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榊原宏昌

介護現場をよくするコンサルタント

榊原宏昌(さかきばらひろまさ) / 経営コンサルタント

天晴れ介護サービス総合教育研究所

コラム

法令遵守覚え書き 2 「介護予防サービス・支援計画書」(続き)(2018.6.30)

2018年6月30日 公開 / 2018年7月2日更新

テーマ:読み合わせ!法令遵守

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 介護予防 プログラム


法令遵守覚え書き
2 「介護予防サービス・支援計画書」(続き)

⑭「アセスメント領域と現在の状況」
各アセスメント領域ごとに、日常生活の状況を記載する。
各アセスメント領域において「現在、自分で(自力で)実施しているか否か」「家族などの介助を必要とする場合はどのように介助され実施しているのか」等について、その領域全般について聴取。アセスメントは、基本チェックリストの回答状況、主治医意見書、生活機能評価の結果も加味して行う。
聴取するにあたって利用者と家族の双方に聞き、実際の状況と発言していることの違い、利用者と家族の認識の違いなどにも留意する。
利用者・家族からの情報だけでなく、計画作成者が観察した状況についても記載する。
「運動・移動について」欄は、自ら行きたい場所へ様々な手段を活用して、移動できるかどうか、乗り物を操作する、歩く、走る、昇降する、様々な交通を用いることによる移動を行えているかどうかについて確認する必要がある。
「日常生活(家庭生活)について」欄は、家事(買い物・調理・掃除・洗濯・ゴミ捨て等)や住居・経済の管理、花木やペットの世話などを行っているかについて確認する必要がある。
「社会参加、対人関係・コミュニケーションについて」欄は、状況に見合った適切な方法で、人々と交流しているか。また、家族、近隣の人との人間関係が保たれているかどうか。仕事やボランティア活動、老人クラブや町内会行事への参加状況や、家族内や近隣における役割の有無などの内容や程度はどうかについて確認する必要がある。
「健康管理について」欄は、清潔・整容・口腔ケアや、服薬、定期受診が行えているかどうか。また、飲酒や喫煙のコントロール、食事や運動、休養など健康管理の観点から必要と思われた場合、この領域でアセスメントする。特に、高齢者の体調に影響する、食事・水分・排泄の状況については、回数や量などを具体的に確認する必要がある。
⑮「本人・家族の意欲・意向」
各アセスメント領域において確認をした内容について、利用者・家族の認識とそれについての意向について記載する。例えば、機能低下を自覚しているかどうか、困っているかどうか、それについてどのように考えているのか等。具体的には、「○○できるようになりたい」「手伝ってもらえば○○したい。」と記載し、その理由についても確認する。ただし、利用者と家族の意向が異なった場合は、それぞれ記載する。否定的ないし消極的な意向であった場合は、その意向に対し、ただちに介護予防サービス計画を立てるのではなく、その意向がなぜ消極的なのか、否定的なのかという理由を明らかにすることが介護予防支援では大切である。これは、具体策を検討する際に参考情報となる。
⑯「領域における課題(背景・原因)」
各アセスメント領域において生活上の問題となっていること及びその背景・原因を「アセスメント領域と現在の状況」「本人・家族の意欲・意向」に記載した内容や、実際の面談中の様子、利用者基本情報、主治医意見書、生活機能評価の結果等の情報をもとに健康状態、心理・価値観・習慣、物的環境・人的環境、経済状態等の観点から整理し、分析する。その際、基本チェックリストのチェック結果についても考慮する。ここには、現在課題となっていることあるいはその状態でいると将来どのようなことがおこるかなど課題を予測して記載する。結果として、その領域に課題があると考えた場合に「□ 有」に■印を付す。
⑰「総合的課題」
前項目で分析した各「領域における課題」から、利用者の生活全体の課題を探すため、直接的な背景・原因だけでなく、間接的な背景・原因を探り、各領域における課題共通の背景等を見つけ出す。そして、利用者にとって優先度の高い順で課題を列挙する。また、課題とした根拠を記載する。例えば、複数の領域それぞれに課題があったとしても、その課題の原因や背景などが同一の場合、統合して記述したほうが、より利用者の全体像をとらえた課題となる。ここには、支援を必要とすることを明確にするために課題だけを記載し、意向や目標、具体策などは記載しない。
ここであげる総合的課題に対して、これ以降の介護予防支援プロセスを展開するため、優先度の高い順に1から番号を付す。
⑱「課題に対する目標と具体策の提案」
「総合的課題」に対して、目標と具体策を記載する。この目標は、利用者や家族に対して専門的観点から示す提案である。したがって、本人や家族の意向は入っておらず、アセスメントの結果が現れる部分である。適切にアセスメントがされたかどうかは、この項目と意向を踏まえた目標と具体策を比較すると判断できるため、地域包括支援センターでの確認は、この項目をひとつの評価指標とすることができる。このため、目標は漠然としたものではなく、評価可能で具体的なものとする。
具体策についても、生活機能の低下の原因となっていることの解決につながる対策だけでなく、生活機能の低下を補うための他の機能の強化や向上につながる対策等、様々な角度から具体策を考える。
具体的な支援やサービスは、特定高齢者施策や介護保険サービスだけではなく、生活機能の低下を予防するための利用者自身のセルフケアや家族の支援、地域のインフォーマルサービスなどの活用についても記載する。
今後、次の項目である「具体策についての意向 本人・家族」欄で同意が得られた場合は、ここで提案した目標と具体策が介護予防サービス計画の目標と支援内容につながっていく。
計画作成者はアセスメントに基づき、専門的観点から利用者にとって最も適切と考えられる目標とその達成のための具体的な方策について提案することが重要である。
⑲「具体策についての意向 本人・家族」
計画作成者が提案した「課題に対する目標と具体策」について、利用者や家族の意向を確認して記載する。ここで、専門家の提案と利用者の意向の相違点が確認できる。ここでの情報は、最終的な目標設定を合意する上での足がかりとなる。
合意が得られた場合は、「○○が必要だと思う」「○○を行いたい」等と記載する。合意が得られなかった場合には、その理由や根拠等について、利用者や家族の考えを記載する。

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