33.顧客の一番の関心事を捉える「One to Oneマーケティング」とは?

森和吉

森和吉

テーマ:デジタルマーケティング

はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。

前回(第32回)は、主観的な勘や経験を一度脇に置き、データという「正直な鏡」をのぞき込むことで、わずか5秒で自社サイトのボトルネックを特定して治療する方法をお伝えしました。

自社のサイトやSNSのどこに問題があるかが分かったら、次に行うべきは、そこを訪れてくれたお客様に対する「おもてなし」の精度を上げることです。

そこで今回ご紹介するのが、デジタルマーケティングならではの強力な武器、「One to One(ワン・トゥ・ワン)マーケティング」です。

この言葉を聞くと、「また難しい横文字が出てきたな」と思われるかもしれません。しかし、恐れる必要はまったくありません 。その本質は、皆様が日頃の商売で最も大切にしている「目の前のお客様一人ひとりに寄り添う心遣い」を、ネットの力で仕組み化することに過ぎないからです。

1. 「みんな」に伝える発信は、「誰にも」刺さらない


大企業が行うテレビCMや、街頭で配られるチラシは、不特定多数の「みんな」に向けた発信です。しかし、資本力のない中小企業が同じように「みんなに買ってもらおう」と平均的なメッセージを投げかけても、大手の広告に一瞬でかき消されてしまいます。

中小企業がネットを使って確実に成約を勝ち取るための鍵は、顧客をひとまとめにするのではなく、「あなた」に向けてピンポイントで語りかけることです。

人はそれぞれ、違った興味や関心、異なる悩みを抱えています。
その違いを前提にして、一人ひとりがその瞬間に最も欲しがっている情報を個別に提供し、受注確率を何倍にも高める施策。それこそが、One to Oneマーケティングの正体です。

2.【事例】小学校の学習机に見る、先回りのおもてなし


Web上でこのOne to Oneマーケティングが機能している、身近な例を挙げてみましょう。

あるお母さんが、来年小学校に入学する我が子のために「学習机」を買ってあげたいと考え、インテリアショップのWebサイトを見て回ったとします。
その日は購入に至らずにサイトを閉じたのですが、翌日、彼女がニュースサイトや別のブログを見ているときに、先ほど見ていた学習机のバナー広告が何度も表示される。このような経験をしたことはありませんか?

これは、デジタルマーケティングにおける「リターゲティング広告」という手法です。

なぜ、これが売上アップに効果的なのでしょうか。
人間には、何度も目に触れるものに対して、無意識のうちに好感や興味を抱きやすくなる心理(単純接触効果・ザイオンス効果)があるからです。

お母さんが「やっぱり、あそこの学習机が良さそうだな。もう一度調べてみよう」と思ったまさにその瞬間に、目の前にそっと広告(案内)を差し出す。これこそが、デジタル上で実現する、お客様の行動に合わせた「先回りのおもてなし」なのです。

3.昔ながらの「なじみの店主」の心遣いを、デジタルで再現する


リターゲティング広告のような仕組みをお話しすると、なんだか冷たいITシステムの話のように聞こえるかもしれません。しかし、本質は全く逆です。

昔ながらの商店街にある八百屋の店主が、買い物に来た常連客に対して、
「奥さん、今日は良い大根が入ってるよ。おでんにすると最高だよ」
と、相手の好みや家族構成を踏まえて声をかける。あの温かい「人肌感」のあるおもてなしを、デジタルの力を使って広いネットの世界で再現しているだけなのです。

私自身のコンサルティング活動でも、このOne to Oneの姿勢を最も大切にしています。
私は、お客様に対して一律のやり方を押し付けるマニュアル本のような提案は絶対にしません。
初回面談や、気軽なランチミーティングを通じて、社長様が「日本酒が好きで、料理にもこだわっている」といった趣味や人となり、そして会社が抱える「本当の悩み」を泥臭くヒアリングします。

そして、その企業「だけ」に合わせた完全オーダーメイドの施策カードを差し出します。
だからこそ、私のような不器用な一匹狼のコンサルタントであっても、契約した企業様との信頼関係が深く繋がり、解約自由という条件でありながら、更新率ほぼ100%を維持し続けられているのです。

4.あなたの会社が今日からできるOne to Oneの第一歩


「うちにはリターゲティング広告を出すような予算はない」という会社でも、今日からできるOne to Oneマーケティングはたくさんあります。

例えば、メールマガジンやLINE公式アカウントの配信です。
登録してくれた全員に、一斉に同じ売り込みの情報を送るのをやめてみてください。

  • 初めて問い合わせをくれた「冷たい顧客」:自社がどんな想いで物作りをしているか、人肌感が伝わるストーリー記事を届ける
  • すでに何度も買ってくれている「熱いファン」:「いつもありがとうございます」という手書きの手紙(DM)や、特別な感謝のプレゼントを届ける


これだけで、お客様は「この会社は、私のことをちゃんと見てくれている」と、特別な安心感を抱いてくれます。

デジタルマーケティングの本質は、テクノロジーの自慢ではありません。ネットの向こうにいる「たった一人の人間」を想像し、その人のタイミングに合わせて、どれだけ誠実に寄り添えるかです。

まずは、あなたの大切なお客様の「今、一番知りたいこと」を、そっと先回りして差し出すことから始めてみてください。

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