製造業の管理者が習得すべき日常管理の基本中の基本
SWOT分析とは、組織を、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」
「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの軸から評価する手法のこと
を指し、企業戦略の立案時などに用いられます。
SWOT分析での『強み』と『弱み』は、企業や組織の内部要因で発生したもので
あり、時には遠く昔より続くモノづくりの歴史の産物が『強み』や『弱み』と
なって現れており、日本の中小製造業の『強み』『弱み』には各企業で共通して
いる点が多いと考えられます。
また、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などについて分析が行なわれたうえで
それらが外部要因に対してどれほど力を発揮できるかが評価されます。
一方、「機会」「脅威」の軸は外部要因とされ、「経済状況」「技術革新」
「規制」といったマクロ要因と「競合他社」「顧客」「ビジネスチャンス」と
いったミクロ要因についての分析が行なわれます。
このような、内部要因と外部要因とをそれぞれ軸にした表を作成し分析する
ことで、戦略の対処策を立案、実行することをSWOT分析といいます。
ここで、中小製造業について、SWOT分析を行うと以下のようになります。
強み(Strengths)
日本の中小製造業は地域に根ざしたローカル企業であり、世襲や終身雇用に
基づく企業が多くそれゆえ、継続性に優れています。
基をたどれば、中世から営々と受け継がれてきた職人の暗黙知による特殊技能
卓越したモノづくりのノウハウがあり、従業員のモラルや組織団結力が高く、
高度な精密加工や短納期小ロット加工をこなし、QCD(品質・コスト・納期)
観点からも、世界で群を抜いています。
これらの強みが、これから未来に続く国際企業競争における差別化の源泉と
なっていくものと思われます。
弱み(Weaknesses)
日本の中小製造業は、このような発展過程から技術を『大手系列』に売り込む
ことで発展を遂げてきました。このため、自社で売る力やグローバル化、および
ブランドマネージメントなど市場創造が最大の弱みとなっています。
そのため、現場ベテラン依存のモノづくり体質が強く、エンジニアリング力が
弱く、具体的には、技術やサービスのシステムとしての提案力、組織としての
総合力の発揮が不十分でありITなど、最新技術への取り組みが遅れています。
日本の中小製造業が、この弱みを克服すれば“鬼に金棒”日本の『製造業復活』
を果たし、中小製造業が主役となって『モノつくり大国日本』の時代が再び
やってくると考えられます。
機会(Opportunities)
日本の中小製造業が作る製品の需要は世界中で拡大する傾向にあります。
日本市場の需要が減少傾向にあるが、それを穴埋めして更なる拡大を可能に
する世界需要を取り組むことは可能です。特に海外の大手企業は、品質向上
が必須課題となっており、優れた日本の中小製造業の技術力を欲しており、
そのビジネスチャンスはグローバル市場で拡大しています。
脅威(Threats)
中小製造業にとって「親会社に付いて行けば大丈夫」といった概念はこれから
通用せず、大手の内製化、取引先選別などによって仕事がなくなることが、
真の脅威であり、また、脱炭素化、EV化の流れの中で、産業構造が大きく変化
し、その対応力が問われる時代となっています。
そして、若年層の減少、熟練技能者のリタイヤなど、人材の不足が大きな問題
としてクローズアップされ、その影響を真っ先に受けるのが中小企業であるこ
とも事実です。
この弱みをローカル企業である中小製造業が克服することは容易ではないが、
支援機関など外部資源も有効に活用しながら、強みを生かしていく努力も必要
になってきます。
以上のように、SWOT分析を行うことで、自社を客観的に分析するため、機会
と脅威をとらえた攻防一体の戦略の策定につながります。
また、分析に向けて議論を進め、関係者間で組織の現状を理解し、共通の目標
に向かって協力体制を築くことも可能になります。
一方で、注意点としては分析者の主観で判断せず、客観的な強みとして分類でき
るのか、根拠となる数値をもとに検討する必要があります。