家庭の中でこそやれる教育とは?
目 次
1.安易な訪問支援は問題をこじらせる
2.自分自身の課題と受け止め親が先に動く
3.メッセージとしての引きこもり(不登校)
4.家族の絆の再生による問題解決
安易な訪問支援は問題をこじらせる
不登校、ひきこもりの相談の際、本人が外出できない、また、前向きな意志がないことで、
相談窓口に連れてこられないことを問題とした話がよく聞かれます。
医療施設や行政窓口では、本人を連れてこられない場合の自宅への訪問支援は実施していない
ため、「自宅訪問はしてもらえますか?」というお問合せが私どもにもよく寄せられます。
もちろん、本人が動けないのを手をこまねいて見ていてもどうにもなりませんので、私どもは
訪問もしますが、訪問に関して勘違いをされている親御さんが多いですので、今回は自宅訪問
に関してお話ししてみましょう。
考え違いのほとんどは、第三者がすぐに自宅へ訪問し、本人に直接会ってもらえるというもの
です。私たちは「引き出し屋」ではありません(笑)。
単に部屋から引きずり出すのなら訳ありません。男性2、3人で行けば済むことです。
目的は部屋(家)から出すことではありません。
外の世界(社会)へ出ていく意志を先ずもたせることです。
無理に引き出すだけなら、その後の親子の信頼関係は、さらに悪化するでしょう。
父親と教師で、無理に引きずって学校に連れて行き、不登校からひきこもりに発展した
ケースもこれまであります。あたりまえのことです。
よく考えてください。
いきなりドアの向こうに知らない人間が立ち、声をかけたからといって、当事者たちが
「ハイ、分かりました」と言うでしょうか。
「突然なんだっ!」「親の代わりに説教でもされるのか?」と怯えさせるだけです。
自宅への訪問までには下準備が必要なのです。
全てのケースでそうではありませんが、通常この下準備の段階で、本人たちは自分の意志で
相談所へ親御さんに伴われ出向いてきます。(数年を経過しているようなひきこもりのケース
でもです)
これまでの当協会の事例でも、ほとんどが訪問無しに当事者たちは動き出せています。
なぜかと言いますと、下準備の段階で、ご家族に動いてもらうからです。
自宅訪問ではなく、できるだけ自らの意志で一歩を踏み出せるように導くほうがいいのです。
自分自身の課題と受け止め親が先に動く
不登校やひきこもりを「病気だ」「障害だ」「甘えだ」と言って、本人だけのせいにしいる家庭。
つまり、この子の問題としている家庭では、長期化、深刻化していくだけです。
「わが子」の問題、「私の子」の問題と受け止められた親御さんたちは、まさに私(自分)が
率先して動きます。
下準備で必要なことは、子どもたちの状態への理解と、現状の打開のための気づきを与える
ことです。
いずれも、親の方からの寄り添い、歩み寄りです。
これらのことが十分にできていれば、訪問した際に本人にその目的が伝わりますし、もっと
言うと、訪問しなくてもすんでくるわけです。
蒔いた種(原因)が芽(結果)を出すまでに、長い時間がかかってのことという認識が無い家庭の
場合、助っ人が来て、すぐにでも外へ連れ出してくれると勘違いしているようです。
種を蒔いても(解決策を講じても)、すぐに豊作になるわけではありません。
水をやり、肥料を与え、雑草を取り除かなければなりません。
そして時期到来。ようやく実りがあります。
「米」という字は、八十八の手間がかかるという意味だそうですが、子育てこそ手間隙かけたい
ものです。
〈引き出し屋〉に法外な費用を支払い、拉致まがいの事態の解消を依頼し、わが子から業者と
共に提訴された事件もこれまであっていますが、藁にもすがる思いであったとしても、そこに
至った原因(理由)に思いを馳せることもなく、ただただ目の前の事態の終息を期待すれば、
このような過ちを犯してしまいます。
メッセージとしての引きこもり(不登校)
不登校、引きこもりといった現象には必ず理由があります。
当事者たちは改善すべき課題を抱えています。
そしてそれをその行為で訴えています。
それはシグナルであり、メッセージです。
暴力や破壊行為で表現している子もいます。
言葉によるものではありませんので、分かりづらいのは確かです。
でも考えてみてください。
両親間のコミュニケーションは十分でしょうか?
家族間で意思の疎通がかねてからはかられていますか?
特に父親の意思が家族に伝わっていますか? 非常に分かりづらくはないですか?
言葉でうまく伝えられないからこそ、子どもたちは不登校やひきこもりという手段を使って
いると捉えてください。
家族の絆の再生による問題解決
「家族機能が適切にはたらかず、問題解決能力が低いので、家族の発達的、状況的危機に
際して、的確な対応ができない家族」を〈機能不全家族〉と定義されています。
わが子の不登校、引きこもりを前にして、今やるべきことは何でしょうか?
わが子からの訴えに対して、何から始めるべきでしょうか?
有事の際の身の処し方に真価が問われます。
子どもたちは、自分の不登校やひきこもりに対して、両親がどのような姿勢や態度で臨むか
を見ています。自分の状態に対しての理解度(愛され度)を確認しているのです。
わが家で改善すべき課題に対して、解決法を知り、実行していくことが後回しになって
いませんか?
優先させるものを後回しにした結果がどうなってしまうか。
健全な家庭であればこそ、人の成長、発達と同じように、その過程において幾多の危機を
経験します。
Identity crisis(自我同一性の危機)を繰り返しながら人は成長していきます。
家族もまたその存在意義(Family Identity)の構築のために新陳代謝を繰り返しながら、絆を
深めていくのです。
不登校、引きこもりを長期化させているのは子どもたちではないことに気づいてください。