56.【超・実践編】地方の小さな老舗食品メーカーが、EC(ネット通販)で全国に熱狂的なファンを作った方法
はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。
前回(第75回)は、トラブルやクレームを回避するのではなく、言い訳ゼロの「爆速の初期対応」と圧倒的な誠意によって、怒っていたお客様を一生モノの熱狂的ファンに変える神対応の技術についてお話ししました。
さて、ここまでホームページの改善、SNSや動画での発信、来社時のおもてなし、アフターフォローまで、数々の実践ノウハウをお伝えしてきました。
成果が出始めると、多くの経営者様が「新たな巨大な壁」にぶつかります。
「やりたい施策やお客様へのフォローは山ほどあるのに、自分一人では時間が足りない」「スタッフに任せたいけれど、任せるとクオリティが下がってしまう」「結局、社長である自分が現場を駆け回り、深夜までパソコンに向かう羽目になっている」
これでは、事業が成長すればするほど経営者自身がすり減ってしまいます。今回は、社長一人で抱え込まず、現場スタッフが自発的に集客とおもてなしを回し続けるための「権限移譲と仕組み化」の技術をお伝えします。
「任せられない」社長が陥っている思考の罠
「うちのスタッフには、まだ記事やSNSの発信は書けない」「自分と同じレベルでお客様に対応できる人間がいない」
そう思ってしまうお気持ちは痛いほど分かります。しかし、スタッフが育たない最大の理由は、スタッフの能力不足ではなく、「社長が100点のクオリティを現場に求めてしまっていること」にあります。
以前(第60回)もお話しした通り、マーケティングや顧客フォローにおいて大切なのは「完璧な100点」ではなく、「今すぐ届けるスピード感とリアルな人肌感」です。社長の思う80点、あるいは60点の出来であっても、現場が自分の手で発信し、お客様に直接向き合う回数を増やすことの方が、会社全体としては100倍大きな成果を生み出します。
現場が動き出す「権限移譲の3ステップ」
1.「ルール(基準)」はガチガチに絞り、表現は自由にさせる
すべてをマニュアル化しようとすると、スタッフはロボットのような冷たい対応しかできなくなります。マニュアル化すべきは「やってはいけないNG行動(個人情報の扱い、他社への批判、NG語句)」という【外枠のルール】だけに絞り込んでください。
その枠内であれば、「文章の書き方」「写真の撮り方」「お客様への添え状の言葉」は、スタッフ個人の個性や人肌感を尊重して自由に表現させるのです。
2.「小さな決済権限(予算)」を現場に渡す
おもてなし(第65〜68回)やトラブル初期対応(第75回)を現場に任せる際、イチイチ「社長、〇〇円使っていいですか?」とお伺いを立てさせていては、スピード感が死んでしまいます。
「お客様へのサプライズプレゼントやトラブル時の対応として、一訪問(一顧客)あたり〇万円までは、現場スタッフの判断で自由に経費を使って良い」という【おもてなし予算の権限】を与えてみてください。スタッフは「信用されている」と感じ、お客様を喜ばせるための素晴らしいアイデアを自発的に出すようになります。
3.「成果」ではなく「プロセス(行動)」を評価する仕組みを
「投稿から〇件問い合わせが来たら評価する」といった結果だけの評価にすると、スタッフは失敗を恐れて行動しなくなります。
評価すべきは「今週、スマホで現場の写真や動画を何枚ストックできたか」「お客様に手書きのお礼状を何通送れたか」「公式LINEでお困りごとがないか何人に声をかけられたか」という【行動(プロセス)の数】です。行動が習慣化されれば、成果は後から勝手についてきます。
経営者の本当の役割は「現場のファインプレーを褒めること」
現場に権限を移譲した後に、経営者であるあなたがやるべき最も重要な仕事は何でしょうか。
それは、パソコンに向かって文章を書くことでも、動画を編集することでもありません。
現場のスタッフがお客さまに対して行った小さな親切や、SNS・ホームページでの素晴らしい発信という「小さなファインプレー」を社内で誰よりも早く見つけ出し、全体の前で思い切り褒めちぎることです。
「〇〇さんがお客様に添えてくれたこの手書きメッセージ、感動したよ! 素晴らしいね」
「〇〇君が投稿してくれた作業現場の写真、すごく人肌感が伝わっていいね!」
経営者から自分の「人肌感あふれる行動」を認められたスタッフは、誇りと自信を持ち、さらに自発的に動くようになります。
今回の実践ポイント
- 100点満点を求めず、60点の出来でも「現場のスピードと挑戦」を歓迎する
- やってはいけないNGルールだけを決め、あとは現場の個性に委ねる
- 成果(結果)ではなく、お客様に向けた「行動の数」を社内で評価・称賛する
デジタルマーケティングやおもてなしの文化は、社長一人の孤軍奮闘ではなく、社員全員の「人肌感」が重なり合ったときに、競合他社が逆立ちしても追いつけない「強固な企業のブランド」へと昇華します。
任せる恐怖を少しだけ手放し、明日からスタッフに「小さな一歩」を託してみませんか?


