荷主も安定、ドライバーも辞めない――それでも運送会社が現状維持ではいられない理由
運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。
「会社の利益は出ている。でも、役員報酬を増やす以外に何か方法はないだろうか?」
先日、ある税理士から、顧問先の経営者についてこんな相談がありました。
その税理士は、以前、私が企業型DCと助成金について説明会を行った税理士法人の方です。
説明会の後も、毎月、企業型DCや助成金、労務管理に関する情報をメールでお届けしていました。
企業型DCも助成金も、税理士が日常的に取り扱う業務ではありません。
それでも、顧問先から相談があったときに、企業型DCを選択肢の一つとして思い出していただけたことは、うれしいことでした。
今回は、この相談をきっかけに考えた、中小企業における企業型DCの活用についてお話しします。
1.役員報酬を増やすことだけが、利益の活用方法ではない
今回の相談先は、従業員10人未満の中小企業です。
会社の利益をどのように活用するか。
役員報酬を増やす、設備投資に回す、内部留保を厚くする、将来の役員退職金に備えるなど、経営者にはさまざまな選択肢があります。
役員報酬を増やせば個人の収入は増えますが、所得税や住民税、社会保険料の負担にも影響します。
一方、将来の資産形成を目的とするのであれば、企業型DCという方法も考えられます。
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、加入者が自ら運用する年金制度です。
加入要件を満たす法人の役員も対象となるため、経営者自身の老後資産形成にも活用できます。
会社が拠出する事業主掛金は、原則として法人の損金に算入され、加入者の給与としては課税されません。
ただし、原則60歳まで引き出せないことや、運用成果によって将来の受取額が変動することなど、給与とは異なる特徴があります。
目先の手取り収入を増やす制度ではなく、将来に向けた資産形成の仕組みです。
2.税理士が改めて認識した、法人側のメリット
今回の相談では、税理士と企業型DCの仕組みや費用についても確認しました。
企業型DCでは、会社が毎月拠出する掛金だけでなく、制度の導入費用や継続的な運営費用も発生します。
事業主掛金や事業に必要な制度運営費用は、原則として法人の損金算入の対象になります。
なお、会計上は掛金を退職給付費用など、運営費用を確定拠出年金関連費用などとして処理する場合があり、一律に福利厚生費という勘定科目で処理するわけではありません。
そして、もう一つ大切な点があります。
【企業型DCは、役員自身の資産形成だけでなく、従業員の福利厚生制度としても活用できることです。】
今回、税理士もこの点を改めて認識された様子でした。
役員だけの資産形成という視点から、従業員も含めた会社全体の制度として考える。
ここに、企業型DCのもう一つの活用方法があります。
3.従業員も加入することで、会社にとっても意味が生まれる
今回の会社には、従業員の採用や定着という課題もありました。
中小企業にとって、人材の確保と定着は大きな経営課題です。
給与を引き上げることは重要ですが、それだけで人材の問題を解決できるとは限りません。
そこで、給与以外の処遇にも目を向ける必要があります。
例えば、会社が従業員のために毎月一定額を企業型DCの掛金として拠出する。
従業員にとっては、会社の支援を受けながら将来の資産形成ができる仕組みになります。
会社にとっては、掛金を損金算入できるだけでなく、福利厚生を充実させ、採用や定着に向けた取り組みを具体化できます。
もちろん、企業型DCを導入したからといって、直ちに採用が改善したり、離職が減ったりするわけではありません。
それでも、会社が従業員の将来にも目を向けていることを、制度として示す意味はあるでしょう。
【経営者自身の資産形成を考えることが、従業員の処遇を見直すきっかけにもなる。】
私は今回の相談で、そこに企業型DCを提案する意義があると考えました。
4.従業員が少ない会社だからこそ、制度設計が重要
企業型DCは、大企業だけの制度ではありません。
従業員10人未満の会社でも導入を検討できます。
ただし、小規模な会社ほど、掛金と運営費用の負担を慎重に考える必要があります。
例えば、次のような点です。
① 経営者と従業員、それぞれの掛金をどう設定するか
② 会社が負担する掛金と運営費用を、長期的に継続できるか
③ 従業員の年齢や働き方、既存の退職金制度に合っているか
④ 従業員が制度を理解し、納得して活用できる仕組みになっているか
また、会社の掛金に加え、従業員が希望に応じて給与の一部を掛金に充てる選択制DCを検討する場合には、社会保険料や将来の公的年金給付などへの影響も説明する必要があります。
企業型DCには複数の制度設計があります。
【大切なのは、企業型DCを導入すること自体ではなく、会社の目的に合った制度をつくることです。】
5.税理士と社労士が連携する意味
今回の相談は、顧問税理士から寄せられました。
税理士は、会社の利益や財務状況、役員報酬、税負担などを日常的に把握しています。
一方、企業型DCを導入するには、税務だけでなく、社会保険、賃金制度、従業員の加入条件、規程整備などの検討が必要です。
税理士が財務・税務面から助言し、社労士が制度設計や人事・労務面から支援する。
こうした連携によって、経営者の資産形成だけでなく、従業員の福利厚生や会社の人材課題も含めた提案ができます。
今回の相談は、以前の説明会と、その後の継続的な情報提供がきっかけになりました。
専門家同士がそれぞれの知識を共有し、必要なときに連携することは、顧問先企業にとっても意味があると感じています。
6.「役員報酬を増やす以外に何かない?」から始まった相談
今回の相談は、最初から企業型DCを導入したいという話ではありませんでした。
出発点は、会社の利益をどう活用するかという経営者の悩みです。
そこから、経営者自身の老後資産形成、従業員の福利厚生、採用・定着という課題へと話が広がりました。
企業型DCは、こうした課題に対応する選択肢の一つです。
ただし、すべての会社に適しているわけではありません。
会社の財務状況や経営方針、従業員の構成などを確認し、導入する目的を明確にする必要があります。
【「会社の利益をどう使うか」だけでなく、「その利益を、経営者と従業員の将来にどう生かすか」。】
今回の相談は、そのことを考える機会になりました。
企業型DCの制度設計・導入支援について、ご相談をお受けしています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
企業型DCの制度設計・導入支援はこちら。
(東商社長NET)
https://www.tokyo-cci.or.jp/shachonet/profile/2140.html
企業型DCのショート動画もご視聴いただけます。
(公式LP)https://yutoli-sr.com/


