「忙しいから」を使わない
車で出かけようとしたところ、車の鍵が見つかりませんでした。
出掛けにいつもの場所にない事に気づき、慌てて家中を探し回る事になりました。
妻も呆れた様子でしたが、文句を言いながら、一緒に探してくれました。
10分経ってもなかなか見つかりません。
車の鍵が付いたキーホルダーには、大事な鍵がいくつもついています。すると、鍵を無くした事によって起きる困った状況が次々と頭の中に浮かんできました。
次第に感情が湧き上がり始め、「そう言えば、最近、車の鍵に感謝する気持ちがなくなってきたなあ。」と、後悔し始めました。
困り果てていた時に、何気なく妻が、バックの中を見ました。
バックの中に探していたキーホルダーがありました。
「私のキーホルダーと似ていたから。」と一言。
いつもの場所でなく、机の上に置いてあったキーホルダーを無意識のうちに、バックの中に入れたようです。
ほっと安心し、後悔で一杯だった感情が引いていくのを感じました。
すると、今度は、妻への怒りが湧き始めました。
「それは、ないでしょう。一生懸命に探していたのに、ゴメンの一言もないなんて。」
と口に出して言いそうになりました。
きっとこれまでの私ならば、口に出して、喧嘩になっていたに違いありません。
「言ってはいけない。」と内なる声が聞こえたかと思うと同時に
「悪かったね。僕が机の上に置かなければ、よかったね。」
と口から言葉が吐き出されたように飛び出しました。
その時には、怒りと後悔が入り混じった複雑な重い感じを胸の辺りに感じていました。
その感情は、不条理な出来事に耐えた時の嫌な感じに似ていました。
きっと苦虫を潰したような顔をしていたと思いますが、その後、申し訳なさそうな顔をしていた妻と普通に会話をする事ができました。
相手に責任を転嫁せず、自分事にする事で、こんなにも世界が変わるのだと実感しました。
車の鍵への感謝を忘れ、蔑ろにしていた私に、鍵が怒りをぶつけ、隠れたのかも知れません。
鍵さんへ
ごめんなさい。そして、いつも、私を運んでくれてありがとう。
それだけでなく、こんな機会を作ってくれてありがとう。