おかげさま、お互いさまを教えられていないニート、引きこもり者たち
目 次
1.質問内容で、問題の把握度が分かる
2.問題把握がずれるとかえって長期化が進行する
3.本当に解決すべきことが見えていますか?
4.問題解決のために必要なことは
5.「原因追究は必要ない」はウソ
質問内容で、問題の把握度が分かる
私はかねてより、講演や講座の後、出来るだけ質問をしてもらうようにしています。
私自身が、質問をしてもらうことで、発見できることが少なくないからです。
時に「こんなに具体的に質問に答える講師はあまりいませんでした」と聴講者に言われることも
ありますが、私は話す内容を用意した講演よりも、その場で出た質問に答える方がかえってやり
易いんです。事例でお答えできますしね。
質問をしてもらうという手法は、実は問題が見えているかどうかを確認できる有効な手法なの
です。
問題把握がずれるとかえって長期化が進行する
よくある質問をご紹介してみましょう。
「仕事が長続きせず困っています」「就職しないで家にずっといます」
こういった質問の際、「どうしたらいいですか?」と聞かれます。
「どうしたら」つまり解決法を真っ先に尋ねられます。
ここで大切なことは、解決法、方法論は、先ず何が問題かを明確にしてから出てくるもの
だということです。解決すべきより優先順位の高い問題は何かということです。
また、悩みは必ず、不快や苦痛を伴いますので、周囲としてもなんとかすぐにでもその苦痛
を取り除いてあげたいと自然に思うものです。
手っ取り早くやれる方法(解決法)が、話を聞いてあげることです。
一人で心に溜め込んでおくと苦しいですから、ただ黙って聞いてもらえるだけでもそれなり
の効果は確かにあります。「話す」は「放す」ですからね。一時苦痛を手放せます。
しかしこれは、解決法というよりも対処法です。
その場限りのもっというとその場しのぎの苦肉の策です。
この聞いてあげるとゆっくり休ませてあげるが相まって、長期化してしまうことが実は
多いのです。
本当に解決すべきことが見えていますか?
精神科医の西城有朋氏は、自身の著書の中で〈ダメな精神科医の見極め方〉の一つに
二言目には「とにかく休め」を言う医者と述べています。
もちろん、患者の状況にもよりますが、不登校やひきこもりの相談を受けている様ざまな
場所でも、この言葉はよく聞かされているようです。
さんざん悩みを聞いてもらって、「もう話すことも無くなった」と聞いてもらうことすら
必要でなくなり、ただ黙って休養だけ続けている例も少なくありません。
聞いてあげたら、返してあげましょう。その悩みの解決法を返してあげるのです。その時に
大切なことが先に述べたように、解決すべき問題は何かを明確にするということです。
例えば、不登校の問題は何ですか? 「学校へ登校していないこと」 はい、ハズレです。
ひきこもり、ニートの問題は? 「働かず、社会生活をしていないこと」 はい、また
ハズレです。
この答えでは、せいぜい説教するか、勘当するか、本人のやる気をただ待つかの対処法に
なってしまいます。登校しないとか、働かないが問題ではなく、何かができなくなって
いて、登校できず、働けないのです。
この何が出来なくなってしまっているのかを知ることが最優先の課題なのです。
例えば、自宅の中ですら行動が制限され、行きたい部屋へいけない状態の子が外出など
できますか? 人間関係を構築することが出来ない者が働けますか?
面接の場の緊張に耐えられない青年が就職できますか?
わが子が何が出来ないでいるのかを把握していない状態で、「学校行けー!」「働けー!」は
新たな傷を与え、事態をより深刻化させるだけです。
それはご家族も望んでいないはずです。
周囲が当事者に手を貸すべきことは、悩み、不安への共感と共に、問題の解決です。
問題解決のために必要なことは
問題の解決のためには、
①問題は何かを把握する
②原因をつかむ
③具体的解決法を知る
④解決法の実行を妨げる障害要因の排除
が要となります。
①②③は、自分で分からなければ専門家に委ねることです。
特に②③は解決実績のある実践家でないと分かりません。
④は、例えば理解、協力の姿勢の無い同居家族などです。そういった場合は、協力者は
多ければ多いほどよいですから、親戚の方とか当事者のことを小さい時から知っている
近所のオジチャン、オバチャンでもかまいません。協力者に素直に頼みましょう。
ここでかねての生きかた、人間関係が問われるのです。
わが家の有事にサポーター(協力者)も得られないような生きかたは改めましょう。
世間体を気にしなければならないような風通しの悪い家庭は、既に呼吸不全を起こして
います。
「原因追究は必要ない」はウソ
ここで最もお伝えしたいことを申しますと、問題解決において最重要な要となるものは、
③の原因をつかむということです。
原因をつかみ、そこに③の適切な解決法を実行していくのです。
ところが、ある行政機関の窓口で相談者に配布されているガイドブックに次のような文言が
あります。
『ひきこもった原因を見つけることは、回復のために絶対必要な条件ではありません』
『「原因がわからなければ解決しない」と考える必要はありません』
『原因を追究するよりこれからどうするかを考えることが大切』
いったい何をどう解決しようと言うのでしょうか。
動けなくなってしまっているその原因を分からずして、何を解決するつもりでしょうか。
ゴールをどこに置いているのでしょう。
外出させることですか?働かせることですか?
例えば、借金の肩代わりをしてあげても、本人の借金体質が変わっていなければ再び繰り
返します。ですから、ひきこもった原因をそのままにして、仮にひきこもり者に仕事を
あてがっても、仕事は続かないでしょう。
仕事こそ始めても、転職を繰り返すひきこもり者を何人も見ています。
「これからどうするかを考えることが大切」と記していますが、新たな挑戦を始めるところ
で、原因になっていたことが足を引っ張り行く手を阻むのです。
本当に解決すべき問題(原因となったこと)が解決されてこそ、学校にも戻れるし、社会へも
入っていけるのです。
質問の内容で問題認識のボタンの掛け違いが露呈されます。
最初のボタンがずれていたら、後の対策は総崩れになってしまうのです。