AIと未来の仕事の関係性

並木将央

並木将央

テーマ:成熟社会の理解度アップ!

昨今、AIは私たちの身近なものとして認識されるようになりました。そのきっかけの1つに、現在ある仕事が将来的にAIやロボットに置き換わるといった話がメディアで大々的に取り上げられたことが挙げられます。「今ある仕事に従事している人々が近い未来、仕事がなくなってしまう」ということは、私たちに衝撃を与えました。また、その仕事の種類は、数十種類とも数百種類とも言われたことも印象に残った要因です。



では、なぜ「AIに仕事が置き換わる」と言われるようになったのでしょうか?また、それが事実だとすれば、私たちはこの先、仕事や働き方のどういったところに着目していく必要があるのでしょうか?以下の視点を整理しながら考えてみましょう。

前提となる重要なポイント

今までとこれからの「労働の価値」には、違いがあるということです。今までは、「知的労働者の賃金が高い」ということが、社会で一般的とされていました。反対に肉体労働者の賃金は低くなりがちだったので、「知的労働者として働き、収入をあげよう」と多くの人が目指してきました。これは、以前、「大人が学校で勉強すれば、いい会社に入り、いいお給料がもらえるよ」と子どもたちに言い、教育していたことにも通じます。

しかし、これからは上記のような方程式は成り立ちません。なぜなら、AIは組織のど真ん中、中間層に位置するからです。例えば、管理者と現場作業員などの間に居る、いわゆる一般社員、事務員に置き換わるということです。したがって、これからは2通りの働き方が考えられます。
それは、
1.AIを使って価値を生む
2.AIの指示に従って働くか
ということです。真ん中の部分の仕事は、AIに置き換えることが可能なので、そこの部分がいなくなるということです。では、この2つをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

これからの働き方①

「AIを使って価値を生む -ニーズからウォンツを導く―」

例として、ChatGPTとGoogleを挙げます。この2つには大きな違いがあります。検索をする場合、Googleでは欲しいものを言って検索をかけます。つまり、wantsを入れてwantsを見つけるという状態です。ここでのポイントは、欲しいものが具体的になっているということです。しかし、ChatGPTは異なります。needsを入れるとwantsが出てくるという状態です。こちらは、欲しいものが具体的な個ではなくても、それに当てはまるものを提案、推奨してくれます。「何か、がっつりしたものが食べたい」というニーズを入れると、とんかつやステーキなどといった具体的な料理を提案し、〇〇にある△△というお店まで教えてくれるということです。

仕事に置き換えて考えてみると、「合計」を出すという作業をするExcelの式は、どのように作ればいいかと言えば、適切なExcelの式が出てくるし、「経費精算」のプログラムを作ってと言えば、プログラムコードが出てくるということになります。このように、今まで、人が相手のneedsをwantsに変えて提案していくという部分がごっそりなくなってしまう(=AIに置き換わってしまう)ので、この部分を補うことが、これからの仕事には必要になってきます。いかにニーズ重視になるか、また、隠れているニーズを見つけていくかということが重要です。

これからの働き方②

「AIが学習していない分野を開拓する ―多角的な視点を持つ―」

AIは学習されたところを網羅するのは得意ですが、まだまだ人間が味わっていないところについては、AIはサポートできません。だからこそ、人間は積極的に行動していき世の中を多角的な視点で見て、どのようなニーズがあるかということを探す作業、もしくは見つける作業、もしくは作り出す作業を行うということが、人間の一番やらなくてはいけないところです。そしてそれは、人間にしかできない強みだということができます。



これからの働き方③

「AIができない分野に従事する」

ピラミッドの一番下のAIの指示に従って動くというところは、AIやロボットに置き換わる可能性が高いところだと言えます。ロボットが代替できないようなところ、例えば、伝統工芸品を作るということは、価値が高くなる仕事であると言えます。もしくは、今まで大勢の人が従事していた仕事で、その中でも給与面の安い人間に任せていた仕事のうち、担い手がいなくなっていった仕事です。そこは、売り手市場になるので稼ぐことができる(価値が高い)と言えます。

まとめ

近い将来、大前提として「AIを使って価値を生む」人になるか、「AIの指示に従って働く」人になるか、という選択をしてから、職業選択をする日も遠くないのではないでしょうか。どちらを選択するにせよ、社会で働くまでにさまざまな経験をし、視野を広げることが重要になってくるでしょう。あなたというかけがえのない存在がAIという代替可能なモノに置き換わらないよう、私たち人間は、行動し未来を切り拓いていきましょう。

消費者として私がAIに欲したのは、「あたたかさ」


今回はAIと未来の仕事の関係性について、並木先生に聞いたことを、昨年、出産したばかりである私、田中がまとめました。

現在、産休育休期間のため、私は今回の話を聞いて、消費者目線で「AIができないもの」「人間にしかできないもの」を考えてみました。そこでは、産後の辛い時期に育児のことをSNSアプリで会話形式のチャットで相談できるAIを利用したときのことを思い出しました。体系的にまとめられている情報に対しては、的確な返答が得られましたが、辛い気持ちや個々の悩みに対しては、定型文の文言しか得られず、消化不良になりました。当たり前と言えばそうですが、その人の置かれた立場を理解し、あたたかみのある対応をすることはやはり、人間にしかできない分野だと実感しました。さらに、多様化が進んだ現代では同じように思えてもひとりひとり、子育てをする環境も価値観も異なります。「同じ女性」「同じ母」ではなく、個として接することが可能なのも人間の強みだと考えます。

また、もちろんすぐに的確なアドバイスを返信してくれるAIは心強いものでもありますが、育児中は即時的なものよりも、継続的なものがより心強いと感じました。AIは問題が解決した時点で、関係性が途切れやすいと感じます。対して人間は、時間はかかるけれど関係性を作っていくことができます。こちらの表情、仕草、声のトーンなどから「今はどう?」「何か変わったことはない?」などといった、状況に合わせた声掛けがあるとより育児をしていく上では良いと感じました。

また、赤ちゃんに対して、介護ロボットのように置き換えることも難しいのではないでしょうか。赤ちゃんは、傍にいる人の言葉、仕草、表情を学習しつつ成長していきます。コロナ禍では、マスクの弊害として、口元が見えないため、ことばの獲得に遅れが出ることや表情全体が見えないため感情の読み取りが困難になることなどが指摘されました。言葉は口元を見て学習し、その言葉を発している表情と照らし合わせて「この言葉はこういうふうに発音して、こういう(感情の)時に言うんだ」ということを学習します。



子育ては現代の技術を持ってしても、AIやロボットに置き換えることはできません。赤ちゃんはとても繊細で敏感なので、母親などに求める肌のぬくもりや匂いなどで安心します。いくら肌に近い素材やにおいを再現しても、完全に代替することはできません。AIで赤ちゃんの様子を分析し、何を求めているのか予測したり、お世話の記録をしたり、緊急時の対応アドバイスをすることはできるでしょう。したがって、ベビーシッターはそれらを駆使しながら赤ちゃんのお世話をすることで、満足度の高いサービスを提供することができると言えます。

以上の考察を通じて、AIは私たちの生活を支え、特定の問題解決に大きな力を発揮する一方で、人間が持つ感性や個々の経験に基づく共感、継続的な関係性の構築といった役割を完全に代替することは難しいと感じました。特に子育てや人と人との繋がりが深く関わる分野では、AIの技術を活用しつつも、人間のあたたかさを生かすことで初めて、真に価値あるサービスが生まれるのではないでしょうか。

未来の仕事においても、AIが補完する部分と人間が主役となる部分を見極めながら、両者を上手に活かしていくことが求められます。そして、その選択肢を考える際には、AIにはできない「人間らしさ」を改めて見直し、大切にしていきたいと思います。育児も仕事も、AIと人間が共に支え合い、補い合うことで、より豊かな未来が広がることを信じています。

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並木将央
専門家

並木将央(経営コンサルタント)

株式会社ロードフロンティア

人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変革を支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。

並木将央プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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