感情の奴隷にはならない
「長く生きてきたなあ。」と突然介護をしている父が、言いました。
95歳という年月を振り返っての言葉なのかはわかりません。
最近、「疲れた。」と口にする事の多い父ですから、今の状況をこんな言葉にしたのかもしれません。
その時、父との思い出が、ふと浮かんできました。
幼い頃に父と一緒に銭湯の帰りにラーメンを食べた事や電車に乗って野球観戦に行ったことなどです。
父に話しても、「そうか?」と返事が返ってくるだけで、思い出に花を咲かせることはできませんでした。
介助が増え、父からもらう「ありがとう。」の言葉は、多くなってきたけれど、たわいもない会話を父と楽しみたいと思いながら、ちょっと寂しい気分になりました。
期待しなければ、こんな感情にはならなかったと思います。
日常生活を振り返ってみると、期待しながら言葉を発することは、意外に多い事に気付きます。
「おはよう。」と声をかけた時、「おはよう。」と返事があると安心します。逆に、返事がないと不安になったり、相手との距離を感じたりします。
「〜をお願いね。」と頼んだ時に、黙っていたり、顔つきが変わったりすると、お願いしない方がよかったかなと思ったり、むずかしいことでないのに何故引き受けてくれないのかと相手を責める気持ちが湧き上がったりします。
このように、相手の反応に振り回されている感情がある事に気付きます。
これでは、疲れてしまいます。
期待を弱めたり、期待通りの反応がなかった時の対応を事前に考えておくと、相手の反応の影響を受けにくくすることができます。
例えば、
「事情があれば、この反応になっても仕方がない。」
「誰にでもあることだから、特別な期待はしないでおこう。」
「この事で、関係を深めようと考えるのは、違うかもしれない。」
「受け入れやすい話し方を考える必要がある。」
などと、自分の内側で処理できる考え方を用意しておくことがそれです。
感情に振り回されないで、穏やかな生活を送りたいものです。