作業の形骸化がもたらす弊害をなくすには?4つの根本原因と6つの改善策
以下のQ&Aの内容を理解し、なぜなぜ分析に真髄に迫っていただければ
幸いです。
質問1:トヨタ式なぜなぜ分析の発案者である大野耐一元副社長の考え方
は著書である「トヨタ生産方式に述べられています。しかしこの内容は必
ずしも理論体系化されておらず、また実施事例も説明がありますが、目的
実施手順も不明確です。
何が真の原因か?再発防止につながるかも不明確です。これらは、様々な
専門家と称する人の解説を見ても明らかです。そこで、大野耐一氏の言わ
んとしていることを整理し、どのように解釈すれば良いのかを教えてくだ
さい。
回答1:大野耐一氏が生み出した「なぜなぜ分析」は、トヨタ生産方式
の根幹を支える問題解決手法として広く知られています。しかし、その
本質を理解するには、単に「5回なぜを問う」という表面的な解釈を超え
大野氏の深い洞察と実践的な知恵を読み解く必要があります。
1. 真の原因とは何か? – 問題の奥底に潜む「ムリ・ムラ・ムダ」を暴く
大野氏は、真の原因を単なる現象の直接的な要因ではなく、問題の背後
に潜む「ムリ・ムラ・ムダ」であると喝破します。
ムリ: 人や機械に無理な負荷をかけること。例えば、無理な納期や目標
設定、能力を 超えた作業指示などが該当します。
ムラ: 作業内容や工数、品質などにバラつきが生じること。例えば、作業
手順の未確立、設備の老朽化、人員不足などが原因となります。
ムダ: 非付加価値を生む一切の活動。例えば、待ち時間、不良品の発生、
在庫の過剰運搬の非効率などが挙げられます。
なぜなぜ分析では、表面的な現象に対して「なぜ」を深掘りし、これら
の「ムリ・ムラ・ムダ」がどのように発生しているのかを明らかにする
ことが重要です。
2. なぜなぜ分析の目的:真の原因を明らかにし、再発防止策を導き出す
大野氏は、なぜなぜ分析の目的を単なる問題解決ではなく、「再発防止」
に重きを置いています。なぜなら、真の原因を特定することで、問題が
再び起こらない仕組みを構築することができるからです。
そのため、なぜなぜ分析では、単に「なぜ」を5回繰り返すだけでなく、
以下の点に留意する必要があります。
事実と意見の峻別: 感情や思い込みに基づいた意見ではなく、客観的な
事実を基に分析を進めることが重要です。
多角的な視点: 異なる立場や視点から問題を捉え、思い込みによる偏り
を排除する必要があります。
論理的な思考: なぜなぜ分析で導き出された原因が、真の原因であること
を論理的に説明できる必要があります。
3. 大野耐一氏の言葉から読み解く、なぜなぜ分析の真髄
大野氏は、なぜなぜ分析について以下のように述べています。
「なぜなぜと問いつめていくと、必ず行き詰まる。しかし、そこで諦め
ずにさらに考え抜いていくと、真の原因が見えてくる。」
この言葉は、なぜなぜ分析が単なるテクニックではなく、問題の本質を
見抜くための深い思考力と洞察力を必要とすることを示唆しています。
また、大野氏は以下のように真の原因の重要性を強調しています。
「真の原因を見つけなければ、いくら問題を解決しても、同じ問題が繰り
返される」真の原因を特定することで、問題の再発を防止し、真の改善
を実現することができるのです。
4. トヨタ式なぜなぜ分析の実践における注意点
大野耐一氏の考え方を踏まえ、トヨタ式なぜなぜ分析を効果的に実践する
ために、以下の点に注意する必要があります。
適切なタイミングで実施: 問題が発生した直後だけでなく、問題が潜在化
する前に予防的に実施することが重要です。
関係者全員の参加: 問題に関わる部署や関係者全員を巻き込み、多角的な
視点から分析を行うことが重要です。
継続的な改善: なぜなぜ分析は単発の活動ではなく、継続的に改善を図る
ためのプロセスとして位置付ける必要があります。
質問2:真の原因とは何か?について教えてください。大野氏の事例では
機械が止まったのはなぜかについてなぜ、なぜを5回繰り返しています。
しかし5回目のなぜの結果は、機械にろ過器がついていなかったというもの
です。
これが真の原因だとしたら、ろ過器を付ければいいことになります。しか
し、果たしてそれでいいでしょうか?なぜなら、ろ過器がついていなかった
原因は付け忘れたのか?それとも、もともとその機械の仕様上ついていな
かったのか?など理由がそれぞれあるはずです。
そう考えると、ろ過器がついていなかったのは真の原因ではないことになり
ます。
付け忘れを防止する仕組み、仕様検討漏れを防ぐ仕組みの不備が真の原因で
それらの仕組みを直すことが再発防止につながると考えられますが、その
様な記述はどこにもありません。
回答2:ご指摘の通り、大野耐一氏の著書における「機械が止まった」と
いう事例は、真の原因究明の難しさを象徴しています。5回の「なぜ」で
導き出された「ろ過器の欠如」は、確かに問題の一因ですが、真の原因は
より深いところにある可能性があります。
大野氏は、真の原因を単なる表面的な現象ではなく、「ムリ・ムラ・ムダ」
という3つの観点から捉えるべきだと説いています。(回答1参照)
真の原因を特定するためには、単に「なぜ」を繰り返すだけでなく、これ
らの「ムリ・ムラ・ムダ」の視点から問題を深く掘り下げることが重要です。
大野氏は以下のように述べています。
「なぜなぜと問いつめていくと、必ず行き詰まる。しかし、そこで諦めず
にさらに考え抜いていくと、真の原因が見えてくる。」
上記の事例では、5回目の「なぜ」で行き詰まってしまっていますが、真の
原因を明らかにするためには、更なる考察が必要です。
真の原因究明のための具体的なステップ:
1.事実と意見の峻別: ろ過器がなかったという事実に基づき、推測や憶測で
はなく、客観的な情報を収集します。
2.5W1Hの徹底活用: なぜ、誰が、いつ、どこで、どのように、ろ過器が
なかったのかを明らかにします。
3.多角的な視点からの分析: 現場の作業員、管理者、設計者など、様々な関
係者の意見を聴取し、問題を多角的に分析します。
4.「ムリ・ムラ・ムダ」の視点の導入: ろ過器がなかったこと以外にも、
「ムリ・ムラ・ムダ」が存在していないかを探ります。
5.根本原因の仮説立案: 上記の分析結果に基づき、真の原因の仮説を立てます。
6.仮説の検証: 検証方法を検討し、仮説が正しいかどうかを確認します。
7.真の原因の特定: 検証結果に基づき、真の原因を特定します。
8.再発防止策の策定:真の原因を特定したら、再発防止策を策定する必要が
あります。再発防止策は、単にろ過器を取り付けるだけでなく、根本的
な問題を解決するような対策であることが重要です。
質問3:「真の原因とは、単なる表面的な現象ではなく、「ムリ・ムラ
・ムダ」という3つの観点から捉えた、問題の根本的な原因です」に関し
て、私の意見を述べます。
表面的な現象については、現場、現物主義で現場で起こっている物理現象
の究明です。次に、この物理現象はなぜ発生したのか?あるいは機械が
止まる前になぜ異常が発見できなかったのか?管理(仕組み)の問題を
究明することです。
品質管理を行っている工場であれば、異常の見える化、点検、保守の方法
が仕組み化されているはずです。この仕組みの運用がまずければ、ある時
機械が止まってしまう可能性があります。
この仕組みは、保守点検の周期、点検内容について「ムリ・ムラ・ムダ」
の発生も想定して作られていなければなりません。そして物理現象の原因
と管理上の原因、この2つを究明し解決することによって再発防止につな
がると考えられますが如何でしょうか。
回答3:ご意見ありがとうございます。現場視点と管理視点の融合は、真
の原因究明をより深化させ、効果的な再発防止策を導き出すために非常に
重要です。
1. 現場視点と管理視点の重要性
真の原因は、単一の要因ではなく、複雑な要因が絡み合って発生すること
が多いです。そのため、問題の表面的な現象にフォーカスするだけでなく
現場で実際に起こっている物理現象と、それを取り巻く管理(仕組み)の
両方の視点から分析することが重要です。
2. 現場視点:物理現象の究明
現場視点では、5W1H(What、Why、When、Where、Who、How)
を徹底的に掘り下げ、問題の物理現象を詳細に把握する必要があります。
具体的には、以下のような点に注目します。
問題が発生した状況: いつ、どこで、どのような状況で問題が発生したの
かを具体的に記録します。
問題の症状: 問題の具体的な症状を詳細に観察し、記録します。
関係者の証言: 現場で作業していた作業員や、関係者から話を聞き、問題
発生時の状況を把握します。
データの分析: 過去のデータや、センサーデータなどを分析し、問題の
傾向を把握します。
3. 管理視点:仕組みの問題の究明
管理視点では、問題の背後に潜む管理(仕組み)の問題を明らかにする必
要があります。具体的には、以下のような点に注目します。
管理体制: 問題に関わる管理体制が適切に構築されているかを確認します。
作業手順: 作業手順が明確に定義されており、徹底されているかを確認し
ます。
点検・保守: 点検・保守の頻度や内容が適切に設定されており、徹底され
ているかを確認します。
教育・訓練: 作業員に対する教育・訓練が適切に行われており、知識・技
能が十分に習得されているかを確認します。
4. 真の原因の特定:現場視点と管理視点の融合
真の原因を特定するためには、現場視点で明らかにした物理現象と、管理
視点で明らかにした仕組みの問題を有機的に結びつける必要があります。
具体的には、以下の点を考慮します。
物理現象と仕組みの問題の関連性: 物理現象がなぜ発生したのか、その背
後にどのような仕組みの問題があったのかを分析します。
ムリ・ムラ・ムダの視点: 物理現象や仕組みの問題に、「ムリ・ムラ・ムダ」
が存在していないかを分析します。
再発防止策への繋げ方: 物理現象と仕組みの問題を解決することで、どのよ
うな再発防止策を講じることができるのかを検討します。
5. トヨタ生産方式における事例
トヨタ生産方式では、真の原因究明に「なぜなぜ分析」という手法を用い
ています。なぜなぜ分析は、問題に対して「なぜ」を5回連続して問うこ
とで、真の原因に辿り着くことを目的としています。
しかし、単に「なぜ」を繰り返すだけでは、真の原因を見逃してしまう
可能性があります。そこで、トヨタ生産方式では、なぜなぜ分析に加え
て、現場視点と管理視点を融合した真の原因究明手法が実践されています。
6. まとめ
真の原因究明は、現場視点と管理視点を融合することで、より深化させる
ことができます。物理現象と仕組みの問題を明らかにし、「ムリ・ムラ・
ムダ」の視点を取り入れることで、効果的な再発防止策を導き出すこと
ができます。