痛くない注射針で深堀り加工技術を貫く:大手企業と組めば中小企業単独では出来ないことも可能となる
ある下請け受注生産工場の社長のコメントです。
私の会社は量産の加工を一切やっておらず、多品種少量の製品を大手企業や
商社から受注して生き残っています。
現在悩まされているのは、客先及び中間の商社、大手メーカの技術力の低下
が著しいということです。
1.著しい技術力低下
図面を引いて客先の了承を得て納品した製品が間違えていたとか(客先の
間違い)、製作している途中に変更がかかったり、寸法が入っていないと
返却されたり(寸法は入っていて測定の方法が間違えている)とがかなり
多くなってきてます。
特に海外に名前の売れている大企業の割合がかなり多いです。
大手企業の製造現場が実際図面も読めないほど酷い状態になってしまって
いるようでしょうか?間違えていて恥ずかしいとか、次に生かす事は考え
たりしないのでしょうか?
今後の日本は技術を海外に売るよにならないといけないと思うのですが、
現状では出来そうになく心配でなりません。
皆さんは今後の製造業に未来があると思いますか?
2.製造業の技術力・現場力が低下の具体事例
多品種少量、垂直生産立ち上げのなかで、新製品立ち上げ失敗例は枚挙に
いとまがありません。
その主な例を4つ上げてみます。
①設計不良
・量産直前まで図面を変更している(確認作業、納期に影響)
・製造を考慮しない設計(加工性・組立性、部品調達性)
・機能不良(機能欠陥、信頼性が低い)
②潜在不具合のレビュー不足(設計・製造)
・工程能力不足(製造を考慮しない設計、量産になって規格外品多発)
・生産性低い(設備能力、人員不足、外注対応力不足)
・ポカミスが多い(作業手順の確認漏れ、ポカミス対策不備)
③初品、初期流動管理不十分
・新製品プロジェクト体制不備、責任部門不明確
・異常検出、異常処理フロー不備
④変化点管理不十分
・重要要因、重要特性の管理不十分
・ポカミス対策不十分
大手企業の仕事のやり方は、そのまま下請けに丸投げ。
最終的には何とかまとめ上げる力はあったとしても、下請けに何が重要な
ポイントかを示すこともできないから後になって変更が続出し、混乱させ
るわけです。
大手企業では、設計者は需要に応じて派遣社員で凌ぐけれども、所詮は
その時限りの使い捨てになる。その業界の専門知識は持ち合わせていない
から出てくる図面も支離滅裂。
製造現場は熟練技能者がいなくなり、バイトや外国人でもできるよう
全てマニュアル化されているから図面も読めず、臨機応変の対応も
できません。
残念ながらそれが今の日本の製造業の現実です。
これからは一握りの頭のいい設計者と生産技術者が図面と工程を作り、
設備担当者が機械のメンテナンスを行うようになります。匠の技術は
消えゆく運命でしょうか。
3.製造業の技術力低下傾向の理由
技術力低下の理由は複合的で、様々な要因が絡み合っていますが、主に以下
の点が挙げられます。
(1)人材不足
少子高齢化による労働力人口の減少と、製造業への魅力低下による人材不足
が深刻化しています。
特に、熟練技能者や、デジタル技術を使いこなせる人材の不足が顕著です。
人材不足は、技術革新や生産性の向上を阻害する大きな要因となっています。
(2)経営環境の変化
グローバル化や国内市場の縮小により、製造業は厳しい経営環境に置かれて
います。
企業はコスト削減を迫られ、研究開発への投資が抑制されています。
長期的な視点での技術開発が難しくなり、技術力の低下につながっています。
(3)イノベーション力の低下
日本の企業は、かつて世界をリードするイノベーション力を持っていましたが
近年は低下傾向にあります。
これは、リスクを恐れる企業文化や、官民連携の不足などが原因と考えられて
います。
イノベーション力の低下は、新技術の開発や、市場変化への対応を遅らせ、
技術力の低下を加速させています。
(4)デジタル技術への対応遅れ
第4次産業革命と呼ばれる技術革新が進む中、日本の製造業はデジタル技術への
対応が遅れています。
AIやIoTなどの新技術を積極的に導入していない企業が多く、国際競争力が低下
しています。デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの構築も遅れており
技術力の低下に拍車をかけています。
(5)教育・訓練制度の課題
日本の教育・訓練制度は、変化の速い技術革新に対応できていないと言われて
います。
学校教育では、実践的な技術やスキルを十分に習得できないケースが多く、
企業でのOJTに頼らざるを得ない状況です。
また、社会人向けの再教育・訓練制度も十分に整備されておらず、技術者のスキ
ルアップが阻害されています。
これらの課題を克服するためには、政府、企業、教育機関が連携して取り組む
ことが必要です。具体的には、以下のような対策が挙げられます。
・魅力的な職場環境の整備による人材確保
・研究開発への投資拡大
・イノベーション文化の醸成
・デジタル技術の積極的な導入
・教育・訓練制度の改革
これらの対策を進めることで、日本の製造業は技術力を再び向上させ、国際競争
力を強化することができるでしょう。
なお、上記以外にも、社会インフラの老朽化や、エネルギー問題など、技術力低下
に影響を与える様々な課題があります。これらの課題も併せて解決していくこと
が重要です。