深刻な製造業の技術力・現場力の低下と技術者不足
1.製造業といえども、今や「ビジネスモデル」の転換の必要
一般的な製造業のビジネスでは、“製品そのものの競争力”をつけ、“マーケット
シェア”を追いかけることにより増収を図ってきました。
結果、多くの企業は価格競争という消耗戦に陥っています。そこで自社が攻める
べき新たな市場や顧客を見出していかなければ将来がないことになります。
個別顧客には必ず対応すべき課題があります。
顧客の懐に深く入り込むことにより、価格競争からの脱却をめざすべきなのです。
コト売り、すなわちソリューションビジネスでは、“課題解決力”を競争を勝ち抜く
要素としてクローズアップし、何よりもまず顧客を知ることが重要となります。
何やら難しい話になってしまいましたが、顧客が抱えている課題の仮説を立て、
顧客の潜在的な課題を聞き出すことからビジネスをスタートし、把握された課題
に対しての解決策(何がしかの顧客にとっての価値創造に応える策)を提示し、
顧客にその“解決策“を売ります。
これは、工場で作る部品の機能や品質をいくら向上させても、買い手側の購買
部長は何の興味も示しません。これでは、今までの製造業のビジネスのやり方と
何ら変わりがありません。
「自社で何が作れるのか」ではなく、「自社が顧客の購買部長の悩みをどうや
ったら解決できるか」
という具合に考え方を変えなければなりません。
そうすると、意外と簡単に答えが出るかもしれません。なぜなら当社は、購買
部長よりずっとその製品や業界の事情に詳しいのですから。
2.いくら儲かるか?より、いくら儲けさせるか?
いいものを安く作って売る。そのために、ものづくり現場を大事にして来ました。
作業員一人一人が工夫してより良いものを作ろうと努力して来ました。
今までの工場であれば、100人の作業員に対して管理者が数名というのが一般の
工場の組織人員構成でした。
いまはどうでしょうか?
工場を見渡すと、機械は動いていますが、作業員はまばら。難しい機械を動かす
専門スタッフやら、計測器を操作する検査員など、ところどころにいるだけ。
すっかり工場の様子が変わってしまいました。
昔は直間比率などの指標があって、なるべく間接員は減らしなさい。というのが
工場の姿でした。昔は、いくらでモノを作って、いくらで売るか?が問題だった
のですが、今はこのモノは、どうやったらお客様に買って貰えるのか?
お客様の困っていることは何だろう?という発想で、モノを作らなければならなく
なって来ました。
工場の現場重視から、お客様の現場重視へ視点が移ったのです。
経営者として、会社を継続させていくには、いくら儲かったのか?が一番の関心
ごとです。
でも、これは儲からないからやらない。このお客は、売り上げが少ないからお断り
する、と言った仕事のやり方はどうでしょうか。
「もっと売り上げが取れて儲かる仕事は無いのか?」
「ここと取引すれば、必ず儲かるはずだ」
このビジネスの進め方では、おそらくお客様の信用、信頼は得られないでしょう。
「もっとこうすれば、お客様の利益につながります。」
「このような方法だったら、無駄な経費が節約できます。」
といった発想にならなければ、お客様はいづれ去っていくでしょう。
提案できるモノづくりに変身できるか?が問われます。