【知財】【基礎】はじめての出願 知財戦略立案(シリーズ第5回)
資産としての知的財産権
知財(以下、特許を例にして説明します。)は、財産・資産の一種です。
「特許権」の所有権・ライセンスは、下記のように不動産(所有権)に例えられることがよくあります。特許権者→大家、実施者→借主のようにあてはめられます。
特許権は、自ら実施(典型的には、自分で発明・設計・生産・営業・販売することです。)するのが原則ですが、他者に許諾(=ライセンス)が可能です。不動産で言えば「貸す」ことに当たり、貸した対価として「家賃」に相当する「ライセンス料」を受け取るという構図です。
典型的には個人発明家が凄いアイディアを思いついて特許権を取得しても、個人の力・資本では生産・販売が十分にできないという場合があります。
このような場合、個人発明家・特許権者は、企業に「売り込み」をかけます。これで企業と合意できると、「製品が1個売れるにつき〇円」のようにライセンス料を受け取って利益を出すビジネスモデルになります。
なお、ライセンス料は、相場はありますが、法律上、いくらにしなければならないといったルールは原則ありません。
また、「1個あたり」という形式も決まっているわけでなく、特許権を買い取ってもらうや「1年で〇円」のような定額払いのような形式にするかも自由になります。
発明対価
少しややこしいのが「発明者」と「特許権者」の違いです。上記の個人発明家の例は、特許権者=発明者ですが、企業に所属するエンジニア等の場合、多くは「特許権者」は企業、「発明者」はエンジニア個人となります。
これは研究等で技術を発明した場合、「特許を受ける権利」を企業に譲渡し、企業が特許出願費用を負担する等をして企業が出願人(権利化後に特許権者になります。)となる体制です。
下図の通り、特許発明による利益(ライセンス料+実施による利益)は、発明者でなく、特許権者の方に入ります。
これに対して、発明者は「発明対価」を特許権者から受け取ることができます。
なお、発明対価は、通常、企業ごとに勤務規則(「発明等対価規則」等のように専用の規定を作っている企業もあり、名称も企業によって異なります。)で定まっています。
そのため、企業ごとに、「いつ」「いくら」「どういう場合」もらえるかは企業ごとに異なります。ただし、ある程度の相場はあります。
また、発明対価は金銭に限らず、昇給・昇進・研究設備の充実等のように待遇を良くする等の形式でもよいとされています。
====ライセンス・パテントプールの有名事例 MPEG====
MPEG標準規格についてのライセンスプログラム
MPEG2 4ドル/台 → その後2.5ドル/台
MPEG-4Visual 0.2ドル/台
MPEG-4AVC 0.25ドル/台
(参考資料)
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3872
====以下、知財・法律の専門家向けになります。====
「知財」とは、「知的財産権」、又は、「知的財産」の略称になります。
似て非なる言葉として、「無形資産」、「知的資産」、「産業財産権」、「工業所有権」、「特許権」、「IP」等があります。
これらの使い分けを説明している図としては下記ページのものが有名です。
無形資産・知的資産・知的財産・知的財産権・特許権等の分類図
https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/teigi.html
「ライセンス」は、通称です。
法律上は、専用実施権(特許法第77条)、通常実施権(特許法78条)を指す言葉です。多くは通常実施権の方を指しますが、場合によります。
ちなみに、専用実施権者が許諾する通常実施権(特許法第77条第4項)は「サブライセンス」等という場合もあります。
(参考資料)
特許権等の実施料相当額算定手法について
https://www.ip-adr.gr.jp/news/file/20180702.pdf
令和元年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 特許の技術的価値の評価指標策定のための実施料率データベースの在り方に関する調査研究報告書
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/document/zaisanken-seidomondai/2019_13_01.pdf
なお、上記の例は、原則の説明用・説明のため簡略化しております。そのため、もちろん例外があります。詳しくは一度弁理士等へ相談するのを強くお薦めします。
上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。