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【知財】【民法】シリーズ「知財リスクとは」(第2回)差止請求

2021年12月2日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

差止請求権

 シリーズ「知財リスク」の第2回目になります。今回は「差止」について解説します。
差止
 差止のイメージは、特許権を侵害する製品(特許侵害訴訟の裁判等では「イ号製品」と呼ばれます。)の流通を止める/予防することです。
 輸入品を税関でSTOPさせているのがよくある例です。
 また、イ号品(完成品)だけでなく、生産設備等も除却の対象となります。
 このため、イ号品の専用工場等であるため、差止により工場全体が稼働不可という前例もあります。
 以上のように、差止を受けると、製品を市場に送り出すことができなくなる、及び、製品を生産する設備等も停止・除却するようにしなければならないリスクが発生します。
 なお、上図にも記載しておりますが、「侵害」と判断されると、差止請求以外(損害賠償等)の権利はまた別の権利行使のため、差止を受けたからといって他の権利行使を免れることにはなりません。

差止と損害賠償等の違い

 イメージでは下図のような使い分けとなります。
差止と損害賠償
 許権は業として特許発明を実施することを独占する権利(「絶対的独占権」等とも呼びます。)ですので、現在、又は、将来にわたって市場から特許発明となる製品等を排除する権利行使ができます。
 この役割となるのが差止請求という権利になります。
 ただし、権利を有するといっても自らイ号品を壊す、取り上げる等の行為はできません。
 法律上、このような行為を「自力救済」と呼び、自力救済は原則禁止されています。
 差止請求権を行使する場合は訴訟の手続きをします。ちなみに、「自力救済の禁止原則」は民法上に明記された条文は存在しません。

 なお、一般的にはまず警告書を送るのが慣行になっています。法律上・理論上、いきなり訴訟に踏み切ることは可能ですが、マナー的にイ号品を販売している等を見つけた場合には、警告書を作成して送付するのが一般的です。

差止請求権についての詳細解説

差止請求権の根拠条文

特許権で差止請求をする場合、権利の根拠となる条文は下記の特許法第100条です。
(差止請求権)
第百条 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

特許庁 特許権侵害への救済手続
https://www.jpo.go.jp/support/ipr/patent-kyusai.html

法的な主体は、特許権者又は専用実施権者です。
*通常実施権者は不可能です。独占的通常実施権者でも法律上は不可能と考えられています。

上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。

この記事を書いたプロ

坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

坪井央樹(武和国際特許事務所)

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