適正原価でドライバーの給料は上がるのか?――全産業平均の人件費と運送会社の賃金制度〖運送業の❝気になる話❞〗
運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。
――企業型DCは採用の決め手になるのか?――
「求人を出しても、なかなか人が集まらない」
人材確保に悩む中小企業の経営者にとって、決して珍しい話ではありません。
給与を引き上げれば採用できるのでしょうか。それとも、休日や労働時間、職場環境を見直す必要があるのでしょうか。
今回ご紹介するのは、採用難をきっかけに企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入し、実際の採用につなげた中小企業の事例です。
この会社が企業型DCを導入した理由と、導入後に感じた効果から、中小企業の福利厚生のあり方を考えてみます。
1.給与だけでは人が採れない――ある中小企業の悩み
今回の事例は、従業員10名の建設業の会社です。
2019年頃、事業拡大に伴って従業員の採用を進めようとしました。しかし、知人の紹介やハローワークを利用しても、思うように採用できませんでした。
そこで転職エージェントに相談したところ、担当者から、最近の求職者は給与だけでなく、休暇の取りやすさや将来の保障につながる福利厚生も重視していると助言を受けました。
この助言が、経営者にとって福利厚生を見直すきっかけになりました。
2.企業型DCの導入が採用の決め手の一つになった
経営者は、以前から顧問税理士に経費の有効活用を勧められていたこともあり、企業型DCの導入を検討しました。
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用して将来の年金資産を形成する制度です。
この会社では、企業型DCを導入したことが、実際に採用の決め手の一つになったそうです。
採用された従業員は、もともと個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用しており、確定拠出年金の仕組みやメリットを理解していました。
ここで注目したいのは、企業型DCを導入すれば採用できる、ということではありません。
求職者が企業型DCの価値を理解していたことと、会社が将来の保障につながる制度を用意していたことが結びついた事例なのです。
3.従業員の将来を考えることも経営者の役割
この事例で、私が特に注目したのは経営者の考え方です。
建設業では個人事業主として働く職人も少なくありません。しかし、この会社では従業員を雇用している以上、その将来まで考える責任があると経営者は語っています。
企業型DCの導入によって、従業員の退職金を用意できたことが、経営者自身の安心感にもつながったそうです。
企業型DCというと、税制上のメリットや会社の経費負担などに注目が集まりがちです。
もちろん、制度導入を検討するうえで、それらも重要な要素です。
しかし、福利厚生の本来の目的は何でしょうか。
【「従業員が安心して働き、将来の生活についても考えられる環境を会社として整えること」】
今回の事例は、そのことを改めて考えさせてくれます。
4.従業員が掛金を増やしていなくても、制度の価値はある
この会社では、会社が掛金を拠出することに加えて、従業員自身の選択で掛金を増額できる制度を採用しています。
ただし、事例紹介の時点では、従業員自身が掛金を増額しているケースはないそうです。
私は、この点も興味深いと感じました。
企業型DCの制度設計には、会社が掛金を負担する方法や、従業員自身が任意で掛金を拠出できる方法など、いくつかの選択肢があります。
従業員が自分の給与から掛金を出すかどうかは、給与水準や家計の状況、年齢、資産形成に対する考え方によって異なります。
自ら掛金を増額していないからといって、制度の価値がないわけではありません。
会社が従業員のために退職金制度を用意していること自体に意味があります。
一方で、従業員が制度を理解し、自分の将来について考えられるよう、導入後も継続して情報提供や投資教育を行うことが大切です。
5.従業員10名でも企業型DCを導入・運用できる
この会社では、経営者自身が経理や労務関係の事務処理を担当していました。
そのため、企業型DCの導入に必要な手続きや、導入後の事務負担に不安があったそうです。
しかし、外部の専門家や運営管理サービスの支援を受けることで、制度を導入し、運用を続けています。
企業型DCは大企業だけの制度ではありません。
従業員数名から十数名の中小企業でも、制度設計や事務手続きの体制を整えることで導入できます。
ただし、会社の掛金をいくらにするのか、従業員自身の拠出を認めるのか、既存の賃金制度や退職金制度とどう整合させるのかによって、制度の内容は大きく変わります。
【中小企業だからこそ、自社の経営状況と従業員の実情に合った制度設計が重要です。】
6.「企業型DCを導入するか」より先に考えたいこと
今回の事例は、採用活動がうまくいかないという経営課題から始まりました。
そして、福利厚生を見直す中で企業型DCを導入し、それが採用の決め手の一つになりました。
しかし、企業型DCを導入すれば、どの会社でも採用がうまくいくわけではありません。
人材が集まらない理由は、給与水準かもしれません。休日や労働時間、職場環境、教育制度などに課題がある場合もあります。
だからこそ、私は企業型DCの導入を検討する際、最初から制度ありきで考えるのではなく、次のことが大切だと考えています。
【「自社の人材課題は何なのか。その課題に対して、どのような制度が必要なのか」】
企業型DCは、従業員の将来の資産形成を支援する制度であると同時に、会社の人材戦略や福利厚生を考えるうえでの選択肢の一つです。
制度の特徴を理解したうえで、自社に合った仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。
企業型DCの制度設計・導入支援について、ご相談をお受けしています。
企業型DCの制度設計・導入支援はこちら。
(東商社長NET)https://www.tokyo-cci.or.jp/shachonet/profile/2140.html
運送業専門社労士としての活動はこちら。
(公式LP)https://yutoli-sr.com/
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