経営を脅かすリスクを再点検!! 経営リスクを無力化できる対策を公開。是非お役立てください

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策

経営には色々なリスクが付きもので、対策を誤ると信頼が無くなり再構築が難しく、BCPを含む危機管理対策(予想・判断・実行・検証を繰り返すPDCA) も用意しても、先行き不安が拡大し、リスクの洗い出しや取り除き方など、効果、効率で優先順位付けして必要な経営リスク対策を用意したい経営者も少なくありません。本コラムは経営リスク対策の再点検のポイントについて実例を引用して解説します。是非お役に立てください。

対岸の火事なんて言っていられない、どんなことでも経営リスクになっていく!!

1.予期せぬ事態が勃発
 クレームや事故などのインシデントやトラブルは、軽微なものから取り返しがつかないモノまで多種多様です。更に、軽微なクレームなどは経常的に毎日起きてしまうものも含まれます。
最も、起きて欲しくない経営リスクは、命に係る問題です。そうなってからでは、PCの様に再起動してもう一度やり直すことが出来ないからです。そして、そんなことが原因だった??と云うように、普段から起きている事が経営リスクになってしまう事も珍しくは無くなってきました。
2.時間を置いて影響を受けてしまいます
 経営リスクの多くは、自社内で起こしてしまった事故などをきっかけにしていきますが、中には外部の変化が経営リスクとなるケースが増えています。
パンデミックなどの情勢不安は、仕入れや出荷などのサプライチェーンに影響を及ぼすと云われています。
海外のでき事は、決して対岸の火事ではなく、時間を掛けて経営リスクが迫ってきます。仕入れ品の不足や値上がりなどは、生産コストが高くなりますが、直ぐに売り値を高くする事が出来なければ、経営を圧迫する経営リスクとなります。

事業の本業で起こる経営リスクは、何故改善されないのか??

1.経営リスクとは??
サービス実現モデル
 経営リスクとは、経営全般にかかる事業体制の不備や外的要因による間接的影響から生じる、「経営損失の危険性」。商品の生産、販売、流通、アフターサービスなど、事業活動を行なっている全過程において発生する。また企業内部で発生しうる経営リスクとしては、法務リスク、財務リスク、人事リスクなどもこれに含まれる。とコトバンクでは説明しています。このことから当社オリジナル『サービス実現モデル』に照らし合わせると、全ての階層で起きた問題が経営リスクに発展しまう事が分かります。
システム(仕組み)やプロダクトが問題を起こすときは、故障したときなので突発的な事故に該当します。この突発的な故障は初期不良と経年劣化による故障が多く、初期不良を取り除けばほぼ安定稼働が見込めます。
2.経営リスクは、何故改善されないのか??
 多くの経営リスクは、人が行う業務運用の仕掛けに問題を引き起こす原因が隠れている場合があります。
問題を引き起こす原因が隠れているために、経営リスクを特定し改善していく対策を構築していく事を難しくしています。経営リスクは、誰が診ても発見できる姿をしていないため改善が進まないのです。だからと云って、経営リスクを洗い出さなくてもよい理由にはなりません。理由は、事故を起こしてしまうと、事故を起こす前には戻れないからです。
そのため現行の業務マニュアルや重要管理指標では、そもそも経営リスクが含まれているという前提で、組織全体を俯瞰しながら問題解決を進める必要が出てきます。
組織全体を俯瞰しながら問題解決を担当できるのは、現場で事故を起こしクレームを受ける担当者でしょうか。
弊社は、幾つも企業のコールセンターで実証実験を実施した結果、このように組織全体を俯瞰して、問題解決を担当できる権限を持っているのは、経営陣だけと云う結論に至っています。
経営陣の中で、組織の最適化を図らないと、本当の経営リスク対策の効果を得られません。

経営リスクの前兆を見逃していないでしょうか??

今まで相談を申し込んできた経営者の多くは、以下の様な事を教えてくれています。このコラムを読まれているあなたにも思い当たる内容が含まれているでしょうか
1.コールセンターには多少クレームが来ているようだ
 コールセンターから受け取る月次報告に、毎月お客さまとトラブルになった事例件数が報告されている。クレームやトラブルを無くすことは出来ないのだろうか??
2.同じようなクレームやトラブルが無くならない
 現場マネージャに勤務管理を強化させているが、同じようなクレームやトラブルが無くならない。ハインリッヒのヒヤリハットを応用すれば、何時か取り返しがつかない事故(インシデント)を起こしかねない。
3.お客さまの拘りやニーズが掴めない
 ネットのSNSでつぶやかれている利用者のコメントは、経営リスクを洗い出すために大いに役立つが、高い評価を得ようと云う心理が働き評価が誇張されている傾向がある。そのため等身大の評価が分からない。
4.自社のサービスや製品に自信を持っているが、期待通りの目標を達成できない
 広告を見てコールセンターに問い合わせを受けている。しかし、約2割のお客さましか、購入してくれない。

経営リスクを無力化できないときを想像してみましょう

1.多くの経営リスクは時間の経過と共に自然回復できません。
 先ほども述べていますが、経営リスクには時間の経過によって回復するモノと、幾ら時間を掛けて待っても経営リスクが無くならないモノの二つに分けられます。
時間が経過すると消滅していく経営リスクの代表格は、仕入れ品の値上がりによる利益の圧迫です。ある程度時間が経過すると仕入れ品の価格が元に戻る場合があるからです。
一方で、時間の経過を待っても経営リスクが無くならない代表格は、会社組織としてお客さまに提供しているサービスや製品を作る業務内に潜り込んでいる人が係る業務に経営リスクの原因がある場合です。この場合は、時間が経過し問題に対する対策で業務マニュアルの管理徹底を強めると、それまで以上に経営リスクが多く現れます。そして、経営リスクは更に強さを増して現れるようになります。
もしかして、あなたの組織で業務マニュアルの管理徹底を強化したら、経営リスクの発生頻度が高まり、更にインパクト(強度)も強く出てきてはいませんか??
2.相談者の訴え
 以下は、経営者から頂いた経営リスク対策に対する相談概要です。
こんなこと、起きる訳ない!! と読んでいただいてもよいですし、そうそう、この事例に近い事起きそうだね?? と、自分事に置き換えて読んで頂いても結構です。
受けた相談は、仲の良い友達が誕プレ(誕生日プレゼント)を内緒で届けるサプライズ企画から始まります。
A)友だちの誕プレをネットで検索
 日ごろから仲が良い友達に誕生日プレゼントを贈ろうと、サプライズ企画を考えネットで、プレゼントを詮索したけれど、説明書きを探してもどんなサービスなのかよくわかりません。
B)Webサイトでは分からない事がありコールセンターに問い合わせて購入
 分からないまま放置すると誕生日が過ぎてしまうため、待たされる事を覚悟してコールセンターに問い合わせ。問い合わせに応対してくれたオペレーターさんが親切で、提供サービスを理解して冷凍ハンバーグを購入。Webサイトで指定される配達サービスも併せて申し込み。
C)2日間、受け取りにすれ違い
 サプライズの誕プレ企画のため受け取り側と配送員とが予定が合わず、すれ違い伝票で再配達の手続き待ち。
D)3日目に受け取った冷凍ハンバーグは、既に解けているトラブル発生
 3日目に配達員と受取人の予定が合い、冷凍ハンバーグを受けたった。しかし、配達員は恐ろしく不愛想で、半分切れていたそうだ。
受け取った冷凍ハンバーグの送り主に連絡。誕プレの御礼を伝え、盛り上がった。
しかし、箱を開けると冷凍ハンバーグは、既に解けていてドリップの中でハンバーグの原型はとどめていなかった。
E)トラブルをネットでつぶやかれて炎上
 サプライズ誕プレの解けた冷凍ハンバーグ受け取った利用者が、ネットで被害を公開、当然反響が大きく炎上してしまった。
F)更に、コールセンターにクレーム
 翌日のコールセンター受付時間に、解けたハンバーグが届いた!! と云う申告を受け付けた。
コールセンターの応対結果は、「申し訳ございません」と云っていたが、原因を特定して再発防止対策を徹底するとまでは、宣言しなかった。
G)相談を受け付け
 ネットで炎上していることも有り、沈静化の相談を受けました。

経営リスクへの対策を公開します

1.このような事例が、企業内部の業務マニュアル通りに仕事をしていても、起きてしまう経営リ スクに該当します。この様なトラブルは、何が原因で、どのような対策が効果的でしょうか。
2.経営リスク対策とは、何から手を付けたらよいのか??
A)サービスリカバリーシステムを再点検
 このような経営リスクへの対策の再点検や再構築に取り組むことを『サービスリカバリーシステムを再構築する』と呼んでいます。
では、何が原因でトラブルが起きたのか、以下に整理してみます。
①サプライズ誕プレを企画した友達は、ネットで下調べしたけれど購入まで進むことが出来ずに、コールセンターに問い合わせ後、冷凍ハンバーグを購入しています。
②サプライズ誕プレの相談に乗ったコールセンターのオペレーターから冷凍ハンバーグしているので、冷凍期間と注意事項などを説明し了解を得ていたか、この相談だけでは分かりません。
③受取人と配達員とのすれちがいは、日常茶飯事ですが、不愛想な配達原因が気になります。
④サプライズ誕プレを受け取った時には冷凍ハンバーグが解けていたことが、最大の問題ではないかと考えられます。保温状態は大丈夫だったのか??そもそも消費期限などの設定も気になります。
⑤次に、コールセンターの対応です。
⑥迷惑をお掛けした事を詫びても、再発防止対策を約束しない姿勢は共感できません。サプライチェーンを跨る事例ですが、そのことを加味した提供サービスになっていなく、そもそも無理が有り、冷凍ハンバーグが解けた状態で配達される事が事前に想定出来るのではないでしょうか??
B)サービスリカバリーシステムを再構築
 これらの事を踏まえ業務マニュアルとサプライチェーンとの連携を見渡しサービスリカバリーシステムを再構築しました。
①サプライズ誕プレなどでは受取人と配達員とがすれ違う可能性が高く、冷凍ハンバーグをサプライズ誕プレの対象から外す
②冷凍食品などの生ものを配達し無くなるため配送員のストレスが軽減され、不愛想な態度をする必要が無くなる。
③誕プレを見つけたネット広告にも、冷凍状態を保てる期間が短いものは、冷凍ハンバーグを選択できない仕組みを入れた。
C)ネットの書き込みを削除してもらえた
①再発防止対策を報告して、再度謝罪。
②問題の深刻さを理解した対策を評価して頂き、ネット書き込みを削除してもらえた。
D)継続購入者になって頂いている
 再発防止対策を評価して頂いた結果、継続してネットショップを使って頂いているようです。
E)繰り返しになりますが、このような経営リスク対策の再構築は、サービスリカバリーシステムを再構築すると呼んでいます。軽微なクレームやトラブルでも、点検や再構築に挑んでみてください。
F)理不尽な対応を無くし、良識を持って真摯な取り組みを目指します。
 サービスリカバリーシステムを再構築する時の拘りは、理不尽な対応を無くし、良識を持って真摯な取組みを目指します。
そして、この取組みは社外に向ってのみ対応すれば十分ではなく、社内に向っても同じことが言えます。理由は、組織内部の人達も、貴社が提供するサービスと製品の利用者になるためです。
組織内の人も使わないサービスや製品なら、いち早くサービスリカバリーシステムの再構築が必要となります。
G)お問い合わせを分類し、購入プロセスの進み具合に寄り添った応対を行います
 サービスリカバリーシステムを再構築する時、組織の言動を定義する業務マニュアル通りに仕事をしていると経営リスクを発生させてしまう部分を洗い出すことが出来ます。
是非、組織全員で見直しを掛けて、経営リスクを忍ばせない業務マニュアルを作成してください。
H)応対者の応対品質レベルの最低ラインを底上げしましょう
 更に、経営リスクを排除した業務マニュアルも使わないと、経営リスクは残り続けます。
新しく策定する業務マニュアルをチェックリストなどにして、必ず使う仕掛けを盛り込むことをお勧めいたします。
3.経営リスクの発見
A)第一にお客さまに迷惑をお掛けする危険を経営リスクと捉えます。
 例えば、従業員が欠勤するもしくは離職です。この場合は企業内部の経営リスクですが、お客さま接点の担当者の場合は、この第一優先に対策が必要になります。よい例が、コールセンターのオペレーターの欠勤や離職はお客さま接点に於ける出来事なので、最重要の予防対策が必須となります。
コールセンターへのオペレーターが欠勤もしくは離職すると、何故経営リスクになるのか??
お客さまとの接点コールセンターで応対を担うオペレーターの離職の影響は、応対人数が減るため待ち時間が長くなり、放棄呼率も悪化してお客さまに迷惑をかけてしまう経営リスクになります。
次に、欠勤や離職によって欠員を補充するために採用された新人が応対を担当すると経験不足が原因で、88%のお客さまが問題を解決できなかったと不満を訴えています。これは明らかに経営リスクとなります。理由は、問題解決できなかったお客さまは、その企業のサービスや製品を使わないし、購入しないからです。
毎日、どんなに広告を打っても、コールセンターを使う88%のお客さまは満足できていません。まるで穴の開いたバケツに、水を汲んできて注いでいるような構図になっています。
コールセンターが不要なのではなく、コールセンターは必須です。理由は、テレビCMなどの広告はサービスや商品の魅力を伝えられても、約8割の当事者である本人が使いこなせるのか、自分が欲しいものなのかなど、購入前に確かめたい事が未解決の問題として残ってしまいます。この未解決の問題は、当事者にとって意識しないわけにはいかず、今直ぐにでも解決したい優先事項になります。
テレビCMはすごい訴求力です。しかし、ネットで公開しているFAQでは、問題が解決できないようです。ネットで自己解決できなかったお客さまの割合は40%前後です。その自己解決できなかったお客さまは、電話をすれば待たされるコールセンターに電話してまで解決したい拘りやニーズをお持ちです。しかし、88%のお客さまが不満を訴えています。何故でしょうか??
一度採用したオペレーターをベテランに育てようとせず、辞めてしまうのは仕方がない、また新しい人を採用して処理能力を維持すればよい。と云う逃げがお客さまの満足度をどんどん下げています。これはまさに、企業が自身で選択して起こしている経営リスクです。よって、自身で解決できる経営リスクでもあります。
B)第二にサプライチェーン迷惑をお掛けする危険を経営リスクと捉えます。
C)第三の経営リスクは、自社内部に閉じる危険を経営リスクと捉えます。
D)カスタマージャーニーマップを使う
 先ほど、ご説明したトラブルをお客さまの購入プロセスを旅に例えたカスタマージャーニーマップに書き込むと視覚的に分かりやすくなり、組織の大きさや物理的な距離なども関係なく組織を跨る問題の共有にも役立てられます。
カスタマージャーニー
ご相談を受けたお客さまの購入旅(プロセス)

E)カスタマージャーニーマップに問題を落とし込んだら
 実は、カスタマージャーニーマップに問題を落とし込んだだけでは、経営リスク対策が十分ではありません。
理由は、組織には時間や費用など対策に掛けられるリソースが有限だから、手あたり次第対応すれば善いと云うものではないからです。
古いサイトやノウハウ本には、緩んだ現場の管理を強化せよ!! と云う内容も見受けられましたが、成果が得られたと云う報告はほとんど聞こえてきません。
やはり、対策を施す場合、優先順位を付ける必要が出てきます。
F)ポイントの前後に現れる特徴を見つけ、真の原因を特定する
 カスタマージャーニーマップに問題点を落とし込んだら、次はサービスプロフィットチェーンを使います。
負のサービスプロフィットチェーン

サービスプロフィットチェーンは、企業が売り上げを上げて利益を生むための連鎖が経営リスクを起こしてしまう業務を担当する人に着目しています。
先ほどサービス実現モデルを用いて説明したようにシステムやプロダクトの故障ではなく、多くの経営リスクは組織の中で働くヒトが業務マニュアルに沿って仕事を進める中で起こしてしまうリスクです。よって、サービスプロフィットチェーンは、経営リスクを特定するために役に立ちます。
因みに、この考え方は先人が考案し、色々な賞を受賞しています。
4.経営リスクの分析・評価
A)同種のクレームやトラブルが発生するポイントでも結果に違いが出る
 多くの経営リスクは、悪意が無くても起きてしまう場合が有ります。
理由は、さまざまです。例えば、時間がないから、思いやりから、親切心から、早く独り立ちして欲しいから、辞めたいのなら仕方がないから、人の考え方を変えるのは自分には出来ないから、面倒だから、隣の部門の人と話したことが無いから、怒られるかもしれないから、
B)結果に違いが出る要因を特定する
 同じクレームやトラブルでも、場面や担当者によって影響度に違いが出る事に気が付かれている人も居ると思います。
その違いこそが、原因の特定と改善対策のヒントになります。
原因を特定する場合は、表の上に事象を、左側に担当者を書き込んでマトリックスとして、現象などを書き込んでいくと、なぜこの時と他の時とで結果が異なるのかを見つけられるようになります。
結果が異なる場合は、問題が起きる時間的なタイミングが早いもしくは、遅い。関わり方が、多い少ないなどの違いがあるはずです。
次に、現象には原因が有りますが、原因は幾つかの階層構造になっている事が多く、表層的な原因に対策を打っても、その事象を起こす原因が残っていると、またすぐに問題が起きてしまいます。問題を起こす本当の原因の事を『真の原因』と呼んでいます。この作業では真の原因を特定する事が必須です。
5.経営リスク対策・評価
 前段階であたりを付けた真の原因に対して、対策を考えます。または、対策を講じていきます。
A)予防対策
 経営リスクを洗い出したら第一に考える取り組みは、経営リスク発生の可能性を最小限に抑える予防が絶対必要です。
先ほども事例でご紹介いたしましたが、お客さまに迷惑をお掛けする危険を経営リスクと認識すると、コールセンターで応対を担うオペレーターの欠勤や離職は、対策の優先順位を最優先に取り組む必要が有ります。それでも先ほど洗い出した経営リスクが起きてしまったときの対策を以下に4つ紹介いたします。
B)逓減対策
 リスクの防止または発生した場合の事業への影響を軽減させるために行う対策
C)移転対策
 天災等発生するリスクを無くせない場合、保険を掛けて備える対策
D)回避対策
 発生が危惧されるリスクを回避する目的で、リスクの要因を排除する対策
E)容認対策(リスク保有とも呼ばれる)
 発生し得るリスクを把握しつつも、具体的な対策を取らない選択します。
理由は、リスクよりも対策コストが大きくなる場合の対策に適しています。
先ほどの続きですが、コールセンターの応対を担うオペレーターの欠勤や離職の対策である新人の補完は、多くのお客さまが感じる満足度が低くなるため欠勤や離職防止に係る対策コストの方がはるかに小さいはずです。
当社の試算では、コールセンターのオペレーターの欠勤や離職が防ぐことが出来れば、お客さまの満足度が高まり、現在の売り上げの最大7.3倍の売り上げを獲得します。ただこれは試算なので、最大値まで届かない負の要因が全てゼロに出来ればと仮定したときの値です。
でも、コールセンターのオペレーターがお客さま接点であることは変わりません。欠勤や離職対策が売り上げや利益率の改善に貢献しないわけが有りません。
6.モニタリング及び改善
A)重要管理指標(KPI)を監視して対策の有効性をモニタリングする
 サービス実現モデルを用いて、人が係る業務の中に経営リスクが潜んでいないかモニタリングします。システムやプロダクトの不具合は、簡単に修復できるからです。ただ見かけでだまされてしまう現象も有ります。例えば、システムトラブルで〇〇〇が使えなくなっている。と云う報道で悪いのはシステムと云う報道になりやすい傾向がありますが、真意はシステムの担当者たちの作り方や仕上げの検査が甘かった。と云う解釈が正しい事になります。この事例から経営リスクの多くは、業務遂行する中で人が作り出しているのです。
次のモニタリングは、人が経営リスクを起こしているプロセスを特定するカスタマージャーニーマップを用いてモニタリングします。どこのプロセスで問題が起きているのか、また問題を無力化している業務の取り組みにはどんな特徴が組み込まれているのだろうか??
そして、次のモニタリングは、サービスプロフィットチェーンを用いて、経営リスクが起きているところと、その大元を特定します。経営リスクを起こすのはヒトですから、例えば売り上げが目標に届かなければ、今までの取り組みでは生産性が悪いとか、離職率が改善されないとかの現象が起きているのではないでしょうか?? もっと遡って応対者の支援を見つめ直す必要があります。例えば、コールセンターでオペレーターの独り立ちの基準になっているエスカレーション率は、先輩の助けをどれぐらい求めたか??と云う指標(KPI)ですが、使い方としては、先輩の助けが必要なうちは独り立ち出来ていないと判断され、もっと真剣に取り組む意思が有るのか否かを問い詰め、辞職に追い込む事もあるようです。
実証実験で得たエスカレーション率の使い方は、オペレーターの意気込み確認ではなく、伝え方が足りなかったとか、伝え方にはもっとバリエーションを増やす必要があると云う具合に管理するスタッフ側の気づきに使ってもらう事で、オペレーターの欠勤率が改善され、離職率の改善傾向がみられています。どんなKPIでも、誰のどんなモチベーションを刺激するのかを考えれば、必ず経営リスクを無力化できるはずです。
B)期待通りの場合
サービスプロフィットチェーン
 経営リスク対策が成功しています。大成功です。
但し、この安堵感、達成感は何時までも長続きしません。
理由は、人が慣れてきて、真の原因を無力化した新しい業務マニュアルで規定した事を省略した場合、経営リスクはそのスキを見逃さずにすぐに復活してしまいます。
C)期待外れの場合
①真の原因が的外れになっていないか??
 経営リスク対策に期待した結果が得られていません。
原因は、対策を打った原因が真の原因では無く、他の原因に対策を打ったことが考えられます。このような場合は、初めのうちは珍しくありません。予行練習だと割り切って再度挑戦していきます。
②監視用のKPIは本当に妥当か??
 真の原因は間違っていなさそうなのに、期待通りの結果が得られない事も珍しくありません。先ほどご紹介したコールセンターの独り立ち基準の様に、覚悟を確認する間違ったKPIの用法は少なくないため、用いるKPIでどんなモチベーションを刺激しようか再度吟味してください。
③対策は本当に妥当か??
 真の原因を抑えているはず。監視用のKPIはターゲットとするヒトのモチベーションを刺激するはずだ。そうなると、対策が妥当だったのか?? 再度確認が必要になりそうです。

A社、B社、C社、D社で構成するサプライチェーンを構築する場合
各社が提供できるサービス
円は、それぞれの企業が提供できるサービスや製品です。
1社が提供できるサービスや製品がとても優れています。
しかし、4社が提供できる円が重なっていないため、4社がサプライチェーンとして連携して提供できるサービスや製品が無い事を表しています。
経営リスクを無力化する対策が、そもそも現状では出来ない事を企画していては、経営リスクの無力化は実現できません。
次に、
サプライチェーンが提供できるサービス
A社、B社、C社が歩み寄って、重なる部分を構築した場合

上の図と同様に、円はそれぞれの企業が提供できるサービスや製品です。
矢印で示すところを重なるように業務を再構築して経営リスクへの対策を企画すれば、それはまだ成果が出ていないだけで、待てばクレームなどの経営リスクは少しずつ減っていくものと考えられます。

次は、貴社が経営リスク対策で成功する番です!!

1.成果
A)コールセンターのクレーム分析と対策チームを立ち上げた
 多くの経営リスクは、ある特定の担当者が注意をしたからと云って、無力化できるものではありません。
全社規模で、真の原因を特定して、対策を打つ対策チームの立ち上げをお勧めいたします。既に対策チームが有れば、効果が期待できる取り組み方を知るだけで、直ぐに効果を実感できるはずです。
実施してきた実証実験の全てで対策チームを立ち上げて頂き、全ての実証実験で経営リスクの改善が確認できています。
B)同じクレームの原因を特定して対策を打てるようになった
 お客さまから頂くクレームを類似する項目ごとに整理して、簡単に無力化できる経営リスクと、手間が掛かるが放置していると悪影響が強く残り拡大してしまうクレームも同時に対策チームが旗振りをして無力化できました。
この実証実験では約2割の問い合わせを削減する事に成功しています。
C)問題解決時間が早くなった
 対策チームを立ち上げて経営リスクを無力化しようと取り組んでも乗り越えなければならない課題は山積みでした。例えば、クレームで指摘されているサービスを担当する部門の担当者を知らない。
同じ社内組織なのに、同音異義語が多く意思疎通が出来ない
などです。しかし、子供ではないので、そんな言い訳が通じるのははじめだけで、二回目からは解決時間を早められるような工夫がみられるようになります。
はじめは問題解決に何時か月もかかっていた取り組みが、約7日で解決できるようにスピードが早まった事例もありました。
D)離職率が改善されてきた
 誰のどんなモチベーションを刺激すべきか?? と云う問いかけが大きな効果が出たと、お褒めの言葉を掛けて頂いています。
離職率は約27ポイント改善されました。
E)お客さまの拘りやニーズが把握できるようになった
 先ほどご紹介したエスカレーション率の意味づけを変更してから、ベテランがお客様の拘りやニーズを把握しやすくなったと、みんな口を揃えて感謝されます。
理由は、色々な場面でオペレーターから相談を受ける事で、一つ一つの問題を縦だけではなく、横串にさして比較できるようになったことが好かったと好評価して頂いています。
F)自社のサービスや製品のリピートを含め購入率が向上した
 経営リスクとなるクレームへの対策を実施していると、お客さま満足度が高くなることが測定出来ました。
測定の方法は、平均処理時間(AHT)が短縮していったことから推測しています。理由は、コールセンターの大原則で、電話を切る権限はお客さまのみと云う掟が有ります。
クレーム対策が進む前は、クレーム対応で通話時間が120分なんて言う応対も珍しくありませんでしたから、大きな成果と感謝されています。応対業務によってばらつきがありますが、AHTの短縮効果が大きかった業務グループは、17分の短縮が出来たと聞いています。
ただ、AHTが短い事が善ではなく、必要な伝える事、聞き出す確認事項を省略しては、また新たな経営リスクを生み出してしまいます。AHTについては、時短を目指すのではなく、最適化を目指すことをお勧めいたします。
2.次は、貴社が経営リスク対策で成功する番です!!
 最後までこのコラムを読んでくださりありがとうございます。
このコラムを最後まで読んだ人は、他にもいろいろと勉強されているのではないかと推測しています。理由は、具体的な経営リスクの洗い出し方と、対策の方法を知りたかったからではないでしょうか。
是非、ここでご紹介した方法で、周りを見渡してみてください。今までとは異なる景色が、見えるようになっていれば経営リスクの対策はもう半分ぐらい進んでいると思います。

自社の事情ならどうなるのだろうか?? など、このコラムだけでは、解決できない未解決事項が有れば、お気軽にお問い合わせください。

弊社ホームページでも運営課題の解決方法をご紹介しています。
 https://activecs.co.jp/
解決方法を仕入れご活用ください。

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専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

カスハラの恐怖や苦しみ、覚えた記憶が出てこなかった悔しい経験から開発したAI「コーチングエンジンⓇ」で、応対中の恐怖を取り除き、顧客から感謝され、働きやすくやりがいが高いコールセンター作りが得意です。

沖本能道プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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