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熟練技能の継承は、企業にとって喫緊の課題です。
特に、加工条件導出作業のような、長年の経験と勘に基づいた高度な技能の継承は困難
を伴います。ここでは、マニュアル化とOJTの両面から、熟練技能継承のポイントと課
題解決策について解説します。
1. 熟練技能の見える化:マニュアル化のポイント
熟練技能は、暗黙知と呼ばれる言語化が難しい知識や経験に基づいています。しかし、
マニュアル化によって、以下の点が可能になり、継承を促進することができます。
熟練者によって異なる作業手順を統一することで、品質のバラつきを防ぎ、安定した
生産を実現できます。マニュアルを参考に、新人技能者が効率的に学習を進めること
ができます。このことで、熟練者に依存した技能伝承から脱却し、組織全体のスキル
アップにつなげることができます。
<例:加工条件導出作業のマニュアル化>
加工条件導出作業のマニュアル化は、以下のステップで進めることができます。
①作業の分解: 加工条件導出作業を、より小さな要素に分解します。
②各要素の分析: それぞれの要素について、影響を与える要因と、それらに対する熟練
者の判断基準を分析します。
③判断基準の明確化: 分析結果に基づいて、各要素における判断基準を明確化します。
④マニュアルの作成: 判断基準を具体的な手順や指示としてマニュアルにまとめます。
<マニュアル化の注意点>
マニュアル作成には、熟練者の協力が不可欠です。技能継承の重要性を理解してもらい
積極的に協力してもらうための工夫が必要です。
しかし、経験や勘を体系的に言語化することは容易ではありません。熟練者とのヒアリ
ングを重ね、具体的な事例を積み重ねることで、より詳細なマニュアルを作成すること
ができます。
マニュアルはあくまでもガイドラインであり、状況に応じて臨機応変に対応できるよう、
柔軟性を確保する必要があります。
熟練技能の中でも、特に勘やコツが必要な部分は、マニュアル化だけでは十分に伝承
できません。そこで、OJT(On-the-Job Training)を組み合わせた継承が重要になり
ます。
2.OJTでのポイント
新人技能者を熟練者とペアリングし、実際の作業を通して技能を習得できるようにし
ます。 熟練者は、自身の経験や勘に基づいた判断基準を、具体例を交えながら丁寧に
指導します。
また、新人技能者が質問しやすい環境を作り、疑問点を解消しながら学習を進められ
るようにします。そして、新人技能者の作業内容を定期的に観察し、フィードバック
を行います。
しかし、熟練者にとって、OJTは大きな負担となります。指導時間だけでなく、忍耐
力やコミュニケーション能力も必要とされます。熟練者自身が、自身の技能を効果的
に教えるスキルを持っているとは限らないため、そこで指導方法に関する研修やサポ
ートが必要となります。
OJTには、時間とコストがかかりますが、粘り強く効率的な指導方法の検討や、外部
講師の活用なども検討し、OJTを成功させる仕組みの確立を行います。
3.映像記録など、その他の継承方法
熟練者の作業風景を映像で記録し、新人技能者が繰り返し学習できるようにします。
例えば加工機械の過去の加工条件導出作業の事例を集め、データベース化することで
類似事例を検索しやすくします。
また、熟練技能を学ぶ者同士が交流できるコミュニティを作り、情報共有や相互研鑽
の場を提供します。
4. まとめ
熟練技能の継承は、マニュアル化とOJTを組み合わせることで効果的に進めることが
できます。それぞれの方法のメリットとデメリットを理解し、状況に合わせて最適な
方法を選択することが重要です。
また、熟練者への協力や指導スキルの向上など、継承を成功させるための様々な工夫
が必要です。