原家族からもちこされた未解決の問題
目 次
1.見守りは引きこもる生き方の容認となる
2.優先すべき大切なこととは
3.現象に囚われず、背景・原因の理解を深める
4.わが子の身になって考えることで見えてくるもの
見守りは引きこもる生き方の容認となる
「家庭で心がけておくべきことは何でしょうか?」こういったご質問がよくあります。
これに対しては、こうお答えしています。
「解決策が分からないまでも、最低限状況の悪化は防いでください」
コミュニケーションは絶たれ、昼夜逆転し、ゲームやインターネットを好きにやれる環境が
あれば、間違いなく事態は深刻化していきます。
そのままに3ヵ月もすれば、もうそれを親が容認したと本人はみなしています。
不登校やひきこもりが始まって、1年もしない内に相談に来られることはまずまれです。
相談に来られた時には既に数年を経過しています。ですから、当然その家庭では、ひきこもり
は容認されたものとしてわが子は受け止めているということを前提にかかわりを始めなければ
なりません。
ひきこもりだした直後の対応とは変えていかなければならないのです。
自分を守るために始めたことですから、当初は安心してそこに居れるようにしてあげるべき
ですが、あくまでも一時避難ですから、「一時」に留めるようにしなければなりません。
数年も経過してにわかに親が動き出しても、「何をいまさら。なぜ今頃」状態です。
だからといって、早々に「しかたがない」とあきらめ動かないわけにはいきません。
先ず、その生き方を認めているわけではないこと、改善を要する状態にあると受け止めて
いる、積極的に改善していくことを共にやっていきたい。という親側の姿勢を明確に示す
必要があります。
いざ、第三者の介入を加え改善、解決を始めていく決心をしたら、ある意味これまでのこと
は、棚にあげてかかるしかありません。
多くが、「困るんだ」とただの愚痴をこぼす形になっています。
困っているのは当事者が一番困っています。
親の「困った」を解決するのではなく、わが子が抱えている課題の解決をしていくことを、
はっきり示してあげてください。
優先すべき大切なこととは
それから、よく「本人がいやがることを無理強いしても」というのもよく聞かれます。
私はいつも「この親御さんは、何を大切にしようとしているのだろう?」と疑問に思います。
これまでの生活形態から、自立に向けての促しは、当事者にとってほとんどいやがること
ばかりです。
庭木の剪定に学んでください。目的を果たすためには、制約、犠牲、苦痛は必要なのです。
果実も厳しい冬を越してこそ美味しい実がなります。
生活するというのは、「生命を活かす」「活き活きと生きる」ということです。
何かを生みだしていく、創造していくということです。
わが子を活き活きとさせていくことが、個性、存在を大切にするということです。
親側が傷つきたくない自分を優先(大切に)してしまうと、言わなければならないことも言え
なくなります。
事態を深刻化させないために、家族が閉じこもらず、学びを広げていくことが肝要なのです。
現象に囚われず、背景・原因の理解を深める
医療の現場では、「病気」は診るけど「病人」を診れる医者は少ないといったことが言われる
そうです。なぜこのような病気になったのか、その人そのものを理解することが治療にとって
不可欠だということです。
不登校やひきこもり、ニートは、病気ではない分、よりこの本人を理解するということが、
回復への要となります。なぜそのような生きにくい生き方をあえて選んでしまったのか。
当事者にとっては、傍から生きにくいと見えている生き方が、それ以前の生きかたより
まだましだからです。それだけ以前の生きかたは、生きにくく、生き辛かったのです。
それはなぜなのでしょうか。
私がご相談者によくお尋ねするのは、「ひきこもりが解決したら家庭の中は全てOKですか?」
というものです。この質問の回答に先ほどの質問の答えが実は隠されています。
わが子のひきこもりが解決したら他に何も問題がないという家庭であれば、恐らくひきこもり
は生じなかったでしょう。
わが子を理解するためには、その子の生きてきた背景を観察しなければなりません。
なぜ生き辛さを感じて生きてきたのか。
わが子の身になって考えることで見えてくるもの
人はどのような状況で生き辛さを感じるのでしょうか。考えてみてください。
あなたは、自分の存在を誰も気づいてくれなくて平気でいられますか?
あなたは、誰からも必要とされず、愛されずに平気でいられますか?
あなたは、自分の価値を実感できずに平気でいられますか?
あなたは、自分を伝える手立てを持てずに平気でいられますか?
あなたは、恐れずに心を開ける相手がいなくても平気でいられますか?
あなたは一人で平気ですか?
学校に行かない。働かない。閉じこもる。
その状態の修復に終始しているうちは、わが子を理解することはできないでしょう。
学校にあって家庭にないものは?
働くことに求められるものは?
家族とは違い他人とのかかわりに必要とされるものは?
家族だからこそ負わなければならないものは?
これらのことを考えてみてください。
こういった嘆きもよく聞かれます。
「どうしてこんなに長くなってしまったのか。もっと早くに動いていれば」
10年のひきこもりも最初の一日から始まっています。
なぜすぐに動かなかったのか。
あなた自身の背景を理解してみましょう。