従業員10名以下でも退職金制度はつくれる――小規模企業が企業型DCを導入した理由【企業型DCの❝気になる話❞】

吉元康裕

吉元康裕

テーマ:企業型DC導入(資産形成・福利厚生)

運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。

従業員の退職金制度を整えたい。しかし、会社の規模や将来の資金負担を考えると、なかなか踏み出せない。

そのような中小企業の経営者も少なくないのではないでしょうか。

今回は、従業員10名以下の小規模企業が、将来の退職金準備と従業員の資産形成を考え、企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入した事例をご紹介します。

1.退職金は支払えた。しかし、10年後も同じように支払えるだろうか

今回ご紹介するのは、「農業、林業」に分類される事業を営む、従業員10名以下の企業です。

この会社では、企業型DCを導入する2年前、定年退職する従業員が2名いました。

そのときは業績がよく、退職金を問題なく支払うことができました。

しかし、経営者はそこで安心したわけではありませんでした。

「今は支払えたとしても、10年後、15年後も同じように支払えるだろうか」

将来の業績や資金繰りは、誰にも正確には予測できません。

退職者が出るたびにまとまった資金を用意する方法では、退職時期や会社の経営状況によって負担が大きくなる可能性があります。

そこで、将来に向けて計画的に退職金を準備する仕組みが必要だと考えたのです。

2.退職金制度は、従業員へのメッセージでもある

経営者が企業型DCの導入を考えた理由は、資金負担への備えだけではありませんでした。

会社が従業員の将来を考え、退職後の生活に向けて準備する姿勢を示すことにも意味があると考えていました。

企業型DCは、会社が毎月掛金を拠出し、従業員の将来に向けた資産形成を支援する企業年金制度です。

会社にとっては、毎月の掛金を通じて計画的に退職給付の原資を準備できることが特徴です。

一方、従業員にとっては、会社からの掛金をもとに、長期的な資産形成に取り組む機会になります。

会社が退職後の生活まで考えた制度を用意することは、従業員の安心感や会社への信頼につながる可能性があります。

3.制度を導入して終わりにしない

この事例で、もう一つ注目したいことがあります。

それは、企業型DCの導入後も、経営者が従業員との対話を続けていることです。

従業員一人ひとりと定期的に面談し、運用状況を確認しながら、投資には値動きがあることや長期的な視点の大切さを説明しています。

導入から9か月が経過した時点では、経営者によると、従業員の運用状況は平均して約15%のプラスとなっていました。

ただし、これは特定時点の運用実績であり、将来の成果を示すものではありません。

ここで大切なのは、運用成績そのものではなく、従業員が資産形成に関心を持ち始めたという変化です。

企業型DCは、制度を導入するだけで従業員が十分に理解できるものではありません。

投資教育や継続的な情報提供を通じて、従業員が自分の将来について考える機会をつくることも重要です。

4.小規模企業だからこそ、制度設計が重要になる

企業型DCは、大企業だけの制度ではありません。

従業員10名以下の企業でも、加入資格や掛金などの要件を満たせば導入を検討できます。

ただし、どの会社にも同じ制度設計が適しているわけではありません。

例えば、導入前には次のような点を整理する必要があります。

① 現在、退職金制度があるか。ある場合、どのような内容か。

② 会社は毎月どの程度の掛金を負担できるか。

③ 従業員の年齢構成や雇用形態はどうなっているか。

④ 会社が掛金を拠出する制度にするのか、従業員の選択による拠出も組み合わせるのか。

⑤ 従業員への投資教育や継続的な情報提供を、どのような体制で行うか。

⑤については、事業主に継続的な投資教育の実施に努める義務がありますが、すべてを事業主自身で行う必要はありません。

実際には、運営管理機関や制度導入を支援する専門家などが、従業員への説明や投資教育をバックアップしています。

私自身も、企業型DCの制度設計・導入支援に加え、導入後の情報提供を継続して行っています。

企業型DCは、退職金制度としてだけでなく、福利厚生や人材の定着を考えるうえでも選択肢の一つになります。

しかし、制度の特徴だけを見て導入を決めるのではなく、会社の経営状況と従業員の実態に合った設計が欠かせません。

5.自社に合った退職金制度を考えることから始める

今回の事例で印象的なのは、経営者が退職金を支払えた経験から、さらに将来の備えを考えたことです。

目先の資金負担だけでなく、10年後、15年後も続けられる制度にしたい。

そして、従業員が安心して働き、将来に向けて資産形成に取り組める環境をつくりたい。

その考えが企業型DCの導入につながりました。

退職金制度を新しくつくりたい会社も、既存の制度を見直したい会社も、まずは自社の現状を整理することが出発点です。

【企業型DCが自社に適しているのか。
導入するなら、どのような制度設計が考えられるのか。】

会社の規模、従業員構成、掛金負担、既存の退職金制度などを踏まえて検討することが大切です。

企業型DCの制度設計・導入支援について、ご相談をお受けしています。

企業型DCの制度設計・導入支援はこちら。
(東商社長NET)https://www.tokyo-cci.or.jp/shachonet/profile/2140.html

運送業専門社労士としての活動はこちら。
(公式LP)https://yutoli-sr.com/

最後までお読みいただきありがとうございます。

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吉元康裕
専門家

吉元康裕(社会保険労務士)

YUTOLI社会保険労務士・FP事務所

運送業の労働時間や賃金の課題に対応。2024年問題や36協定を踏まえ、ドライバーの勤務実態に応じた制度運用を支援します。幅広い業種で企業型DCの導入や就業規則の作成・見直しも手掛けています。

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