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106万円の壁

齋藤健太郎

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テーマ:情報発信

今月から、従業員501人以上の会社で働くパートの方については、年収106万円以上であれば社会保険に加入することになります。これまで年収130万円以上を社会保険加入の条件としていましたから、大幅な条件「引き下げ」となります。

これにより、パートで働く主婦のケースで、家計がどう変化するのか考えてみたいと思います。

これまで、夫の扶養の範囲で働くパートの主婦(以下「妻」といいます。)は、いわゆる103万円の壁を意識しながら働いてきました。年収103万円であれば、社会保険に加入する必要はありませんし、給与所得控除65万円と基礎控除38万円を差し引くと課税所得が0となり、本人が納税すべき税金もなかったからです。(住民税については、基礎控除が33万円なので、課税所得が5万円となり、それに対し10%の納税義務が生じますが、今回は住民税については考えずに試算します。)

また夫は、妻が給与収入103万円以下であれば、38万円の配偶者控除が受けられますから節税になりました。所得税率20%の夫であれば、76,000円の節税効果となります。

つまり妻の年収103万円と夫の節税76,000円、合計1,106,000円が家計の純増益ということです。

しかし、この秋より年収がわずか3万円上がるだけで、妻は夫の扶養をはずれ自分で社会保険料を負担することになります。その金額はご承知の通り給与額の約15%ですから、家計に与えるインパクトはかなり大きいといえます。

例えば110万円の年収になったら家計はどう変わるのでしょうか?

社会保険料は約15%ですから165,000円です。年収110万円の給与所得控除は65万円で基礎控除が38万円、社会保険料控除165,000円となり、課税所得は0円、つまり所得税の支払い義務は発生しません。

このケースであれば、夫が受けていた配偶者控除はそのまま適用ですから夫の節税額は変わらず76,000円です。

しかし家計全体でみると、社会保険料負担分のみ手取りが減りますから、ちょっと働く意欲という意味ではモチベーションがわきにくいでしょうね。

では、もうちょっと頑張って、パート年収150万円になったらどうでしょう?社会保険料の負担は225,000円です。給与所得控除は65万円と変わりませんから、課税所得は245,000円となります。所得税は5%の負担率ですから12,250円の支払いとなります。

また夫の方も配偶者控除はなくなり配偶者特別控除となります。その額は18万円ですから、先ほど同様所得税率20%とすると節税効果は36,000円となります。

つまり、妻の手取りは1,262,750円、夫の税の戻りが36,000円、合計1,298,750円が、妻が今まで以上の年収を得て働いたことで潤った家計分となります。

103万円の時の家計収入と比較すると年間192,750円も多くお金が手元に残っているので、これは間違いなくプラスですね。でも年間で47万円分も多く働いて、純増が20万円弱だと、これもまた微妙な数字です。

きっと手取りの増減だけを見てしまうと、パートタイマーとして社会保険に加入するメリットはなかなか理解が進まないのではないかと思っています。特に、今支払っている給与の15%もの社会保険料が、実際に自分の暮らしをどう守っているのかを知らない方も多いからです。

できれば、社会保険加入をきっかけに、第三号被保険者でいた場合の公的保険と第二号被保険者になった場合の公的保険の給付の違いをしっかり知っていただければ幸いです。

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齋藤健太郎
専門家

齋藤健太郎(保険コンサルタント)

株式会社保険パートナー

損害保険にも生命保険にも精通し、保障内容全体をしっかりと把握したうえでアドバイスします。証券会社勤務経験があり、資産運用やライフプランに関する疑問・悩みにも対応。オンラインやラインでの相談も可能です。

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