幕の内弁当化するまちづくり
以前から映画やテレビドラマのロケ地を訪ねるというムーブメントはありました。
私も学生時代に欧州の都市や建築をバックパッカーで巡っているときに、ローマでは「ローマの休日」のロケ地だった“スペイン階段”“トレビの泉”“真実の口”などの主なところは押さえておきました。
日本では、朝の連続テレビ小説の舞台となった神戸の異人館街や北海道の富良野や、韓国でも上映され多くの韓国人観光客を集めた小樽などもロケ地巡りの代表格です。
ロケ地巡りと聖地巡礼の違い
最近はアニメの舞台となった場所を“聖地”と称して、その舞台となったところを巡る“聖地巡礼”が話題となっています。
ロケ地巡りとの違いは、アニメの舞台なので実際には撮影などが行われていないというところにあります。
“聖地巡礼”をまちおこしにつなげたいという地元の気持ちも分かります。しかし、アニメというバーチャルな世界感と現実世界がクロスする“聖地”では気をつけなければならないことがあります。
映画やテレビドラマのロケ地の場合は、ロケ地の空気感や風景そのものが映画やドラマの一コマになっている場合が多いのですが、アニメの場合はあくまでも背景であるということです。
“聖地”を訪れた人たちには、現実世界のその聖地を眺めながら実際の主人公たちが頭の中で合成されていたり、自分をそこに写り込ませることによって、アニメとの一体感を楽しんでいることが多いのです。
したがって、アニメの背景となっている場所に商業的な“のぼり”や“看板”などはあって欲しくないと思っている人が多いと考えた方が良いでしょう。
“聖地巡礼”は“お・も・て・な・し”がキーワード
しかし、全く案内がないと、神戸や小樽などのような観光ガイドブックも何もないような地方ではどこがアニメの舞台となったのかが分かり難いため、アニメの背景となっていない、すなわちフレームアウトした場所などに案内を立てるというのは受け入れられる可能性が高いでしょう。
なかには、自分の力で探したいという人もいると思いますので、過剰な案内看板などは避けれるかもしれませんが、そのときでも、道を尋ねたら“親切に教えてくれた”という経験が好感を持って受け入れられることもあります。
“聖地巡礼”はバーチャルな世界と現実世界を結ぶクロスオーバー空間ですので、“聖地巡礼”をまちおこしに活用する際は少し気を遣った配慮が求められると思っておいてください。
関連コラム
歴史を活用した“まちづくり”の難しさ
まちづくりワークショップ・ファシリテーターと合コン幹事の関係
“まちづくり”と“まちおこし”
意外と知られていない“まちづくり”の意味
まちづくりのプロって何だろう?
まちづくりは想像力