認知症 施設入所 在宅 見極め
先日、はじめて訪問したお宅での出来事です。
ご夫婦二人暮らし。ご主人が要介護3の認知症の奥さんの面倒をみているとの事でした。ご主人の案内で室内に入ると奥さんは布団にくるまって寝ている状況です。
「ほら、ケアマネジャーさんが来てくれたぞ。起きろ!」
「はい。すいません。すいません。すいません。」
奥さんは布団の上に正座して、必要以上に謝りながら、私に挨拶し、笑顔を向けてくれました。奥さんの左眼の周りはうっすら黄色のあざが見られます。
すでにこの時点で違和感を感じます。
どんな生活をされているか?ご主人に話を伺っている合間合間に、ご主人は
「早く、死んでほしい」「こいつを殺して、俺も死のうか・・・」
など奥さんに対して攻撃的な発言を繰り返します。すると、奥さんも負けじと
「この、ばかやろう!ばかやろう!」
と先ほどの笑顔からは想像できない形相で、応戦する始末です。
売り言葉に買い言葉・・・「なんだ?ばかはお前だろう!ばかやろう!」と拳を振り上げ、威嚇するご主人。声のボリュームが互いにだんだん大きくなっていきます。
ご主人は、だいぶ煮詰まっている様子でした。
「足腰は丈夫。昼間は、勝手に家から出てしまう。心当たりのところを探して、今のところは見つかる。近所の人と何でもない様に立ち話をしている。飯は食うけど、トイレがうまくできない。トイレは毎回ついていかないと、汚してしまう。お尻を拭いた後の便の付いたトイレットペーパーを、トイレの窓に並べている。この間は、汚れたパットを冷蔵庫の中にしまっていた。便で汚れた手をキッチンの流しで洗って、皿を拭く布巾で手を拭いていた。
国民年金しかもらっていない。子供達の世話になるつもりはない。月5万円が本人に使えるお金。それ以上は、自分の生活もあるし出せない。」
同じ認知症の家族を介護する者として、ご主人の気持ちはとてもよく分かります。行き場のない気持ちを言葉にしてしまい、相手を罵り、時には手を上げているかもしれません。こんな状態になるまで、ご主人は、よく頑張ったな・・・というのが私の正直な気持ちです。
初回訪問という事で、担当ケアマネと二人で伺っていたのですが、まずはショートステイ(泊りサービス)を使ってみませんか?と提案し、それに伴い、所得が少ない方を対象とした食費(ショートステイ等)を減額できる制度を紹介し、一度、市役所に相談していただくようにアドバイスさせて頂きました。
「週に2~3日でも、お母さんを預かってもらって、お父さんが息抜きできる時間を作りませんか?僕も母親をショートステイに預かってもらっています。」
「預かってもらったら、ゆっくり酒が飲めるな」
これから介護保険サービスを利用して、お互い息抜きする時間が作れるようになると良いのですが・・・