R4年2月28日判決言渡しで㈱シレオ(代表宮上元伸)らの「詐欺が確実に認定された!」
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私の本業は不動産業です。と言いましても弁護士さんや税理士さん依頼の抵当権付不動産の任意売却の仲介が主たる業務です。つまり債務者側の立場で抵当権者と交渉し(根)抵当権を抹消させて不動産を処理しているのです。
また一方で、私の過去の負の経験(エッヘン??元破産者)を生かしお役に立ちたいとの想いから、お悩みを抱えた会社や個人のコンサルティング(実体は、相談相手であり、またお手伝い係)も行っております。
「苦しみをお一人で抱え込まないように」の願いを込めて!
先日、ある地方の小企業(資本金1000万円 年商5000万円 従業員8名)の倒産でその前捌きのお手伝いを行い地元の弁護士さんに引継ぎしたこともあり、今回は倒産&破産について記載いたしました。
同社社長さんとは2年ほど前にお付合いが始まり以来相談相手になっています。毎年数百万円の赤字でそれを数年間続けている訳ですので、既に数千万円を無くしている状態です。決算上は過去の社長一族の貸付金放棄で債務免除益を立てて帳尻合わせをし外面を作っていました。当初、私は事業再生を図るべく新会社を設立して事業譲渡を図る手法を提案して見ましたが、代わりになる中心人物もおらず、また時代に即応した営業内容でもなく、正直本音部分では再生困難ではないかと思わざるを得ませんでした。
そんな状態でも同社は支払手形を発行していませんでしたので、仕入先や借入先に無理をお願いしては先延ばしを図っていました。私はこの状態で継続することは新たな債権者(仕入先)を生み問題を複雑化させるだけなので、売上の上がっときが倒産日だと諭し閉めることを勧めてiいました。今年5月いよいよ苦しくなり社長はやっと倒産を視野に入れましたが、それでも同社の抱えたある事情で恐れ踏み切れず今日に至りました。
先月のある日突然(それも3日前)、社長より○○日の買掛金及び遅配した給料の払いができないとSOSの電話を貰いました。閉める覚悟のようなので急遽懇意の弁護士から地元弁護士を紹介してもらい翌日飛びましたが、同弁護士は同様の事件を抱えていたため同日は不可であるとの返事、仕方なく支払日には従業員にナケナシのお金で給料(優先債権)の一部を払い、仕入先には社長らが平身低頭して先延ばしをお願いしたりして、何とかその場を凌ぎました。そして改めて数日後をⅩdayと定めて実行しました。正に社長の不決断による余りよろしくない事例となりました。
ただ一言、この社長のことを弁護をしますと、誰しも倒産は恐ろしいことなのです。タラレバのおいしい話に一途の望みを託し先延ばしをし右往左往することは致し方ないことだと思います。私も過去の倒産のとき同様でしたから。
しかし、スッカラピン状態の倒産&破産ですから、弁護士の着手金の用立て(借りて何とか作ったが)から始まり、これからが大変だと覚悟し次善策を考えている状況です。
教訓一、先の改善策もなく見通しもない赤字会社に金を投じる(貸し付ける)ことはあげる(捨てる)ことと同じことである。
教訓二、Ⅹdayは売上げが上がったとき。つまり計画的に! そうでないと清算経費もでなく、更に従業員が泣くことになる。
教訓三、社長の決断こそ肝要である。早ければ対応の仕様もある。また再生の道もある。
「計画倒産は悪である」お言葉はごもっとなことです。しかし「計画性のない倒産ほど悪いことはない」の考え方が私の持論です。
倒産を分っていながら新たな借入や仕入をすることは刑法上の「詐欺」相当だと人は言います。しかし経営の継続を望みつつも何時か倒産もあり得るような状態の中で、どこでその区分けができるのでしょうか? これは経営者ご自身が債権者(従業員も含む)に対してダメだろうではなく、断定した意思を表示したときからの問題です。従って本音と建前の使い別けが必要となります。
また、倒産は実際面で銀行等の金融機関並びに仕入先に迷惑が及ぶ訳ですが、これは商行為上の結果で致し方ないことなのです。商売にはリスクが付き物です。相手方にも貸し手責任、売り手責任があった筈だと割り切って考えれば債務者のお気持も楽になるのではないでしょうか?(本当に私はそうのように考えています。リスクのない商売はないので)
さて、実際面では、目標日であるⅩday(倒産日・少なくとも3ヶ月後)を経営者が頭の中で定めることから始まり、他に悟られないよう黙々と行動することになります。
その間に行うべきことは
①清算(破産)に要するお金のこと(清算経費&労働債権の捻出がギリギリ状態のケース)
小企業の場合、会社と連帯保証人(ex.社長個人・奥様等)の破産には都会と地方・破産規模・連帯保証人の人数及び弁護士さんによって差異がありますが、小企業の場合、最低でも都会で150万円以上、地方で230万円以上は掛かると思ってください。このお金の内訳は委託弁護士の報酬+裁判所に対する予納金(=管財人報酬等)です。
ではこのお金をどのように捻出するのでしょうか?
手元金があれば苦労しませんが、ない場合は売掛金等が対象になります。しかし着手金(30-40%)だけは、弁護士委託段階ですぐに必要になりますので、事前に手元金を作っておく必要があります。
従ってⅩdayは売上の上がったときの翌月の回収日の翌日がベターだと言うことなります。(できれば土日休日の前日)
往々にして売上の上がった翌月は資金が回り、当月もまた上がるであろうと期待して決断が鈍り一日延ばしてしまう経営者を多々見受けますが、ここが経営者の決断のしどころなのです。空(スッカラピン)状態では清算経費も従業員の予告手当(救済措置がない 後で述べる)も捻出できない状態になります。
(ポイント1) 振込先が借入先取引銀行(債権者)になってる得意先のこと
事前に当該得意先には振込先の変更通知を出す。取引のない他の金融機関へ又は現金又は手形回収に変更しておく必要があります。事務的に相殺されるので!
(ポイント2) 租税債務(優先債権 消費税・社会保険・労働保険等の滞納金)のこと
事前によく把握しておくことが必要です。特に社会保険の場合は滞納した時々に、決算書&明細書(全部の記載はない筈)の提出を求められている筈ですので、相手はまずその得意先の差押えに掛かってきます。その売掛債権は一週間内に差押えされると思っておいて間違えありません。相手が知っているであろう得意先については策を練っておく必要があります。
(ポイント3) 得意先の減額要求のこと
得意先によっては、この事態をチャンスと捉えクレームその他の口実で商品等に対し難癖をつけ売掛金減額の不当な要求をされることがあります。また弁護士さんによりますが先生によっては売掛債権の回収をゆっくりと行う先生もおります。弁護士さん任せではなく先生の了解のもと自らが回収するという気構えがないとなかなか債権回収は進みません。売掛債権は時間との勝負です。遅れるほど劣化することもお忘れなく。
(ポイント4) 売掛金の実回収額のこと
特にギリギリの資産状況での倒産では売掛金が頼みの綱ですが、実際場面では前述のように、計上された売掛債権額に対し実回収金額が目減りする可能性があることを理解しておき最悪の場合も想定し数字を掴んでおく必要があります。
②ご本人と連帯保証人のこと
経営者ご自身の将来の生活をまず考えてください。経営者には雇用(失業)保険等の恩典が全くありませんので。よく考えて自分の身は自分で守るように!
(ポイント1) ご本人と連帯保証人名義の差押可能対象物のこと
預金・返戻金付(積立)生命保険・株式・・・などは事前に引き出すか解約しておく必要があります。解約には相応の時間を要することもお忘れなく!また間違ってもその振込先を取引銀行と書かないように! この際、取引銀行は敵だと割切って考えるべきです。更にこれらの資産は自己破産申立ての際、その時あれば資産として破産財団に属することになりますので、その前に速やかに現金化にしておくことが肝要です。この行為は詐害行為とみなされることもありますが、後で何とでも理由付けできます。背に腹変えられません!
(ポイント2) 厚生年金のこと
年金受給者の方はその振込先が問題です。年金自体は差押えできませんが、預金の差押えは可能ですので、誰も知らない金融機関に口座を新設して事前に変更手続きをしておくことが肝要です。これも相応の時間が掛かります。また振込み月は偶数月であることも念頭に入れて!
なお、破産申立て後に晴れて免責されれば全ての債務(但し個人の租税債務は別)から解放されますので暫くの間の辛抱は致し方ありません。自分が破産者であることばご自身がしゃべらない限り債権者以外の他の人には知られません。誰も見ない官報に公告されるだけですので。
③従業員のこと
長く勤め上げた従業員のことを心配してあげるのが経営者の責務だと考えます。従業員も死活問題ですので、少なくとも当月給料を含む未払い賃金+予告手当(一ヶ月分)+退職金(規定がある場合)の労働債権の満額が賄える売掛状況のときにⅩdayを設定すべきです。また一段落ついた時には、従業員の再就職先のことも心配して上げれる気持ちも持ってほしいものです。
労働債権は優先債権ですのでいずれ管財人により優先的に配当されるかも知れませんが、優先債権(租税債務と労働債務・現同列)も満たない資産状況のときの倒産ほど悲惨なことはないので、Ⅹdayについては熟考が必要なのです。
※(未払い賃金+退職金)×80%については労働者健康福祉保険機構の立替制度(残念ながら予告手当は対象外)があります。
労働基準監督署の労災保険適用事業所になって一年以上の事業活動をしている企業の労働者ならこの立替え制度の利用ができます。実際面では管財人が手続きをしてくれます。同機構の代位による立替払いですので、当然同機構は破産財団に対して求償権(優先的請求権)を有することになります。しかし破産財団に資産がなければ同機構(国)が貸倒れとして負担してくれる有り難い制度です。この制度を事前に知ると知らないとでは大違い、経営者の判断に大きな差異が生じます。
つまり極論を言いますと、経営者としては、賃金+退職金の80%はどんなに資産内容が悪くても同機構(国)が従業員に払ってくれますので、残りの(未払い賃金+退職金)×20%(実際面では機構の計算式があるので100%は無理だが)+予告手当だけは念頭に入れておかねばなりません。これもⅩdayの決め方次第です。
以上述べましたが、まだまだ話し足らないことが多くあります。近日続編を作成します。また法スレスレ部分は記述できません。しかし当事者には知っておいて損のない情報ですので、ご一報頂ければ伝授します。決断はお早めに!
記:大森孝成