限界まで続ける
預かっているお子さんの中に、犬猿の仲と思うほどよく喧嘩をする2人がいます。
傘が触れただけもすぐに喧嘩になります。あまりにも回数が多くなってきたので、2人を呼び、
「これから仲良く一緒に生活するために何をしたらよいか、考えなさい。」
と、伝えました。
考えた末に、Aさんが
「相手のよいところを見つける事」と、話してくれました。
そこで、
「相手のよいところを10個見つけて、紙に書いてご覧。」
と、言って紙と鉛筆を渡しました。
Aさんは何とか10書き出しましたが、もう一人のBさんは、1つも書き出せません。
Aさんが書き出したBさんの10個のよさをみんなに聞こえるように、読み上げました。
一方Aさんについては、わからない状態なので、教室のみんなに
「Aさんのいいところない?」
と尋ね、みんなからAさん10個のよいところを集めました。
そして、書けなかったBさんにその内容を一つ一つ確認してもらい、当てはまる内容に◯をつけました。5つくらいに◯をつける事ができました。
私たちの脳は、シンプルに物事をとらえる傾向があり、一度ダメと決めると全てをダメととらえてしまいます。
そして、一旦ダメと決めると、ダメな情報を集め、ダメを強化していきます。
「いいところ」を見つける事は、一旦ダメと決めたことを見直すよい機会になります。
Bさんも、何とか5個ほど「いいところ」に気づき、見方を変える事ができました。
相手を一面的にとらえて、喧嘩をし続ける二人にとって、相手を多面的にとらえるとても大事な時間になりました。
そして、教室のみんなにもよい時間となり、教室の雰囲気も変わりました。
その後、子どもたちの活動を止め、
「人間には、いろいろな面があるから、一つに決めつけないでね。」
と、話しました。
勉強を終えて、遊びの時間になった時、「いいところ」を見つけられなかったBさんが、「Aさん、一緒に遊ぼ。」と声をかけてくれました。
その後、みんなで鬼ごっこをして、楽しい時間を過ごしていました。
喧嘩をする時の脳の働きは私たちも同様です。
喧嘩をすると、相手の嫌なところが次から次へと浮かんできます。嫌な感情が協力するため、その感情と合致する出来事を思考が見つけようと協力して動き出し、次から次へと出来事が湧き上がってきます。
そして、お互いを攻撃し合う事になります。
こんな時、今回のように
まずは、感情を鎮め、思考の協力を阻み、そして、代わりに「いいところ」見つけをするように思考を働かせます。
ただ、今回は、感情を鎮めるために私が、介入しました。
次から次へと湧き上がる感情を鎮めることはなかなか難しいと思いますが、次の方法を考えています。
1 場所を変える
対面していると常に刺激を受け続けるため、感情が次から次へと湧き上がってきます。トイレなど離れた場所に移動する事で、感情が湧き上がってくるのを止める事ができます。
2 呼吸を整える
感情が高まっている時には、呼吸は浅く、早くなっています。深呼吸をし、呼吸を整えると、感情の高まりを抑える事ができます。
3 一気に感情を爆発させる
思考が動き出す前に、泣いたり、大きな声を出したりして、「悲しい」「辛い」「腹が立つ」などを言葉にして今の感情を伝えます。思考が相手を責める言葉を探しに行く前に感情を爆発させれば、早く感情を鎮めることができます。
※ただし、この場合、相手が、この表現にどのように反応するかは、わからないので、相手を見極める必要があります。
感情を鎮めれば、必ず多面的に相手を見る事ができるので、いいところも見つけやすくなります。
感情の取り扱いは、修行のようなものですから、一度や二度で諦めず、根気よく繰り返す事しかありません。
私もただいま、修行中です。2に挑戦しています。