呼吸を整える
ある雑誌の中で、国際コミュニオン学会名誉会長の鈴木秀子さんが、
「起きてくる出来事それ自体は、よい事でも悪い事でもありません。現実をありのまま受け入れる事ができずに、頭の中でよし悪しの二つに人間の苦しみは、生まれてくるといってよいでしょう。」
と、述べています。
これは、真実だと私は思います。
よし悪しの判断は、過去の体験経験から身につけた私たちが持っている価値観に照らし合わせることになります。
この価値観は、目の前の現実を生きていく大切なセンサーとして働き、無意識のうちに反応してしまうため、私たちは、物事をありのままに見る事はなかなかできません。
自分の都合のよい事はプラスと受け止め、都合の悪い事は、マイナスと受け止めてしまいます。
物事をありのまに見る事ができれば、苦しむ事はなく、全てを受け入れられることになります。
修行を通して、その域に達しようと努力される方も多いと思います。ですが、そこまでの努力はできなくても、1つの壁を乗り越えようとする努力は誰もがしています。
ただ、この壁を乗り越える時に、自分の価値観を強める方向で解決しようとすれば、同じような出来事が、繰り返し現れます。
それも強化された分より強固な壁が現れます。
自分の価値観を緩める方向で解決しようとすれば、壁は、ありのままに物事を見るための大事な試練になります。
自分の価値観は、長年の努力で作り上げたものですから、なかなか緩める事はできません。ただし、身につけた頃の現実と今とは異なり、現実に合わなくなってきたと考えると緩めることの違和感は少なくなると思います。
例えば、男尊女卑の時代に育った人が、ジェンダーフリーを受け入れる事にはかなり抵抗があります。
パワハラ、いじめ、体罰なども同様です。
身近なところで「時間厳守」も同様です。
「時間厳守」は、仕事をする上でかなり役に立ちます。
厳しい方は、会議に遅れる人がいると気になって仕方がありません。
感情的になって遅れてくる人を叱責する場合もあります。
時間厳守を強化する方向で、壁を乗り越えようとすると、時間を守らない人が現れないように厳しいルールを作ったり、罰則を設けたりする事もできます。
時間厳守が緩む方向で、壁を乗り越えようとすると、あまり時間にこだわりがなく、冷静に出来事を受け止め、遅れた原因を考えたり、遅れた人を気遣ったりすることができるようになります。「お互い様。」と声をかけるかもしれません。
このようにどのように壁を乗り越えるかは、自分次第に決めることができます。
壁が現れる時には、自分の価値観が現れたととらえ、価値観をゆるめられないかを探ることができれば、心穏やかに過ごす方向に力を発揮することができます。
苦しみは、苦しみを乗り越えるためにセンサーが働き、脳が
「あなたは、どうやってこの壁を乗り越えますか。苦しみを強化しますか、それとも緩めるますか」
と、教えてくれたのだと考えてみてはいかがでしょう?