咬筋へのボトックス②
ボトックスを打つ→筋力が弱まる→かえって下がる・たるむ、というふうに解釈しておられる方も多いと思いますが、じつはこれは半分だけ正解です。
それは、注射する筋肉が本来どんな役わり・働きのある筋肉なのかによって話が違うからです。
どういうことかというと、ある部分を引き上げることが役わりの筋肉に打つと、反対方向つまり下げる方向の筋肉の力が勝るので結果的に下がることになります。
逆に、ある部分を引き下げる・引き寄せることが役わりの筋肉に打つと、反対方向の力が勝るのでその部分は上がることになります。
実際の例でいうと、おでこの横ジワの主な原因である前頭筋の役わりは眉毛を引き上げることです。なので、ボトックスがよく効く(横ジワが改善する)=前頭筋の力が弱まる=眉毛を引き上げる力が弱まる、という図式が成立するため、人によっては上瞼がかぶさってくることがあるわけです。ここで勘違いしないでいただきたいのはこれは眼が開きにくくなる眼瞼下垂ではないということです。眼瞼下垂の原因は上眼瞼挙筋にあり前頭筋ではありません。おでこのへのボトックス注射で上眼瞼挙筋に影響が及ぶことはありません。
また、瞼の皮下を円形状に取り囲む眼輪筋には巾着の口を閉めるように瞼を引き寄せる働きがあります。そのため目尻から眉毛の下側にかけてボトックスを打つと逆方向の力が勝るので上瞼や眉毛を引き上げることができます。
ボトックス注射をする医師に解剖の充分な理解が求められる理由がここにあります。