QCサークル活動が停滞する理由とは?課題達成型QCストーリーで新しい分野の製品受注へ!
中小製造業にとって、製品設計機能を社内に持つことは、他社との差別化、
競争優位に立つための強力な武器となります。
開発設計は商品の価値創出の根源であり、「強い開発設計体制作り」は
これからの中小企業にとって、最も重要な課題となっています。
1.開発設計組織を持つメリット
開発設計機能は、目に見えず模倣しにくい設計知識+設計手順を企業内部
に蓄積され、体系化されたものです。
これからの開発設計は、設計知識を暗黙知から形式知に置き換えて組織的
に管理・活用する社内体制を構築することが重要です。
そして、このことは日本の製造業は新興国の追従を振り切ることができる
唯一の手段だと考えられます。
また、中小企業にとって設計機能を持つと言うことは、他社との差別化
そして、製品・サービスの高付加価値化につながり、下請け体質からの
脱却を可能とします。
2.強い開発設計体制作りのポイント
(1)“ハイスピードものづくり”を実現する
すべての価値の源泉は「時間」です。原価も、基本的には人が要した時間に
比例して決まります。従って開発期間や製造期間の短縮は、競争上極めて
重要な要素です。
開発期間が短ければ、受注獲得件数が増える。開発投資も削減できる、投資
回収期間が短くなって資本回転率が向上します。
さらに、設計変更も減って設計工数や量産設備手配などのやり直し(ムダ)
費用を大幅に削減できます。
(2)日本の特性を生かす
日本人の特性は他民族にない「擦り合わせ能力」(平易な言葉でいうなら
「緻密さ」「器用さ」)であるといわれています
しかし近年、製品はデジタル化、製造はIT化が進み、日本の製造工程による
優位性は低下し、日本の地盤沈下が顕著となっています。
このような時代において、日本の製造業がが再び復活する道は、日本人の擦り
合わせ能力を、ものづくりの源流で、価値創造の源泉でもある商品企画、設計
領域にまで踏み込んだ標準化を推し進めることが重要です。
ただ、部品製造を主体とした中小企業にとって、設計ノウハウの蓄積作業は
並大抵ではありません。
そのために、派遣技術者として大手企業へ人材を送り込み、設計作業に従事す
る、または、設計業務ごと自社に取り込んだり、大手企業設計経験者の中途
採用を積極的に進める企業も見受けられます。
しかし、従来の受託製造から設計機能を内製化するには、多くの課題があり
ます。
そこで、以下のステップで、強い開発設計体制を構築し、製造部門との融合を
実現する具体的な方法を提案します。
1. 経営層のコミットメントと体制整備
経営層の理解とビジョン: 経営層が開発設計機能の重要性を理解し、長期的な
ビジョンを持つことが重要です。
①専任部署の設置: 設計部門を独立させ、責任者と体制を明確にする。
②人材育成・確保: 必要スキルを持つ人材を育成・確保する。外部人材の登用
も検討する。
③情報基盤の整備: CAD/CAMなどの設計ツール、ドキュメント管理システム
などを導入する。
2. 段階的な機能強化と実績作り
①既存製品の設計: 最初は、受託製造している既存製品の設計から始める。
②顧客との協業: 顧客と密接に連携し、ニーズを汲み取った設計を行う。
③試作品・試作設備の整備: 試作品・試作設備を整備し、設計の検証を行う。
④設計実績の積み重ね: 実績を積み重ねることで、顧客や取引先の信頼を得る。
3. 製造部門との連携と融合
①情報共有の仕組み: 設計部門と製造部門の間で、設計情報や製造情報を共有
する仕組みを作る。
②共同検討: 設計段階から製造部門を巻き込み、設計の妥当性や製造性について
検討する。
③試作品・量産移行の円滑化: 設計部門と製造部門が連携し、試作品・量産移行
を円滑に進める。
そのため、試作品製作に、製造部門の社員が参画し、設計の妥当性や製造性を
検証する。
④モノづくり全体の最適化: 設計と製造を融合させ、モノづくり全体の最適化を
目指す。
⑤共同研修: 設計部門と製造部門の社員向けに、共同研修を実施する。
⑥設計レビューへの製造部門の参加: 製造部門の社員が、設計レビューに参加し
製造視点からの意見を述べる。
4. 外部支援の活用
①ノウハウ不足の補完: 設計ノウハウが不足している場合は、外部の設計会社に
協力を依頼する。
②専門性の高い人材の確保: 特定の専門性の高い人材が必要な場合は、フリー
ランスや派遣エンジニアを活用する。
③資金調達: 設備投資や人材育成に資金が必要な場合は、補助金や融資制度を
活用する。
5. 継続的な改善と進化
①最新技術の導入: 最新の設計技術や製造技術を積極的に導入する。
②人材のスキルアップ: 社員教育や研修を通じて、人材のスキルアップを図る。
③組織体制の見直し: 必要に応じて、組織体制を見直し、より効率的な体制を構築
する。
④顧客ニーズへの対応: 顧客ニーズの変化に迅速に対応できる体制を構築する。
中小製造業にとって、開発設計機能の社内化は容易ではありません。しかし、上記
のステップを参考に、経営層のコミットメント、段階的な機能強化、製造部門との
融合、外部支援の活用、継続的な改善と進化を図ることで、強い開発設計体制を
構築し、競争優位に立つことが可能です。