子育ては母親の責任?
たかざわです。
私は自前でカウンセリングオフィスを運営していますが、それ以外に、ある学校法人でカウンセラー職兼講師職も請け負っています。
そこで長らく一緒にやってきた先生が、一度に二人も退職することになりました。
ご自身のライフプランを実現するための退職なので、応援とともに送り出したい気持ちがある一方、長いこと共に過ごしてきた人がいなくなるのはとても寂しいですね。
出会いがあれば別れがあると申しますが、いくつになっても別れは堪えます。
喪失の苦しみ
人間が抱える苦しみの一つに、仏教でいう「愛別離苦」というものがあります。
愛する人、大切な人など、「つながり」を喪失することの苦しみを指す言葉です。
人は大切なものを失ったとき、とても傷つきます。
それが見えるものなら悲しんで癒すこともできますが、もしそれが見えないものだったら、そもそも失ったことに気づくこともできません。
しかしそれでもそれも喪失体験。
ダメージは受けてしまうものです。
特にそれが子ども時代の喪失であれば、より影響は大きなものとなります。
見えない喪失
見えない喪失とはどんなものでしょう。
それは、そこにあってしかるべきものが存在しない状態です。
子どもの頃の見えない喪失とは、たとえば、、、
いつも責められてばっかりだった・・・「自尊心」を喪失したのかもしれません。
両親が争ってばかりいた・・・「安全感」を喪失したのかもしれません。
まともに世話をしてもらえなかった・・・「自己価値」を喪失したのかもしれません。
指示命令ばかりだった・・・「リラックス」や「楽しむこと」を喪失したのかもしれません。
親が虚弱・脆弱であった・・・「子どもらしく甘えること」を喪失したのかもしれません。
どれほど大切なものであっても、元からないものに私たちは気づくことができません。
だけどそれが大切なものであればあるほど、子どもにとっては大きな喪失体験になるのです。
子どもにとって大切なもの
喪失させてはいけないような、そんな大切なものってなんでしょうか。
ここでは子どもが育つために大切な
「parenting capacity」
と言われる7つの要素をご紹介します。
①Basic care(基本的なケア)
子どもの生命や健康を維持するための基本的なケア
②Ensuring safety(安全の確保)
子どもが脅威や危険から守られる”安全”な環境を保つこと
*基本的ケアを除けば、これがなにより大切な要素です。
③Emotional warmth(情緒的な温かさ)
子どもの感情的なニーズを適切に感じ取り、適切に応答する(満たす)こと
*これが子どものアイデンティや自尊心を育てます。
④Stimulation(刺激)
子どもとの交流や、子どもが社会と接する機会を促すことを通じて、学習や知的側面の発達促進すること
*勇気づけ、一緒に遊ぶこと、子どものポテンシャルを発達させる機会の提供などが含まれます
⑤Guidance and boundaries(ガイダンスと境界)
子どもが自分の感情や行動を調整できるようになるよう、親が手本として振る舞うこと。ただし、親と子(他者)の間にある「見えない境界」を越えないこと。
*境界(boundary)とは
・・・自分の領域と他者の領域を区分する見えない境目のこと。感情の境界、責任の境界、物の境界などいろんな境界があります。ここを健全に保つことは親の大切な役割です。
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☆子どもは親の振る舞いを手本として自分の中に取り込みます。それが子どもの心の中に「内なる親」を育てます。健康的な「内なる親」は、子どもの自律性、自尊心、他者との協力、健全な交流などを助けてくれます。
⑥Stability(安定性)
ここまで述べてきたような要素が一貫性をもって提供されること
*しかしそれは固定的なものではなく、子どもの成長に合わせて柔軟に変えていくことが大切です。
ほどほどで十分
私もひとりの親として、いろんな人の力を借りながら子どもの育ちに欠かせないニーズを満たせるよう努力していますが、ここまで述べてきたことを「ちゃんと」提供しなさい!なんて言われたら、自信をもって、それも全力で、「無理!」と言い切るしかありません(汗)
子育てとは、子どもの命と人格を育てる大切なかかわりです。
とうていひとりだけでやっていけるものではないですよね。
子育てが「孤」育てにならないよう、おたがいいろんな人の力をお借りしながら、親御さん自身も大切にしながら、そのうえでほどほどの子育てをいっしょに楽しめるといいですね^^