エンパワメント
ケアマネとして担当して、まだ日が浅いAさん(85歳)は、治療目的で、B総合病院に2週間前より入院されていましたが、治療がうまくいかず、急に退院の話が持ち上がりました。キーパーソンの娘さんは、急な展開に冷静になることができず、今まで信頼していた主治医を信じる事ができなくなってしまいました。さらに、病棟スタッフのAさんへの対応も「認知症扱い」され始めてるような気がして、「どうしたら良いか?」とケアマネの私に相談がありました。
ケアマネ:主治医から、もう一度しっかり話を聞かれてはどうでしょう?急に方針転換が示された理由があるはずです。
娘さん:先週までは、薬が効いているという話だったのに、昨日の血液検査の結果が思わしくないので、薬は中止で、いつ退院しても良いと言われたのが、納得できない。見放されたのではないか?また、こんな話を医師にしたら、心証を害するのではないか?
ケアマネ:病棟スタッフの対応も、娘さんの気持ちの問題ではないか?実際、年齢的に認知症状が出てもおかしくないし、入院中にせん妄(薬や体調による一時的な意識混乱)が起こることはよくあります。御家族として、認知症という言葉に敏感になる気持ちはよくわかりますが、退院という話が出たことがきっかけで、日々のケアの対応が変化する事は無いと考えます。こちらも、病棟スタッフに具体的な説明を受けてはどうでしょうか?「Aさんが、ナースコールを押しても、全然看護師が来ない」と文句を言っていると正直に話されたら良いと思います。
娘さん:そんな、クレームみたいな事を看護師さんに言っては、本人のケアに影響があるのではないでしょうか?センサーマットをベッド下に置かれているのに、本人はセンサーマットを避けてベッドから下りて、トイレに行っている様です。
まず医師、治療方針の件に対するアドバイスです。
医療側の中では「積極的治療 → 生活・看取り寄りへのシフト」が始まっている可能性が高いですが、医師はご家族に説明しているつもりでしょうが、ご家族は急な変化になかなか現実を受け入れられず、理解が追い付いていない状況だと考えます。ここは、十分時間をかけた説明を主治医に求めるべきだと思います。病院には、ご家族が納得するまで説明する義務があります。一方で、大変申し訳ないですが、良い事も悪い事もあります。すべてが、娘さんの希望通り、治療がうまくいくとは限りません。現実と向き合う勇気も必要だと考えます。
病棟スタッフについて
実際、せん妄は無いか?本当に認知機能が落ちていると思われるエピソード無いか?正直に現場に確認されたら、良いと思います。限られた面会の時間内では、判断しづらいですが、スタッフ側の“対応の雑さ”が無いとは言えません。特に終末期に近づくと、せん妄はかなり増えます。ただ、それを理由に雑に扱われるのは別問題だと感じます。B総合病院には、MSW(医療ソーシャルワーカー)という相談員が多数いるので、MSWに相談するのが一番良いと思います。患者やご家族の側に寄り添って話を聞いてくれます。大半のMSWは…
家族の生死がかかる状況で、感情で受け止めてしまうのは仕方ない事ですが、感情移入したまま物事を見たり考えたりするのは、患者本人にとっても、ご家族にとっても不利益だと私は考えます。
娘さんは、本当に一生懸命Aさんを介護されていました。私も娘さんの気持ちは十分理解できるのです。B総合病院も病院なりに善処した事は理解できます。そして、不可能を可能にはできない事も分かります。ただ、医療関係の方々にも、そうしたご家族の気持ちを理解して、日々、接して頂きたいと思います。


