痛みへ寄りそえるために必要な現象の理解

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

目 次

1.理解不足からの不用意な促し

2.わが子の立場になって考える

3.コミュニケーション能力の背後にあるもの

4.社会参加を阻む本当の理由

5.自分を役立てられてこそやりたいことが見つかる

理解不足からの不用意な促し

ある相談者の話です。

「親があれこれ心配して、色んな施設を本人に紹介してもなかなか自分から行こうとしない」

何度も何度もこういったことを繰り返し、疲弊しているご様子がよくうかがえました。

しかし、これは当たり前のことです。

「病院に行こう」「カウンセリングを受けてみない?」「合宿に参加してみない?」

なぜこれでは本人達が動かないと思いますか?

〈寄りそい〉が全くないからです。

本人達の状況に対する理解がないからです。

わが子の立場になって考える

親は、一応の促しをしたことで、親としてやることはやったという安心感を得ようとして

しまいがちです。

その結果がどうあれ、何もしていないわけではないのだと。あとは本人の意識だからと。

自分の状況が分からず、知らされた施設がどういう場所かも知らず、カウンセリングなど

受けた経験もない子に何を判断させようとしているのでしょう。

本人にとって、何が問題で、何が必要で、どこにそれがあるのかを明確に示せなければ、

判断のしようがありません。



寄りそうためには、相手の立場に立ってみる、相手の身になってみるという姿勢が必要です。

自分がどういう促しをされたら動きたい気持ちになるのかを考えてみましょう。

最初の相談の席にしゃにむに本人を連れてきたがる親御さんも少なくないです。

「子どもは連れてこれないんですがよろしいでしょうか?」

これもまた、寄りそいに欠けています。

親を横にして何を話させようと考えているのでしょう。

また、わが子を横にして、全て聞かせようとでも考えておられるのでしょうか。

連れてこれなくていいんです。

連れて来ない方がいいんです。

よりそえばその理由はわかるはずです。

コミュニケーション能力の背後にあるもの

また、次のようなこともしばしばあります。

不登校やひきこもりの青年たちが、「やりたいことが見つからない」

「何の仕事をしていいのか分からない」といったことを口に出すことがあります。

こういったこれからの進路のことを思い煩っている場合に、家族もどう答えてあげたら

いいのかを迷ってしまっていることが多いようです。



やりたいことが分からないというのは、自分の欲求に気づいていないということですので、

これまで自分の欲求を抑えてきたか、経験の絶対数が少ないか、自分と向き合う機会が

少なかったか、欲求を正直に伝えられる友人や家族がいなかったというのが主な原因です。

これらの背景にあるのは、他者(主に親)の欲求を満たすことを優先させた。

周囲の評価に過敏になり、自分の本音に問いかけることがあまりなかった。

本音に不正直な分、他者の声にも耳を傾けることを避けてきた(頑固、不誠実)。などです。

これらは実は、そのまま他者とのコミュニケーションを阻害する要因でもあるのです。

社会参加を阻む本当の理由

「やりたい仕事が見つからないからまだ働けない」という言い訳の場合、本音では、職場

での人間関係に不安をもっていたり、面接という場で、他人から評価されるといった場面を

恐れているといったケースが少なくありません。

自分が周囲から求められている、必要とされているといった確信がもてず、また周囲に

対して懐疑的で信頼できない状況にあるこれらの青年たちは、決して人を身近にすることは

ありません。

親密になることを避けるのです。

なぜなら、空っぽの自分をさとられることに怯えているからです。



自分がここに在るという確信がもてない青年たちは、自己受容できず、他者やモノに依存、

隷属する生きかたをし、さらにそういった生きかたしかできない自分を否定することを

繰り返します。

コミュニケーション力を回復するためには、本音の自分と向き合い、自己を再構築すること

が必要なのです。

自分を役立てられてこそやりたいことが見つかる

周囲から求められ、迎え入れられていれば、過度に好かれよう、認められようとする必要は

ありません。

自身の欲求よりも、他者の欲求を優先させてしまったのは、承認を十分に得られて

いなかったからです。

ひきこもり者たちは、「ありがとう」の言葉をあまりかけられてきていないようです。

それは、「周囲に迷惑をかけないよう」にとどまり、「お役に立つように」と育てられて

いないからのようです。

家庭の中でも、電化製品の進化で便利になり、家事を手伝わせる機会が少なくなっている

ことも背景としてあると思います。

中学くらいになれば、専業学生化させてしまっていますからね。

親から子へ「ありがとう」と言う機会も当然減ってしまいます。

また、両親同士が「ありがとう」と相手に感謝する姿を、子どもの前であまり見せていない

からではないでしょうか。

ねぎらい、感謝する姿勢はとても大切です。

相手を大事に思っていることだからです。



やりたいことは、できることで何か役立つ経験をし、感謝されてこそ見出すことができます。

自分のはたらきが誰かの役に立ち、喜ばれ感謝されることで、自己の存在意義、価値を実感

できるのです。

そこからやりたいことが見えてきます。

やりたいことが分からず、人と関わらないでいる状態にあるわが子に、「やりたいこと何でも

いいからやりなさい」は、かえって本人を追い詰めることにもなりかねません。

何らの具体性のない「頑張りなさい」も同じです。

これらもまた理解不足からのもので、寄りそいを欠いたものになるのです。

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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