認知症と上手く付き合う

須田敏男

須田敏男

テーマ:生き方

 認知症保険ができるほど、認知症を「害(悪)」ととらえている人が多くなっているように感じます。
 父もかなり認知症が進んでいます。時間や時期なども曖昧です。また、孫の名前がわからないとか、母が死んだ事を忘れているとか短期の記憶が曖昧になっています。
 時々現実とかけ離れた記憶が蘇り、その記憶にあった行動を取ろうとします。
 排便や排尿についての失敗も時々あります。

 この事実をどのように受け止め、対応するかは、介護する側の問題になります。

 そこで、認知症についての考えを一度整理してみようと思いました。

 脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出る・・・・認知症


『記憶がなくなる事は、本当に害(悪)なのだろうか?』

 そもそも、私たちがいろいろ悩みや苦しむのは、この記憶が大きく関わっています。
 他人と比較したり、過去の自分と比較したりしてストレスを作り出す事があります。
 記憶がなければ、過去の記憶と関わりなく、今を生きることになり、この手のストレスを感じることはないと思います。
 また、今を生きる時にうまく生きられない分、周りでフォローする事ができれば、ストレスを感じる事もありません。
 認知症は、ストレスが少なくなる事だと考えれば、害(悪)とは考えにくくなります。
 当然、フォローする側の負担が増える事がありますが、これが対応する側の問題になります。
 対応を負担と考えると負担になりますが、負担と考えず、学びの場や試されている場だと考えると負担感はありません。
例1 「マスクがない。どこにある?」
 理由を聞くと体操クラブに行くためだと言うので、
「まだ、夜中の3時だよ。体操クラブは、まだやっていないよ。」
 と答えました。(若い頃の元気な自分を思い出したのでしょう。)
 「そうか、まだ3時か。」と言ってベットに入りました。
例2 「ポケットに入れておいたお金が、なくなった。」
 「お金は、私が預かっているから心配ないよ。」
 「何に使うの?」
 「必要ならば、いつでも用意するから、安心して。」
 不満は少しあったようですが、一応落ち着きました。
例3 「母さんが、帰って来ないけど、どこにいる?」
 仏壇を指さして、
 「お母さんは、ここにいるよ。いつもお父さんがげんきk、見ているよ。」と話しました。
 「そうか、死んだんか。」と納得したようです。

 父が納得し、不安を取り除き、安心できるような言葉をかけることで、何とか問題行動を起こす事なく、ストレスも少なく、今を生きています。
 介助するこちらの対応次第だと思えば、正に試されていると考える事ができます。


『生活をする上で支障が出るのだろうか?』

 「一度倒れると自分では立ち上がる事ができない。」、「手すりにつかまってしか歩けない。」「自分で服の着脱ができない。」「排便や排尿を失敗する」など様々な問題があります。
 
 これらも、できる限り本人の負担や事故にならないよう環境を整える事で、支障が出ないようにすることができます。
 父の今の家庭での行動は、食事をすること、寝ること、排便や排尿をすることになります。(平日はデイサービスに通っているため入浴などは施設に助けてもらえます)
 
1 環境作り
 ・トイレへの動線に手すりをつけ、安心安全に行動できるようにする
 ・行動を制限するために囲いや鍵をつける
 ・監視用のカメラを設置する
 思わぬ行動をする事があり、行動に合わせて、少しずつ改善しながら、この3つになってきました。
 どこまで父の安全確保ができるのか、正に試されている感じです。

2 直接の対応
 食事や排斥、着替えの対応は、乳幼児への対応と考えれば、それほど大きな負担ではありません。
 若い頃、子育てを妻任せで、これらのことをしていなかった私の試練だと思っています。

3 関係者との対応
 介護に関わる仕組みが、昔と比べるとはるかに良くなり、家族の負担が少なくなっています。よいケアマネジャーや介護施設と巡り会えるように努力することで、かなり負担が軽減されます。
 
 このように考えて対応していると、認知症でありながら精一杯生きている父から、多くの学びを得る機会をいただいている感じがします。

 認知症は、害(悪)ではなく、本人を支える周りの人の生き方を試す神様からいただいたプレゼントかも知れません。

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須田敏男(メンタルヘルスサポーター)

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 最新の脳科学をベースにした「NLP心理学」を生かし、家庭への支援から働く人への支援と支援の範囲を広げ、悩みを持つ人の相談活動や企業向けの研修などにも幅広く対応。

須田敏男プロはぎふチャンが厳正なる審査をした登録専門家です

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