中小製造業DXの進め方;多品種少量生産工場で取得すべきデータの種類
中小製造業にとって、人手確保と熟練技術の継承は大きな課題となっています。
解決策としてデジタル技術やAIを導入することが考えられ、人手による外観検査、
運搬作業など、加工や組立などと違って付加価値の低い作業をロボットやAI技術
を使って解決し、その分、付加価値の高い作業に従事することが可能になって
きました。
しかし、導入には技術面、費用面で中小にとってハードルが高いものになっています。
このような課題に対し、どのように取り組めは良いか、考えてみます。
1. 課題の明確化と優先順位付け
まずは、自社の課題を具体的に把握することが重要です。例えば、以下の点について
明確にしてみましょう。
(1)人手不足による影響(納期遅延、品質低下、労務費増加など)
(2)熟練技術継承の状況(後継者不足、技術習得の難しさなど)
(3)デジタル技術・AI導入のハードル(技術力不足、費用負担、導入後の運用・保守など)
これらの課題を整理し、解決の優先順位を付けましょう。例えば、納期遅延が深刻な
場合は、自動化による生産性向上が最優先課題となるでしょう。
2. 現状の把握とソリューションの検討
課題を明確にした後は、現状の技術や設備、予算などを踏まえ、解決策を検討して
いきます。
(1)デジタル技術・AI
ロボット:単純な運搬作業、ピッキング作業などに活用できます。
AI:外観検査、画像判別、データ分析などに活用できます。
IoT:設備の稼働状況を監視し、予知保全につなげることができます。
これらの技術を組み合わせることで、より効果的なソリューションを構築することが
できます。
(2)導入事例の参考
経済産業省や中小企業庁のホームページには、デジタル技術・AIを導入した中小製造
業の事例が掲載されています。これらの事例を参考に、自社に合ったソリューション
を検討しましょう。
3. 専門家や支援機関の活用
デジタル技術・AIの導入には、専門的な知識や技術が必要となります。以下のような
専門家や支援機関を活用しましょう。
(1)ものづくり支援拠点
各都道府県に設置されており、専門スタッフによる相談や助成金のあっせんを受けら
れます。
(2)中小企業向けITコンサルタント:導入に適した技術や製品の選定、導入計画の
作成、導入後の運用支援などをサポートしてくれます。
(3)大学や研究機関:最新の技術や研究成果に関する情報提供や、共同研究開発の
支援を受けられる場合があります。
これらの専門家や支援機関を活用することで、課題解決に向けた具体的な道筋を立て
やすくなります。
4. 費用対効果の検討
デジタル技術・AIの導入には、初期費用だけでなく、ランニングコストも発生します。
導入前に、費用対効果を十分に検討することが重要です。
(1)具体的な試算方法
導入による人件費削減額
生産性向上による売上増加額
設備投資費
ランニングコスト(保守費用、電気代など)
上記を算出し、投資回収期間や内部収益率などを指標として、費用対効果を判断しま
しょう。
(2)補助金・助成金の活用
政府や自治体から、デジタル技術・AI導入を支援する補助金や助成金が設けられて
います。これらの制度を活用することで、費用の負担を軽減することができます。
5. 導入に向けた準備
具体的なソリューションが決まったら、導入に向けた準備を進めましょう。
(1)従業員への説明・研修
導入の目的やメリット、影響について説明し、理解と協力を得ることが重要です。
(2)設備・システムの導入
必要な設備やシステムを導入し、テスト稼働を行います。
運用体制の構築:導入後の運用・保守体制を構築します。
6. 長期的な視点
デジタル技術・AIは、導入後も継続的に改善していくことが重要です。最新技術の
情報収集を行い、必要に応じて追加導入や改修を行うことで、効果を最大限に引き
出すことができます。
7. その他の取り組み
デジタル技術・AI以外にも、人手不足と熟練技術継承の課題解決に向けた取り組み
はあります。
(1)働き方改革
残業時間の削減、フレックスタイム制の導入、テレワーク制度の導入などにより、
労働環境を改善し、人材確保・定着を促進します。
(2)教育・研修
若手社員へのOJTや、外部講師による研修などを実施し、技能や知識の向上を図ります。
(3)シニア人材の活用
退職した熟練技術者を再雇用したり、嘱託社員として活躍してもらうなど、シニア
人材の知識や経験を活かします。
これらの取り組みとデジタル技術・AIの導入を組み合わせることで、より効果的な
解決策を実現することができます。
8. 情報収集
(1)政府・自治体の支援制度
経済産業省、中小企業庁、都道府県など、政府・自治体では、中小製造業向けに様々
な支援制度を設けています。具体的には、以下のような制度があります。
(2)補助金・助成金他
ジタル技術・AI導入のための費用の一部を補助金・助成金で支援する制度です。
そのほか融資制度:設備投資や運転資金などの資金調達を支援する制度、相談窓口
として専門家が、経営やものづくりに関する相談に応じます。
これらの支援制度を活用することで、課題解決に向けた取り組みをより効果的に
進めることができます。
経済産業省 中小企業庁ホームページ:https://www.chusho.meti.go.jp/
各都道府県のホームページ
(3) 民間団体の支援制度
商工会議所、工業会、金融機関などの民間団体でも、中小製造業向けに支援制度を
設けている場合があります。具体的には、以下のような支援制度があります。
セミナー・研修:デジタル技術・AIに関するセミナーや研修を開催しています。
マッチング支援:課題解決に役立つベンダーやコンサルタントを紹介するサービスです。
情報提供:最新動向に関する情報提供や、事例の紹介などを行っています。
これらの支援制度を活用することで、より多くの情報収集や専門家への相談が可能に
なります。
(参考)
各商工会議所のホームページ
各工業会のホームページ
金融機関のホームページ
(4)成功事例
デジタル技術・AIを導入して課題解決に成功した中小製造業の事例は、多くの参考
情報となります。具体的な導入方法や効果を知ることができるだけでなく、自社の
課題解決に役立つヒントも見つけることができます。
(参考情報)
経済産業省 中小企業庁ホームページ:https://www.chusho.meti.go.jp/
各都道府県のホームページ
ものづくり支援拠点のホームページ
コンサルタント会社のホームページ
(5)展示会・イベント
デジタル技術・AIに関する展示会やイベントが各地で開催されています。最新技術
やソリューションを見学したり、専門家と相談したりすることができます。
(参考)
経済産業省 中小企業庁ホームページ:https://www.chusho.meti.go.jp/
各都道府県のホームページ
ものづくり支援拠点のホームページ
コンサルタント会社のホームページ
(6)情報誌・Webサイト
デジタル技術・AIに関する情報誌やWebサイトでは、最新動向や導入事例などを
紹介しています。
(参考)
日経ものづくり
MONOづくり
製造業界ドットコム
IoTNEWS
(7)大学・研究機関
大学や研究機関では、デジタル技術・AIに関する研究開発が行われています。最新
技術に関する情報収集や、共同研究開発の検討などが可能です。
(参考)
各大学・研究機関のホームページ
(8)コンサルタント会社
デジタル技術・AI導入に関するコンサルタント会社は、課題分析、ソリューション
提案、導入支援など、様々なサービスを提供しています。
(参考)
中小企業庁「ものづくり相談窓口」
:https://www.meti.go.jp/intro/consult/index.html
各商工会議所のホームページ
9.まとめ
中小製造業における人手不足と熟練技術継承の課題解決には、段階的な取り組みと
関係機関の活用が重要です。
上記の情報収集方法を活用することで、課題解決に向けた具体的な道筋を立て、
必要な知識や支援を得ることができます。