「取り上げる」は、目覚まし時計?

須田敏男

須田敏男

テーマ:メンタルヘルス

 日常生活に運動を取り入れることは、大切だとわかっていても、なかなか始められなかった私ですが、両親の介護を始めて、ようやくその大切さを実感し、重い腰を上げて運動を続けています。
 
 習慣にするには、強い衝撃が有効だということがよくわかる事例でした。

 先日、ある保護者の方から、ゲームに夢中になっている子どもの相談を受けました。
 「子どもから、ゲームを取り上げる事は、しない方がいいでしょか?」
 という質問があったので、この「強い衝撃」を思い出しました。

 「強い衝撃」は、恐怖症と同じで、一度の体験が習慣になるものです。
 例えば、高所恐怖症の方は、高いところから落ちた体験が原因になります。犬恐怖症は、犬に噛まれた体験が原因になります。
 
 この事から考えると、「取り上げる」が、ゲームを止めるような強い衝撃になるかと言えば、ならないだろうと思いました。

 好きなものを取り上げられても、嫌いにはなりません。
 好きだった牡蠣を食べて、食中毒になれば、牡蠣が食べられなくなるのとは、ちょっと違います。

 やめさせたいわけではなく、うまく使えればよいという事であれば、時間の管理がうまくできる事ではなかと考え、時間管理のために「取り上げる」を利用する事は有効に働くと話しました。

 子どもの成長には親の愛情のこもった関わりがとても重要です。
「こんな子に育ってほしい。」という願いから、目の前のゲームと向き合う事ができれば、「取り上げる」も有効になります。

 感情的に取り上げても反発するだけで、子どもは親の愛情を感じる事はありません。

 愛情を感じるためには、冷静な対応が必要になります。

 いきなり取り上げるのではなく、決められた時間を過ぎたら「取り上げる」という約束をした上であれば、子どもも仕方がないと諦めることができます。

 ここには、「時間が来たら自分でやめられる子」になってほしいとの思いで子どもの成長を見守る親の姿があります。

 親に依存して生きている子どもが自立に向かって歩んでいる時の手助けが、「取り上げる」なのです。
 「自分でやめられるようになるのはいつなのだろう。」「まだ、自分の力では難しいのかな。」と子どもの成長を見守っているのです。

 「取り上げる」は、目覚まし時計のようなものです。

 目覚まし時計がなくても起きられるのであれば、使わない方がいい事はわかっています。でも、起きられないから目覚まし時計を使って時間管理をしています。

 ゲームに夢中になっている子どもが、チラリと時計を見る事ができたら、成長の証です。
 すかさず、
「すごいね。時間を気にするようになったんだね。」
 と、子どもに声をかけ、喜んでいる親の姿を見せれば、少しずつゲームへの取り組みも変わります。
 目覚まし時計の役目を卒業するまでには、どれほど時間がかかるかはわかりませんが、
「もう、取り上げなくても大丈夫だね。お母さんは、安心だわ。」
と、子どもに話ができるまで、子どもの変化を見守り続ける親がそばにいてくれるから、子どもも頑張り続けられるのだろうと思います。

 深い愛情に支えられた「取り上げる」です。

取り上げる時に反発をするのであれば、愛情を子どもが感じていないと考えられます。

 「ごめんね。取り上げたくないんだけど。お母さんも辛いわ。」
など、話を聞いて取り上げられた時、
「しまった。また、お母さんに心配をかけてしまった。」
と、感じる子どもになっていれば、愛情が伝わった事になります。

「取り上げる」一つの行為ですが、心配しながら、悲しい思いで、仕方なく「取り上げる」をしている母親の姿から、愛情を感じると思います。
 ここには、怒りはありません。

 行動の裏にある愛情いっぱいの言葉かけが、子どもの心に響くのだと思います。

 愛情のこもった「取り上げる」を実践してもらいたくなりました。

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須田敏男(メンタルヘルスサポーター)

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 最新の脳科学をベースにした「NLP心理学」を生かし、家庭への支援から働く人への支援と支援の範囲を広げ、悩みを持つ人の相談活動や企業向けの研修などにも幅広く対応。

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