相続から「想続」へ。
私たちは、どんな人であっても必ずいつか「死」を迎えることを知っています。
かといって、「よし、終活始めよう」と行動できる人はほんの一握り。
もちろん、今すぐ死んでしまうとは考えないからです。
私は、あるお寺で開催される終活セミナーの講師を定期的に務めているのですが、
そのセミナーにほぼ毎回参加する60代の朗らかな女性がいらっしゃいました。
その方は、既にご主人を亡くされていて、終活に人一倍関心を持ち、意識も高い方でした。
しかし、そんな方でさえも、実践となると話は別で、
課題がわかっても何も進めることができずに、とりあえず学びを楽しむといった感じでした。
世の中がコロナ禍となり、セミナー開催がお休みになり、1年ほどたったころ、
その方から「急いで遺言書を作りたい」と連絡が入りました。
お話をお聴きすると、実は、数日前に末期の肺ガンであることを宣告され、
全身への転移も分かり、自分の余命を認識したとのこと。
「私にまだ力が残っている今のうちにお願いします」
病魔と抗がん剤治療に身体を消耗させながらも人生の終い方と向き合おうとする姿に、
付き添いの息子さん達は「無理して作らなくても…」と、戸惑っていました。
それでも、ご本人は自分の死に初めてリアリティーを感じたのでしょう。
「私にまだ力が残っている今のうちにお願いします」と涙を浮かべながらも、
毅然とした強い眼差しで依頼されました。
その日その日の体の調子を確認しながら、負担なく短時間の打ち合わせを重ね、
公証人の自宅出張という形をとり、ついに想いのこもった公正証書遺言が完成しました。
書名を終えた瞬間、証人を務めた私とスタッフは、
「遺言書完成おめでとうございます」
と伝えると、涙を一つこぼした後、安堵の表情を浮かべ、
今度はニコッと笑顔を返してくれました。
それからわずか約2週間後、その方は永眠されました。
あれから3年ほど経ちますが、ご家族が今でもこう言います。
「母は本当に見事なしまい方をしました」と。
私はよく、講演や取材などで、「終活は笑って涙する感動体験」と表現しています。
遺言書作成はその最たるもので自分の財産の総決算をし、想いと共に大切な人につなぎます。
まだ早いという責任逃避
それでも多くの人が「まだ早いのでは」と言います。
70歳過ぎた方でもそんなことを言います・・・
死と向き合っていないから当然ですが、やれるときにやらないと機会を失くします。
生命保険に入るのに、70歳の方が「まだ早いのでは」と言いますか?
死ぬ間際につくるのですか?
死の淵でつくれるのですか?
身体が衰えてからつくるのですか?
認知症になってからつくれるのですか?
気力・体力・意思能力
ご本人に「気力」「体力」「意思能力」の3つの力が保てているうちに、
どうぞ明るく元気に取り組んでください。
生命保険以上のお守りを持ってください。