住宅ローン繰上げ返済 『6つのデメリット』

中村諭

中村諭

テーマ:住宅ローン

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※本コラムは、数年前に他サイトにて掲載したコラムとなります。
現在もたくさんの方々にお読みいただいているコラムですので、マイベストプロにも掲載させていただきます。※
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お客様から「住宅ローンの繰上げ返済のメリット・デメリット」について教えて欲しいとの、希望がありましたので、まとめてみました。

住宅ローンの繰上げ返済とは、本当は月々の返済は10万円でいいのに、ある時に300万円などまとめて返済することを言います。また、住宅ローンの繰上げ返済をしようと思うと、基本的には銀行の事務手数料が必要ですが、そこは主題ではないので、今回は無視してお話します。

まず、繰上げ返済の方法としては2通りあります。

『期間短縮型』 と 『返済額軽減型』

一般的に知られているのは『期間短縮型』です。
この『期間短縮型』とは、読んで字のとおり、まとまった資金を銀行に入れることで、借入れ期間を短縮(前倒し)できる返済方法です。

もうひとつの『返済額軽減型』とは、借入れ期間はそのまま変更せずに、毎月の返済額を下げる方法です。

それでは、具体例をいくつか見て戴いて、メリット・デメリットを考えてみます。

① 住宅購入から3年後に『期間短縮型』で繰上げ返済
② 住宅購入から3年後に『返済額軽減型』で繰上げ返済
③ 住宅購入から5年後に『期間短縮型』で繰上げ返済
④ 住宅購入から5年後に『返済額軽減型』で繰上げ返済


~前提:どれも借入れ状況は次のとおりとする~

・借入額(3500万円) ・金利(3.0%) ・借入期間(35年) ・繰上げ返済資金(300万円)

この4パターンの効果を比較してみます。

     利息削減額    短縮できた期間    減額できた毎月返済額
①   428万4868円      54か月           0円/月
②   166万5702円      0か月          1万2182円/月
③   388万3943円      51か月           0円/月
④   154万8537円      0か月          1万2670円/月

ここから分かるメリットは、繰上げ返済をする事で将来支払うハズだった利息を大きく減らすことができる点ですね。
住宅ローン契約者の多くは35年ローンを組んでいます。
しかも契約時年齢が35歳前後の方が多くいらっしゃいますので、この方たちは、繰上げ返済をしないと、定年退職後もローン返済が続いてしまいます。
そこで、繰上げ返済をして10年程度は借入れ期間を短くしたいと考えています。
つまり、利息削減効果が高く、返済期間が前倒しできる『期間短縮型』を選択する方がほとんどだと思います。

例えば、住宅購入から10年経過すると、住宅ローン返済金利が上がる方がいらっしゃいます。
この時に「金利が上がったタイミングで繰上げ返済をするのが得ですか?」と質問される方がいます(稀にFPにも同様に考えている人がいます)が、繰上げ返済を効果的に行いたいのなら『1日でも早く』『1円でも多く』が基本ですので、「金利が上がってから~」と言うのは完全に間違いです。覚えておいて下さいね。
(念のために、更に続けますが、繰上げ返済を300万円等ではなく、全額返済する事を想定してみて下さい。今すぐに全額返済するのと、金利が上がってから返済するのでは、どちらが得ですか?)

このように書くと、『返済額軽減型』の繰上げ返済にメリットは無いように思われるかもしれませんが、そうでもありません。例えば「お子様の教育費負担が大きくなってきた」「金利が上がって、毎月の返済額が増えてしまった」など、家計管理上、月々の支出(固定費ともいいます)を抑えたい場合には、この『返済額軽減型』の繰上げ返済は効果を発揮します。
以上が、メリット面です。

メリットばかりに注目されて繰上げ返済にはデメリットが無いように感じますが、やはりメリットがあればデメリットもあります。では、次にデメリット面を見てみます。

【資金繰り】
繰上げ返済をすると、確実に、目の前の現金(貯金)が無くなります。
繰上げ返済のメリットばかりを追求した結果、「子どもの学費負担が多くのしかかる時期」や「事故や病気で長期入院が必要になった緊急時」に“貯金が無い”なんて事にならないように注意が必要です。

【団体信用生命保険】
良い話ではありませんが、住宅ローンには団体信用生命保険という生命保険が付いています。
つまり、ローン契約をしているお父さんが死亡したときには、住宅ローンの残高が500万円であろうと、3000万円であろうと“ローン残高に関係なく”すべて保険で支払われます。
そう、住宅ローンは無くなります。
もしお父さんがローンを早く返すために、無理して働いていたとしたらどうでしょう?「一家団欒の時間を削った結果」に意味があったのだろうか?という事も考えておきたいデメリットです。

【住宅ローン特別控除】
繰上げ返済の結果、借入れ期間が短くなり、完済するまでの返済回数が120回を下回る程短縮してしまったら、住宅ローン特別控除はその年から受けられなくなります。
例えば、当初20年でローンを組んだが、繰上げ返済を何回か繰り返した結果「10年1か月分、期間を短縮できた」というケースが当てはまります。(ローン返済は119カ月で終了)こんなときは『返済額軽減型』の繰上げ返済を検討しましょう。

【低金利】
現在の住宅ローン金利はとても低く、年利0.775%で借りている人もいます。
このとても低い金利で借りているローン。
例えば、住宅ローン特別控除を受けている方は、年末ローン残高の1.0%相当分の税金が戻ってきます。(諸条件はあります)
さて、「支払うローンは0.775%、もらう税金は1.0%」繰上げ返済はお得でしょうか?
(住宅ローンの繰上げ返済はせずに、投資に廻す方もいらっしゃいます。)

【税金の問題】
マイホームを売却して「損失」が出たときに、『住宅ローンが残っている』&『そのローン額よりも売却した金額が低い』ときは、確定申告をすることで税金が戻ってくる場合があります。
しかも、その税金が戻ってくる期間は、売却したその年だけでなく最長で4年間使えます。
繰上げ返済をした結果、ローン残高がマイホームの売却額を1円でも下まわっていたら、この制度は使え無くなってしまいますので、これから家を売る予定があれば、繰上げ返済は良く考える必要があります。

【期限の利益】
少し難しいので、読み飛ばしても構いません。
期限の利益とは、「期間の利益」と読みかえてもいいと思うのですが、例えば住宅ローンを期間35年で契約します。
この契約した35年間が、自分が銀行と契約して獲得した「期間(時間)」ですね。
言い換えると、毎月金利を支払う事で、35年分の「時間」を手にしたとも言えるのです。
つまり35年間という「期間(時間)」の権利を持っている訳です。
これを『期限の利益』と言います。
繰上げ返済を『期間短縮型』で行うと、その権利を一部放棄する事になるのです。
会社を経営している人は、良く分かると思うのですが、期限の利益が無くなるという事(期限の利益の喪失)は、実はとっても怖い事だったりします。

メリット・デメリット共にありますが、最終は個々人の価値観で決まります。
私は、ローン残高500万円(預金0円)よりも、ローン残高2000万円(預金1500万円)の方が安心と考えます。
今回、質問されて勉強した事を参考に、是非たくさん悩んで、最終判断をして下さい。
以上ご参考になれば幸いです。

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中村諭
専門家

中村諭(ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンソムリエ(R)

実績18年の経験と金融機関とのパイプを生かして、お客様ごとに異なる住宅ローンの悩みや希望に親身にお応えします。金融機関のリストアップから借換えの実行支援まで、お客様の笑顔のため最善を尽くします。

中村諭プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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