分譲マンションと民泊問題
みなさん、こんにちは。
マンションにおける紛争事例も今日で最終回となります。
裁判の判例は言い回しが解りづらいので、なるべく解りやすい表現でご紹介して行きます。
最後までおつきあいください。
「管理組合の役員になることがない不在組合員から、
月額2,500円の住民活動協力金を課す規約の変更は認められるか?」
最近、マンションが分譲されてから数十年経過した物件も多くなり始めたことによる、
組合員の高齢化や、投資目的で購入等による居住していない不在組合員の増加等が、
散見されるようになってきました。このような状況で実際に起きた事例です。
<事実関係>
14階建ての区分所有建物4棟(総戸数868戸)から成るマンションで、役員は
理事長1名、副理事長2名、理事25名及び監事4名が置かれている管理組合です。
分譲後20年を経過した頃から組合員の高齢化や不在組合員が増加し、平成16年頃
には不在組合員約170戸が生じ、一部の組合員が役員になることが増加しました。
そこで管理組合は役員になることがない不在組合員に対し、管理組合運営にかかる
負担の一端を担って貰う趣旨で、一般管理事務の費用に充てるものとして月額5,0
00円を協力金として管理費と共に納入しなければならない旨の規約と施行細則が
平成16年の総会で可決されました。
<訴訟内容>
この規約に基づき、管理組合は不在管理組合員に対して、協力金の支払いを求めた
所、175戸の区分所有の内、158戸は支払いに応じ17戸は支払いを拒否しました。
管理組合は、その後も支払いを拒否した不在管理組合員7名(専有部分の総戸数14戸)
に対して、順次支払い請求訴訟を提起しましたが、一審判決の判断がわかれ、一部の訴訟
の控訴審で、裁判所から協力金2,500円とする和解案が提出されました。
これを受け、管理組合は平成19年の総会で協力金を住民活動協力金と名称変更し、
その額を遡及的に1戸辺り2,500円とする管理規約、施行細則を変更し可決され
ました。
しかし、最終的に5名(専有部分の総戸数12戸)が支払いを拒否したため、控訴審の
判決が出ましたがその判断が分かれていたので、上告を機に最高裁が5名に対する統一的
な判断を示しました。
<判例内容>最高裁平成22年1月26日判決
この事案では二つの問題点がありこれについて判断がくだされました。結果から申し上
げますと、管理組合側勝訴の内容になっています。
<問題点>
①規約変更が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき時」とは。
②役員になることがない不在組合員に月額2,500円の協力金を課す規約の変更は
一部の区分所有者の権利に特別な影響を及ぼすか。
まず①について
「規約の規定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が
受ける不利益と比較衝量し、当該団地建物所有管理に照らして、その不利益が一部
の団地建物所有者の受忍すべき限度と認められる場合をいう」として、
②においていくつかの根拠をあげて、「特別の影響を及ぼすべき時」に該当しない
としています。
簡単にいくつかの根拠をあげますと
a. 不在組合員は利益のみを享受しており、個別の事情にかかわらず類型的に管理
組合や各種団体の活動に参加することを期待し得ないことを考慮すると、不在組
合員のみを対象として金銭的負担を求めることが合理性を欠くとみるのは相当で
はない。
b. 上記の不公平が、役員に対する報酬の支払いによってすべて補填されるもので
はない。
c. 不在組合員の金銭的負担は、居住組合員の15%増しにすぎない。
最後に、国土交通省より「マンション標準管理規約の改正について」として、平成23
年7月27日に発表がありました。
いくつかあるポイントの中で、「役員の資格項目の緩和(現在要件の撤廃)」がされて
います。「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから総会で選任
する。」から、組合員のうちからに改正されています。
不在組合員でも役員になれるようになったのですね。
このほかにもいくつかの改正ポイントがありますので、国土交通省のホームページで確
認してみてください。
国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/
長くなりましたが最後までおつきあい頂き、ありがとうございます。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
株式会社東拓企画
http://www.totakukikaku.jp