集である。
切削加工下請工場N社ではつぎのような情報収集活動を行っている。
数十年前3人で創業した当時は、注文を取ることを目的に、社長が現場加工の
合間を縫って、未知の親会社を訪問していた。

「当社はこういう加工技術をもっています」とパンフレットと実物を置いてきて
発注をお願いするという営業活動である。

高度成長期はそれなりの効果があり、発注先も増え従業員40人の今では数十社
から受注している。
しかし、近年では客先訪問のねらいを受注獲得のみに置くのでなく、親会社が
下請工場にどういう加工技術を要望しているかを探ることに重点を移している。

訪問活動をしているのは社長・工場長と 2人の現場管理者である。それぞれ管
理の仕事の合間を縫って、年間20社ぐらいを対象に手分けして訪問している。
その 20社はどういう基準で選ぶかというと

 ①かつて取引があった企業
 ②新製品を発売した企業
 ③従業員を募集している企業
 ④広告を頻繁に出す企業
 ⑤こちらが購入している製品メーカー
などである。

N社長の体験で親会社の対応はおおむね次の3つに分かれる。
 ①門前払いかそれに近い対応
 ②一通りこちらの PRは聞いてくれ、記録にとどめてくれる
 ③詳しく技術内容を聞き取り、要望する技術についても話し合ってくれる

運良く③に当たれば、キミのところで「SUS304材を切削できるか」「チタン
やマグネシウムを加工したことがあるか」「寸法差ミクロン単位の加工は可能か」
といった具体的な要望情報が得られることがある。

もちろん③の企業はまれだが、しかしゼロではない。①②に当たることに堪えて
根気よく訪問活動を続けていれば、少しずつ③の情報が集まってくる。

6.これからの専門分野のプロとは

ある加工分野でプロといえるのはどういう能力をいうのであろうか。
たとえば小物プレス業であれば、20トン程度以下のプレスで抜き・曲げその他の
加工について精通し、必要な金型の構造やその作り方、価格、などについて引き
合い先に説明できる能力と知識があることである。また製品メーカーからプレス
部品の設計形状について、加工の可否や能率についての問合せに、適切に答え
られる能力である。

単に一定精度の加工ができるだけでなく、プレス加工技術全般について知識と
情報を持っていることである。この場合、技術の間口は狭くてもよい。たとえ
ば板金業でも箱物を得意とするところと、シャーシなど平面ものとに分かれて
受け持つ範囲を特化してもよい。

長年の経験を積んだ「熟練工」は的確に問い合わせに対応できない場合も多い
が、比較的若手の社員を、このような顧客窓口として営業技術的な立場で訓練
させることも必要と考えられる。

また旋盤加工でも大物・小物に分かれたり、ウチはピンやシャフトを主とする
ウチは中ぐりが得意といった棲み分けがあってよい。その範囲内では他の下請
工場と差別化した技術を持つ専門家として客から信頼され、そこに聞けば間違
いない回答が得られると思われることが大切である。

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