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加藤武範

医療と介護の架け橋になる、リハビリと介護支援の専門家

加藤武範(かとうたけのり) / ケアマネジャー

合同会社福寿想

コラム

土地処分 癌末期 独居 身寄りなし

2023年10月18日 公開 / 2024年1月27日更新

テーマ:癌末期 在宅独居

コラムカテゴリ:医療・病院

土地処分を希望される癌末期(独居・身寄りなし)の方のお話です。
宅地建物取引業をはじめて数ヶ月が経過しますが、地域包括支援センターからこんな相談がありました。

癌の末期で余命1、2ヶ月と聞いていますが、お金がありません。年金収入が月に約10万円ありそうですが、アパート家賃数ヶ月分や病院の入院費用も滞納しています。生活保護を受けるにも、数十坪の土地があり、その土地の賃借料を毎月数千円もらっていて、生活保護申請の相談もできません。とりあえず、介護保険を申請して、特殊寝台(介護ベッド)をレンタルし、訪問診療や訪問看護、訪問介護(ヘルパー)を段取りしましたので、今後は、加藤さんにケアマネジャーをお願いしたいです。あと、本人さんが土地の処分を希望しているので、土地売買の相談にのってあげて欲しいです。

ケアマネジャーと宅地建物取引士の資格を持つ私に、なんとぴったりな相談ケースではありませんか!

ただこのケースには、大きな問題がありました。ご本人はアパートの一人暮らしの上に、家族どころか身寄りが全くいないのです。
最初の1、2週間は、いろいろな方の支援で何とか独居も成り立っていたのですが、3週間目から様相が変わってきました。癌による痛みも顕著になり、歩行も困難となって、ベッド生活になってしまったのです。まだ、本人の判断能力は維持され、署名なども可能な状態です。なんとか、土地の処分をするなら、ここで決めないといろんな手続きに支障が出ます。本人さんが何とか意思表示できる状態で、司法書士の先生に関わってもらう事ができ、1ヶ月を経過した頃、土地の売買が成立しました。

土地の売買が成立して安心したのか、本人さんの状態は急激に悪化しました。ベッド上で点滴をカーテンレールにつないで…という状態で、訪問看護が毎日入っても、とても生活ができている…とは言い難い状態でした。本人さんが「入院させて欲しい」という発言があったのを機に、訪問看護師さんに「入院できないか?」相談しましたが、「治療目的ではないので、入院は難しいです。先生もこのまま自宅で看取るつもりです。」という返事でした。ケアマネの私の心境は「この状態で、このアパートで独り死を待つことが正しい支援なのか…」と自問自答を繰り返すばかり…。
翌日、地域包括支援センターの担当者に相談して、土地の売買代金を使って、ナーシングホーム(有料老人ホーム)に入居させましょう!という事になりました。本人さんも何とか了承され、その3日後ナーシングホームに入居。入居時は、顔は浮腫み、手足は点滴も入らず、この2、3日がヤマですという状態でした。


ナーシングホームに入居して、もうすぐ2週間を迎えます。身体はきれいになり、うどんも少し食べれる様になりました。残された命の灯は限られていると思われますが、数日、数週間の単位でもこの世の時間が延びたのは間違いありません。ただ、何年ケアマネの仕事しても、何が正しかったのか?今も迷う事ばかりです。

友人のケアマネジャーにこの話をしたら、「良いことしたよ。加藤さん。それに土地の処分ができるケアマネなんていないよ。土地を処分した自分のお金で施設に入って、お風呂できれいにしてもらって、温かい食事が食べれて、いろんな人に看取られるんだから、幸せだと思うよ!」と褒めてくれました。
いくつになっても、褒められるとうれしいものです。

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