適正原価でドライバーの給料は上がるのか?――全産業平均の人件費と運送会社の賃金制度〖運送業の❝気になる話❞〗
― 従業員の将来への備えと、採用時の福利厚生を考える企業型DC導入事例 ―
運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。
「企業型DCは会社の負担が大きいのではないか」
「従業員のためになる制度だと思うが、うちのような中小企業でも導入できるのだろうか」
企業型確定拠出年金(企業型DC)に関心を持ちながらも、このような理由で導入を見送っている経営者は少なくないと思います。
今回ご紹介するのは、
【専門サービス業を営む中小企業が、
会社の負担を抑えた「選択制」の企業型DCを導入した事例】
です。
導入のきっかけは、従業員の将来への備えを考えたことでした。
そして導入後は、従業員の資産形成に対する意識が少しずつ変わり、採用時の制度説明にも活用されるようになっています。
1.導入前は「会社の負担が大きい制度」という認識だった
今回の事例は「学術研究、専門・技術サービス業」に属する企業です。
従業員数はグループ全体で約30名。
経営者は以前から、公的年金だけでは従業員の老後の備えとして十分ではないのではないかと考えていました。
また、従業員自身が将来に向けて資産形成を考えることも大切だと感じていました。
一方で、企業型DCについては、会社が多額の掛金を負担する制度という印象があり、導入のハードルを高く感じていたそうです。
ところが、制度の説明を受けて、その認識が変わりました。
【企業型DCには、会社の規模や目的、負担できる費用などに応じた複数の制度設計がある】
ことを知ったのです。
そこで、自社の実情に合う仕組みとして「選択制」の導入を決めました。
2.「選択制」で従業員自身が将来への備えを考える
この企業が採用したのは、従業員が給与の一部について、企業型DCの掛金として積み立てるか、給与として受け取るかを選択できる仕組みです。
従業員は、自分の生活状況や将来の資産形成に対する考え方に応じて選択します。
例えば、若い従業員であれば、目先の生活費を優先したいと考えることもあるでしょう。
一方、将来への備えを重視し、毎月一定額を積み立てたいと考える従業員もいます。
大切なのは、会社が一方的に加入を求めるのではなく、
【従業員が制度を理解し、自分で判断できること】
です。
なお、給与の一部を掛金に振り替える方式では、税金や社会保険料の取扱いが変わる場合があります。将来の厚生年金や社会保険給付に影響する可能性もあるため、制度設計と従業員への説明が重要になります。
3.導入後、従業員の加入が少しずつ増えていった
この企業は選択制の企業型DCを導入しました。
導入当初、すべての従業員がすぐに加入したわけではありません。
特に若い従業員にとっては、将来の資産形成よりも現在の給与を優先したいという考え方もあります。
経営者も、その判断を尊重していました。
ところが、制度の運用を続ける中で、加入する従業員が徐々に増えていきました。
すでに加入している従業員の運用状況を知り、自分も始めてみようと考える人が出てきて、
現在では従業員のおよそ半数が加入しています。
また、年に一度、社内で投資教育の勉強会を開催し、制度や資産運用について理解を深める機会を設けています。
【制度を導入して終わりにするのではなく、従業員が理解を深めながら活用していく。】
この継続的な取組みが印象的です。
4.採用時に説明することで、福利厚生の一つになった
この企業では、新しく入社する従業員に対しても企業型DCの説明を行っています。
直近の入社者5名のうち4名が、最初の説明で加入を決めたと紹介されています。
もちろん、この数字だけで企業型DCが採用の決め手になったとはいえません。
しかし、入社時から将来の資産形成について説明することは、会社が従業員の将来を考えている姿勢を伝える機会にもなります。
企業型DCは、導入しただけで採用や定着の問題を解決する制度ではありません。
給与水準、労働時間、職場環境、人間関係など、働く人が会社を選ぶ理由はさまざまです。
その中で、
【従業員の将来への備えを支援する福利厚生の一つとして、
企業型DCを位置づけることには意味がある】
と考えます。
5.中小企業の企業型DC導入で大切なこと
今回の事例から考えたいのは、企業型DCを導入すること自体が目的ではないということです。
まず考えるべきなのは、自社が従業員に対してどのような福利厚生を提供したいのか、という点です。
会社が掛金を負担して退職金制度を充実させたいのか。
従業員自身の選択による資産形成を支援したいのか。
あるいは、その両方を実現したいのか。
目的が違えば、適した制度設計も変わります。
選択制であれば会社の掛金負担を抑えた設計が可能ですが、制度の導入・運営に伴う費用や事務負担がなくなるわけではありません。
また、従業員への説明、給与制度との整合性、税金・社会保険への影響なども検討する必要があります。
【「企業型DCを導入できるか」だけではなく、
「自社にとってどのような制度が適切か」を考えること】
が重要です。
まとめ.導入のハードルを決めるのは、会社の規模だけではない
今回の企業は、従業員の将来への備えを考えながらも、会社の負担を懸念して企業型DCの導入を見送っていました。
しかし、自社に合った制度設計があることを知り、導入に踏み切りました。
その後、従業員の加入が徐々に増え、投資教育や採用時の制度説明にも取り組んでいます。
企業型DCは、大企業だけの制度ではありません。
中小企業であっても、経営者が何を実現したいのかを整理し、会社と従業員の実情に合った仕組みを検討することができます。
私自身、企業型DCの制度設計・導入支援に携わる中で、制度の内容を知る前から「うちには難しい」と考えている経営者にお会いすることがあります。
だからこそ、導入を前提に話を進めるのではなく、
【会社の人材課題や福利厚生の目的を確認することから始めたい】
と考えています。
企業型DCの制度設計・導入支援はこちら。
(東商社長NET)https://www.tokyo-cci.or.jp/shachonet/profile/2140.html
運送業専門社労士としての活動はこちら。
(公式LP)https://yutoli-sr.com/
最後までお読みいただきありがとうございます。


