コロナ禍における不動産流通の問題点を探る
今年、初の投稿です。よろしくお願いいたします。
さて、数か月前、関東圏の方から突然一通のお手紙をいただきました。
内容は「亡父が原野(山林)商法により北海道、青森県内に各約4000㎡数ヶ所の土地(原野)を購入。(以下原野という)相続により亡父から原野商法で引っかかった山林を相続。自分が登記しているとのこと。売りたくても場所も判らないし売れない。
自らも高齢となり、今後も相続税、固定資産税がかかる。相続人に迷惑をかけたくないので、あなたが調査した上で贈与を受けてくれませんか」という内容。(以下、依頼人と呼ぶ)
「私があなたから山林の贈与を受ける何らの理由がございません。しかしながら、せっかくいただいたお手紙で遠方の地でもあり、青森県内ならできる限りの調査の協力はさせていただきます」と回答。
この機会に原野商法が自分なりに、どういうものだったのか考えてみたいと思ったからです。
原野商法に限らず、最近では所有した土地が、いろいろな理由で売ることできず、このままでは固定資産税、相続税等がかかるのみで、自らの身内の相続人に迷惑がかかるからとすぐにでも手放したいという人も数多くいるのだそうです。
原野商法とは原野等の価値の低い土地をあたかも魅力的であるかのように装って売りつける一般的には詐欺的悪徳商法のことを言う。1980年(昭和55年)頃が全盛期といわれております。
さて、依頼人所有のT町の原野(山林)は法務局では登記がされて資料も図面もありました。
そこで役場に行くと国土(地籍)調査が入っていたことが判明。
したがって精度の高い図面があるものと期待しましたが役場に地籍調査の図面は確かにありました。
見させていただくと十把一絡げ(じっぱひとからげ)の様式、すなわち山の図面に所有者名の羅列(ただし面積の記載はある)のみで場所の特定はできません。
国土調査すなわち地籍調査では境界立会人がいないと、境界の確定ができないからです。山なので無理からぬことでしょうか?
「法務局の図面と地籍調査の図面とを等倍にして突合すれば場所の特定、固定資産税賦課の根拠、信ぴょう性も上がるし、説明もし易くなりませんか?」
と質問したところ「ごもっとも」という答え。
担当者の方は春になり、雪が溶けたら現地を調査してみたいとのこと。したがって役場では原野の場所の特定には至りませんでした。
近くの森林組合に行くとその山に詳しい担当職員がおられて、依頼主の図面と森林組合備え付けの法務局の図面から場所を特定してくれました。
森林組合に「山師」さんという職業の人が居合わせて「そこに松林があり秋にもなると松茸が生えて松茸独特の香りで場所が直ぐ判り、宝の山と呼ばれているよ」と教えてくれました。
「松林の木を俺に売ってくれないか」と山師さん。(ご冗談でしょ?)
現地に行ってみると依頼主の土地は確かにありました。雑木が少ない うえ、道路に面した間口の広い横に長い長方形の土地。上のほうに松の木が群生。
実際、植林等の手入れによっては栗畑、杉、松の森林にはなるみたいです。
イワナの魚影もあり、湧き水にクレソン、セリ等が自生する小川が流れている。途中までしか車では行けないが、図面に道路はあり、土手を歩いて通行できると森林組合。しかも山林としては間口も広く道路もあり、農家集落を形成、森林としての条件は良いかも。
話はそれますが、この里の近くの小川の大きな石に文字が刻まれておりました。明治初期時代、仲の良い娘さんと父が小屋を建てて暮らしていたが父が狩り(猟)に出かけたまま帰ってなかったという。お腹(なか)を空かして「父恋し」と泣きながら何日も父の帰りを待ったという。
そして泣き疲れてやがてこの大きな石に寄りかかるようにして亡くなったという。
夜になると川のせせらぎの中から父恋しと忍び泣く声が聞こえるのだそうです。
この石を人は夜泣き石と呼ぶようになったという。悲しい少女伝説が残る。(心霊スポットになっていて興味があり、夜行く人もいるらしいが私なら心霊より熊の出没が怖い)
娘さんが亡くなったのは事実らしいのですが、何て書いてあったのか、そして少女に哀れみも感じたので春になったらもう一度行ってみたい。(タイトルと直接関係ないので、後ほど削除の予定です)
話は戻りますがここは、地元の人相手ならともかく、一般的な売買はできそうにない。遠隔地なので依頼人は利用も手入れも出きない。そしてご本人は是が非でも手放したいという。
遵法的な処分する方法に、原野商法の土地を残して、欲しい財産全てを相続人に生前贈与の手続きをした後、遺産相続できるようになったら原野商法の土地を相続放棄する方法があると思います。
しかし税理士さんに伺ったところ、生前贈与は税金が高く、実用的ではないというアドバイスを頂きました。
相続人は誰しも全ての不動産を相続登記すべきと当然の如くにして考えると思います。かつて依頼人がそうであったように。
調査依頼人に調査した結果の概要をお伝えしました。 何よりも依頼人が精度の高い資料をお持ちだったので場所の特定に至ったものでした。
②へと続きます。
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