「永年使ったカウンター椅子を張り替えたいです。」
今年も残すところ2日になりました。
当店の年末年始は、本日12月30日~1月3日がお休みです。
身体もメンテナンスして、1月4日からもがんばらせていただきます。
そこで、今年下半期で印象に残った家具修理作業をご紹介します。
コロナ渦の一年で、三密を避けるため、当店でもホームページの “お問い合わせフォーム” からのご依頼が増えました。
パソコン音痴の私は、かなり無理をして打ち合わせやお見積り・サンプルのご紹介をリモート(電話やメール・LINE・フェイスブックのメッセンジャーなど)を活用した一年でした。
その中で、もっともご丁寧で長文かつたくさんの写真を添付の上、お問い合わせをいただいたのが、愛媛県松山市・K様です。
修理作業前①/K様からいただいたダイニングセットの写真とご希望です。
このダイニングセットは、約30年前に関東の家具店様で購入された、飛騨高山のイバタインテリア様の家具です。
購入された家具店様の廃業と、メーカー様が岐阜県で遠方のため往復の運搬や梱包・設置に支障をきたすのでお問い合わせをいただきました。
* ダイニングテーブルの修理
①天板のひび割れ部の修理(今回の修理の肝となる作業です)
②天板および脚の塗装修理
*ダイニングチェアの修理
①背もたれの籐の張り替え修理
②フレームの塗装修理
③座面の張り替え修理
以上、ほぼ全面的な修理作業のお問い合わせでした。
なお、後から聞いたお話ですが、メーカー様の事情で、天板の割れ修理はお受けできないといわれたそうです。
修理作業前②/引き取り後のテーブル全景
K様のご依頼は、ダイニングセットの全面的な修理なのですが、ダイニングテーブル天板のひび割れ修理が、今回の作業の肝であり数少ない事例のためダイニングテーブルの作業をご紹介します。
修理作業前③/テーブル天板のひび割れです。
K様からは、「ダイニングテーブルの下にストーブを置いて暖をとっていた」とお聞きしました。
そのため、天板が乾燥しすぎたため、当初の接合面が切れて割れが広がったと推測できました。
修理作業中①/ダイニングテーブルの分解作業
ダイニングテーブルには、脚のほかウラ面には、天板の反り止め、脚の取り付け部材が取り付けてあります。最初にこの部材を取り除いて、純粋に天板だけの状態にしました。
修理作業中②/天板の切断作業
ひび割れてしまった天板を修理するには、下の2通りが考えられます。
①ひび割れ部を一度切断して、改めて圧着する!
②ひび割れ部に、何か隙間埋め材を埋め込む!
K様の修理作業の肝の部分ですし、ご希望を考えてできるだけ完成度を高めるために、①の方法を選びました。
作業方法は、動力機械の横切り盤に天板をセットして、ひび割れ部に沿って切断していきました。全長1500mmもの天板の接ぎ部に沿ってまっすぐに切るために、横切り盤へのセットには、とっても気を使いました。
横切り盤へのセットを信じて慎重かつゆっくりと切断していきました。切断面は、こんな感じです。
修理作業中③/ビスケットジョイントの溝切り加工
切断面を、動力機械の手押しかんな盤にて平面仕上げにしたのちに、より強固に圧着するため、接ぎとしてビスケットジョイントの溝切り加工をしました。(マキタ製ジョイントカッターを使用)
溝切り部に、ビスケットジョイントを仮合わせをしました。
このビスケットジョイントを挟み込んで圧着しますと、当初のいも接ぎ(ビスケットジョイント無し)と比べて、より強固に圧着できるんです。
修理作業中④/圧着作業
愛用のソマックス製T型クランプを多用して、天板全体を圧着していきました。天板の平面精度を保つために、天板の両面から圧着しました。
天板側面部が、緩やかな曲面になっているため、当て木を工夫して圧着しました。
修理作業中⑤/天板表面の研磨作業
天板の圧着が完全乾燥後、動力機械のレベルサンダーにて、古い塗装面を剥ぎ取ります。
この動力機械を用いると、電動工具のハンドサンダーで研磨した時と比べて、より平面精度を保てるんです。
写真左側の緑色のものが、♯60の研磨紙を付けたサンダーです。研磨紙は、荒いものから細かいものへと取り替えて作業を進めていきます。
その後、研磨紙は ♯100 → ♯150 → ♯240と取り変えて作業し生地出しの上、塗装室に移動しました。(研磨紙の番手は、数が大きくなるほど細かくなります)
木口面は、ハンドサンダーを使い生地出しできました。
修理作業中⑥/ウレタン樹脂塗装作業
塗装作業は、初めに下地着色作業をしました。
その後、サンディングシーラー → 補色調色作業 → ウレタンフラットの各工程を、3~5回拭きつけていきました。
修理作業中⑦/天板ウラに各部材の取り付け
塗装作業ができあがりますと、木工作業場にもどしました。
約30年お使いで退色していた最初の写真のダイニングテーブルと比べますと、新品の状態に近くできあがったと思います。
天板幅が、のこぎりの刃の厚さとかんな削りした厚さの分(約3mm)狭くなっていますので、当初ネジ止めしてあった穴にネジが入りません。そのため、古いネジ穴を木釘にて埋めていきました。
天板ウラ面が仕上がった状態です。
修理作業後/12月下旬、作業ができあがりお届けしました。
松山市・K様へ、できあがったダイニングセットをお届けしました。
ご丁寧な対応とありがたいお言葉をいただき本当にありがとうございました。
K様とは、搬入搬出時のみの接触で、打ち合わせやサンプル・見積り提示はすべてリモートでおこないました。
ダイニングチェアも、この通りきれいになったと思います。
ダイニングチェアは、背もたれの籐の張り替え、座面の張り替え、フレームの塗装修理をさせていただきました。
K様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
「令和3年は、さらにリモートの打ち合わせに力を入れます。」
実は、当店のホームページは、コロナ渦前の令和元年12月にできあがったばかりの新米です。お問い合わせも、電話はかけやすく作ったつもりですが、メールでのお問い合わせは、会社概要欄にカンタンなお問い合わせフォームがある程度です。
こんなホームページでも、利用していただけるお客様に心より感謝しています。
https://tokikaguten.com
来る令和3年は、ZOOMミーティングを初め、リモートでの打ち合わせに今年以上に力を入れて、がんばらせていただきます。
ホームページは、リモートでの打ち合わせが、少しでもわかりやすくできるように変化させていきます。どうか、ご指導いただけますようお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。土岐泰弘