生産者マインドとは何か

並木将央

並木将央

テーマ:成熟社会の理解度アップ!

こんにちは、ライターのまりんです。
この記事では、2008年頃を境に成長社会から成熟社会に時代が移行した日本において大切になる「生産者マインド」についてご紹介したいと思います。
ロードフロンティア代表 並木の著書『成熟社会のビジネスシフト』では詳細に伝えていますが、より簡略化してイメージしやすいよう、今回は私の経歴を踏まえて記事にします。

1.はじめに

私は現在、個人事業主としてオンラインでの企業向けメンタルサポートや広報業務、Webライティングなどをしながら、株式会社ロードフロンティアでLLPという働き方もしています。独立するまでは、公務員や企業の正社員として働いていました。
そんな私が、周りからよくいただく質問があります。現状を知る方はLLPについても質問をくれますが、最も多く聞かれる内容がこちらです。

「安定した仕事やこれまでのキャリアを捨てて、どうして独立したのか」

これは特に家族に言われることで、最初は組織から離れ個人事業主になったことを隠していました。全員から反対の声が出ること、邪魔をされることがわかっていたので、自身の決断と行動を遮るものがないよう一人で動き、独立をしました。
というのも、私の家族はまさに成長社会で言われていた幸せの定義「安定した仕事をして一軒家を立てれば幸せ」のような考えだったからです。幼い頃から「手に職を、安定した仕事について家を建て、社会人になったら親の面倒を見ること。それが人生で最も幸せなのだから」と言われて育ちました。
子どもながらに納得していないところはありましたが、育ててもらっている身で意見しても聞いてもらえない、ということを理解していたので、社会人になり自分で稼げるようになったら自らが幸せだと思う仕事をする計画でいました。
しかし就職する頃は、やはり育った環境で言われ続けた「収入・福利厚生・安定をその組織は提供してくれるかどうか」を重視して職場を選ぶことが多かったと思います。そして働いて数年経過すると、もっとこういう働き方に変えられないのか?仕事の現状を見る限り、年功序列で職位や報酬が決まるのはおかしくないか?もっと抜本的な改革が行政では起こせないのか?など、多くの悩みを抱えるようになりました。そして、変えてほしいと意見したところで変化が起きないことに疲れた私は「組織の末端にいる人間の意見は聞かれない、誰か力がある人が変えてくれ」マインドになり、モヤモヤを抱えながら働いていました。

この、不満を持つが、それに対して自分が何かをするわけではなく「どうにかしてほしい、誰かがしてくれないか」の姿勢が、いわゆる「消費者マインド」です。
誰かに与えられることを待っている、変えてくれることを待っている、自らはそれに何か動くわけではない状態です。

では、動くことに疲れ消費者マインドになっていた私に、どのような変化が起こり、現在に至ったのでしょうか。ここからが、生産者マインドに切り替わるまでの話になります。

2.マインドの変化が起こるまで

2-1.葛藤していた時期

私は保健師として、最初は病棟に勤めました。もともと、働く世代の健康支援をするため産業保健師になりたいと考えていたので、臨床と行政の経験があることは、企業に勤務するうえでは必要だと考えていたからです。
自分のライフプランどおり、行政の経験を経て企業の保健師になることもでき、一人保健師としても産業医やグループ企業の保健師と連携を取り、事業の立ち上げや産業保健業務を遂行することができました。組織が大きいと、改善案を出してもやはり簡単には変わらないな、という気持ちでいながらも、仕事にはやりがいを感じていたため、真剣に向き合っていました。
ただ、保健師として従業員の健康支援に向き合えば向き合うほど、様々な葛藤が生まれていきました。
従業員からもらう相談には、働き方の仕組みや上層部に変化がなければ改善が難しいと思うものも多くあります。例えば子育てとの両立、介護問題、自身の病気などです。そして、それまでどんなにその従業員が組織に貢献してきたとしても、法や就業規則に準じた部分が会社の対応できる範囲になります。また、保健師からすれば経営陣の方々も健康支援すべき対象です。だからこそ、経営陣が従業員のために改善をしたいと思う点がありながらも、法的な課題から対応できず悩んでいることも知っており、仕組み自体にアプローチもできない自分の立ち位置に悩んでいました。
人は法に守られて働くものの、それが故に縛りが生まれることもある気がする、と感じていました。
さらに私自身も、人の支援をする仕事ではありますが、自らを守るべき働く世代であり、子育てとの両立に悩む一人になっていました。
そして、消費者マインドでいたからこそ、変わらぬ現状と悩みを抱えながら時間が過ぎていたように思います。

2-2.マインドが変わるきっかけ

仕事と向き合うたびに悩みを痛感する私でしたが、とあるきっかけでマインドが変化していくことになりました。
保活問題に悩みながらもやっと入れた認可外保育園が突然、閉園することになったのです。

「子どもを預けられなければ働けない、しかし稼がなければならない。仕事を諦めたくもない」
収入は下がったとしても、預け先を失うことにおびえず働けるようにと、リモートでの保健師業に転職をすることで、この課題は乗り越えることができました。
しかし、次は転職をした外資系企業が急に日本支社を撤退することになり、別企業へまたしてもリモートということで転職しました。
私は運よく、期間が空くことなく仕事を見つけることができましたが、中には保育園がなくなること、日本支社が撤退したことで、仕事を諦めた人達もいました。このとき強く「会社は法的に可能なところまでしか守ってはくれない。自分で稼ぐ力を持っていなければ」と感じました。子どもが生まれ働きだしてからの4年間は、どう両立をしていくかと心底悩みましたが、この経験こそが、私にマインドの変化を起こしてくれたのです。

生産者マインドはどうして大切か

生産者マインドに切り替わってからの私は、とても頭の中がすっきりしていました。
「会社は法的なところまでしか守れない、それはわかっていたじゃないか。だったら、守られる働き方や相手に変えてもらうことを待つより、自ら求めるものを作ったほうがいい」そう納得できたからです。

成長社会から成熟社会に切り替わった今の時代では、幸せの定義が多様化しすぎているため、消費者も自らのニーズを把握していません。私自身も、具体的にはどうしてもらえたら幸せなのか、何が欲しいのか、が見えていませんでした。それは、今ある組織で可能な枠の中で考えていたからです。

しかしマインドが切り替わった時、その枠を取り外した状態で
・自分はどう生きて、どう働きたいのか
・何故そうしたいのか
・それを叶えたら私はどうなるのか
などを整理してみました。
そして感じたことは、自分の生活やライフステージの変化があったうえでの仕事なのに、気づけば人生の1/3であるその時間を仕事に合わせて生活していた、ということです。そこに気づき、私は自分の人生を豊かにする手段として働く、だからそれを実現できる働き方をつくろう、と独立までの計画を立てていきました。

独立してからは、子どもの状況に応じて仕事ができるよう、オンラインでのサービスを提供や企業からの仕事をいただいて働き始めました。最初の収入はかなり下がりましたが、子どもに我慢をさせている、向き合う時間を減らしてまで必死で働いている、といった感覚がなくなり、忙しいながらも満たされた感覚を得ました。
もちろん、組織や誰かが自分を守ってくれるわけではないので、責任という点は大きくなりますが、だからこそ自由度高く働いていけるということも実感し、独立に至るまでの自身の経験に感謝の気持ちでした。

マインドが変わらず、誰かに求めてばかりの消費者マインドであれば、仕事自体どこかで失っていたかもしれませんし、今のような満たされた感覚がいつまでも私にはなかったように思います。
成熟社会では物資やサービス、情報が溢れ、何かに困ることはないが満たされることもない、実存的虚無感を抱えた人が増えています。そのうえ幸せの定義も様々なので、それを満たしてくれるものがうまく見つかるかさえ、わかりません。自らを満たし幸福度を高めるためには、このマインドが必要なのだと経験を通じて私は感じています。

まとめ

今回の記事では、私の経験を通じて「生産者マインド」というものについてご紹介しました。
誤解しないでほしいのですが、生産者という言葉があるからといって、何かビジネスを作れる人にならなければいけない、という話ではありません。悩みがあるなら、組織の中にいても自ら変えていこうとか、共感できる人を集めて働きかけてみようとか、そうした自ら動く姿勢で良いと思います。
一人一人が小さくとも何かに影響を与え変化を起こすことで、組織や地域、国が変わっていくきっかけを生む「生産者」になるかもしれない。自らの幸せのために自らが動く、それが生産者マインドなのだと私は考えています。

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並木将央
専門家

並木将央(経営コンサルタント)

株式会社ロードフロンティア

人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変革を支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。

並木将央プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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